2人はアニエス・カラマール氏(超法規的処刑問題担当)とデービッド・ケイ氏(表現の自由担当)。特別報告者は国連から独立した立場で調査を行い、国連人権理事会に報告する。
捜査要請に法的拘束力はなく、米当局が速やかに要請に応じるかどうかは不明。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、米連邦捜査局(FBI)が同ハッキング問題について捜査を進めていると報じた。FBIはコメントを控えた。
特別報告者は捜査を要請する根拠として、米国を拠点とするFTIコンサルティングによる調査報告を挙げた。報告は、ベゾス氏のスマートフォン「iPhone X」が、サルマン皇太子のワッツアップのアカウントから18年5月1日に送られた悪意ある動画ファイルを通じてハッキングされたとしており、この調査結果は「中程度から高度の信ぴょう性」があると結論づけている。
調査報告の内容は最初に、ニュースサイト「マザーボード」によって報じられた。報告によると、この動画ファイルを受信してから数時間後にスマホの動きが極端に変わり、発信データが300倍近くに膨れたという。
FTIコンサルティングは調査の詳細に関する問い合わせに応じていない。
■数カ月後にはカショギ氏殺害事件
ハッキングはベゾス氏が所有する米紙ワシントン・ポストのコラムニストでサルマン皇太子に批判的だったサウジの著名記者ジャマル・カショギ氏が18年10月に殺害される数カ月前に起こったとされている。
サウジのファイサル外相はスイスのダボスでロイターの取材に応じ、サルマン皇太子の関与を否定。「皇太子がベゾス氏の電話をハッキングすると考えるのは全くばかげている」と述べた。
在米サウジ大使館はツイッターへの投稿で「すべての事実を明確にするよう、調査を求める」とした。
ベゾス氏はツイッターでカショギ氏の葬儀に出席した際の自身の写真を掲載し「ジャマル」とだけ記した。
国連報告者はハッキングで使われた技術を特定していないが、イスラエルのNSOグループあるいはイタリアのスパイウエア会社「ハッキング・チーム」のソフトが使われた可能性があるとしている。
NSOは自社のソフトが使われた可能性を否定した。
■不倫報道との絡みは不明
タブロイド紙「ザ・ナショナル・エンクワイアラー」は昨年1月にベゾス氏と不倫関係にあるとする元テレビキャスターが交わしたテキストメッセージを報じており、3月にベゾス氏のセキュリティー担当責任者は、サウジ政府がメッセージを提供したと述べていた。今回明らかになったハッキング疑惑を受け、テキストメッセージが同紙に漏れた経緯に一段と注目が集まるとみられる。
サルマン皇太子のハッキングへの関与は、英紙ガーディアンが最初に報じた。