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「再エネ100%」を義務づけたハワイ 太陽、風、海……自然の恵みをフル活用

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ワイアナエの太陽光発電システム。強烈な日差しをエネルギーに利用している

ハワイ州は2015年、2045年までに再生可能エネルギーの割合を100%にする法律を可決した。全米では初めてのことだ。それまでに、「2020年までに30%、2030年までに40%」にする目標をかかげていたが、さらに徹底させた。法律制定の段階で、再生エネの割合は23%だった。

ハワイはエネルギーを石油に頼ってきた。自前の石油の生産はなく、全面的に島外に頼っている。従って電力料金は高く、かつ石油の値段によって州の経済状況が左右されてきた。

ハワイ大学自然エネルギー研究所のジョン・コール氏は、「再生エネルギーの議論は1970年代に始まった」という。アラブ石油輸出国機構がアメリカへの石油禁輸を決め、石油価格が急騰した第一次石油ショックのころのことだ。しかしその後状況が落ち着いて石油価格も下落し、議論はさたやみとなった。

「けれども2007年に石油価格が高騰し、議論が本格化したのです」

もちろん、ハワイ電力内や政治家にも反対も多かったが、今度は石油価格に加えて気候変動の問題も深刻化しており、化石燃料への懸念がさらに高まっていた。

ならば原子力へ、とならなかったのは、1978年にすでに州の憲法で原子力発電は禁じられていたからだ。

ハワイ州商業消費者局のキャサリン・アワクニ局長は「自然条件が大きな理由です。ハワイは地震や津波、台風や洪水などの災害が非常に大きな地域ですから、憲法で原子力発電を禁じたわけです」と語る。すべて我が日本にもあてはまることだが、その後もハワイでも原発を、という声は挙がっていたらしい。

「東芝が小型炉を開発したこともあり、原発を検討したらどうか、という議論も出てきていました」と、ハワイ電力CEOのアラン・オオシマ氏は語る。「しかし、そこに東日本大震災が起こり、フクシマの事故があって、そういう声もなくなったのです」

ハワイで再生可能エネルギーで100%まかなおうという目標が立てられるのは、日本に比べて人口サイズが小さく、従って消費電力も遥かに小さいことが大きい。日本の人口は約1億3千万、一方ハワイは約140万人で日本なら山口県程度、沖縄県よりも少ない。それでも、前述のアワクニ氏は「再生エネルギー推進派だった私たちにも、進めていけるのかという懸念はありました。本当に大きな挑戦なのです」と語る。

ハワイ電力の役員メンバー。左から2人目がCEOのアラン・オオシマ氏

100%に向けてのさまざまな政策や試みがなされていった。

ハワイ電力は自前の再生エネルギー供給に力を入れている。2017年にはオアフ島のワイアナエ地区に州最大の太陽光発電システムを作動させた。太陽光、風力、地熱、バイオ燃料による供給を既に実施し、洋上の風力発電や潮力発電も研究中だ。再生エネルギーの設備を作るときにも、地域から理解を得られるよう、説明会や意見交換会などをこまめに開いて合意を得られるようにしている。

電力消費者が自宅の屋根やビルなどに太陽光発電設備を設ければ、税控除も受けられる。2018年にはすでに全世帯の3分の1が太陽光発電設備を自宅に備えるまでになった。また、集合住宅に住む人や企業向けに「コミュニティソーラープロジェクト」と呼ばれる仕組みも2018年に発足させた。参加すると、地域につくられる太陽光発電設備に出資し、その代わりに、発電量の割り当て分だけ電力使用量が割り引かれる仕組みだ。

さまざまな努力により、2017年には再生エネルギーの割合が27%に達した。2020年の目標だった30%は目前だ。

すべてが順調というわけではない。再生可能エネルギーは天候に左右されるため、人間の力ではどうにもならないところがある。前出のハワイ大エネルギー研究所のコール氏も「ずっと曇りや雨が続く時もある。まだまだ蓄電の性能は高める必要がある」という。ハワイ電力のCEO,オオシマ氏も「再生可能エネルギーが8割、9割まで達成できたとしてもその先、10割にするのが難しい」と認める。

しかし、とオオシマ氏は力を込める。

「これは電力会社の問題だけではない。私たち一人一人の生き方、未来の問題なのです。どういう未来を選択するか、我々自身が考えることなのです。そして私たちは選んだ以上、自分たちのこととして進めていくしかありません」

屋根に設ける太陽光発電のように、電気利用者の自前の発電が増えれば、ハワイ電力からすれば収入が減ることになる。実際、ハワイ電力も2013年から2017年にかけて利用者の数は増えたものの、電力使用料の収入は減っている。

「それでいいんです。我々は電力事業のあり方を変えようとしているのです。我々自身も変わらなければならないし、変わりつつあります。我々は人々から信頼される企業でありたい」

オオシマ氏らの言葉からは、さまざまなジレンマや課題を抱えつつも、一つの目標を決めてそれに向かっていこうという強烈な意志が感じられる。

「日本とハワイは本当に似ていますよね」ともオオシマ氏は言う。「島国だし、エネルギー資源にも乏しい。日本は変わろうとしていないのでしょうか」

ハワイと同じ資源やエネルギー問題を抱える日本だが、自分たちの問題としてエネルギーを考える当事者意識はあるだろうか。