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日本の電力会社も関心 ベンチャーが挑む「小型原子炉」の可能性

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ニュースケール社が設計したSMRの上部約3分の1の実物大模型=米オレゴン州コーバリス、小川裕介撮影

「従来の原子炉は巨大なコンクリート壁に覆われているが、我々の格納容器は直径5メートルほどだ」。SMRの上部約3分の1にあたる実物大模型の前で、発案者のホゼ・レイエスが笑った。入り口をくぐると、すぐに原子炉容器があり、数人も入れば身動きが取れない。世界で主流の加圧水型原発(PWR)の最新型に比べ、出力は6万キロワットと約25分の1で、炉心の大きさは約20分の1だ。

ニュースケール社が開発しているSMRの模型=米オレゴン州コーバリス、小川裕介撮影

ニュースケール社は、レイエスが教授だったオレゴン州立大からスピンアウトして2007年に設立された大学発ベンチャー。これまで原発はスケールメリットで経済性を高めようと「より大きく」が潮流だったが、「より小さく」して、早く安く建設し、経済性を向上させるアイデアだ。蒸気発生器などと炉心を一体化させて小型化を実現。工場であらかじめ組み立てて速やかに設置する。放射性廃棄物も減らせるという。

安全性も高くなるという。東京電力福島第一原発事故では、津波で外部からの電源を失い、原子炉を冷やせずに核燃料が溶け落ちるメルトダウンに至った。ニュースケール社のSMRは原子炉ごとプールに沈め、原子炉内で水を循環させて冷やす。外からの電源がなくても自動的に止まり、1カ月操作しなくても事故にはならない、というのが売り文句。13年末に米エネルギー省の2億2600万ドル(約250億円)の技術支援が決まり、26年に向けて12基のSMRを立てる計画だ。レイエスは「これから世界のエネルギー需要が伸びて巨大マーケットが生まれる。世界中にSMRを建てたい」と意気込む。

オレゴン州立大に設置されたニュースケール社の試験施設。同社の歴史はこの大学での研究から始まった=小川裕介撮影

英国でも、国立原子力研究所がSMRを研究し、プルトニウムとウランを混ぜたMOX燃料を燃やせることを確認した。英国は大量の余剰プルトニウムを抱え、処分方法の確立が急務。SMRなら約40年の運転で、100トン規模のプルトニウムを消費できると期待されているという。

日本でも、経済産業省がSMRの研究開発に予算をつけて後押しする。関西電力の美浜原発(福井県)の後継炉に浮上しており、関電の岩根茂樹社長は6月の記者会見で、「より安全性、経済性の優れた炉を検討する」と前向きな考えを示した。OECD(経済協力開発機構)は、20~35年に建設される原発のうち最大で9%がSMRになると予測している。

ニュースケール社の中にあるSMRを運転するためのシミュレーター。すべてデジタル化されている=米オレゴン州コーバリス、小川裕介撮影

ただ、SMRの未来もバラ色とは限らない。SMRの安全基準はまだ審査中で、規制の内容によっては安全対策費が膨らみかねない。これまでとは違う機器や部品が求められるので、普及するまでは大量生産をしてコストを下げるのが難しい面もある。既存のものより高くなり、商業化できない可能性も指摘されている。

一方で、ロシアも3万キロワット級の小型炉の建設を進め、中国も10万キロワット級の導入を計画中。今後、中ロとの新たな競争に発展する可能性もある。すでに貿易やハイテクから始まった米中摩擦が原子力分野にも及んできた。マイクロソフト創業者のビル・ゲイツが会長を務めるテラパワー社は中国と共同で、数十年にわたって燃料交換が必要のない新型炉の開発を進めてきた。だがトランプ政権が次世代原発の技術輸出を認めない方針を決めたため、凍結に追い込まれた。ゲームチェンジャーの未来は、いまだ不透明感が漂う。