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「ムーミンの国」フィンランド大使館員が待ちわびる、目黒川の桜

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桜が有名な目黒川=2018年3月27日、吉野太一郎撮影

フィンランド大使館参事官の「私の東京」 日本で暮らす各国の大使館の人たちに、都内の好きな場所を聞く「私の東京」。ムーミンで知られるフィンランドの大使館のマルクス・コッコ参事官(報道・文化担当)は、春には多くの人がお花見に訪れる「目黒川沿い」を挙げてくれました。(聞き手・斉藤寛子)
桜が有名な目黒川=2018年3月27日、吉野太一郎撮影

朝のジョギングで通る目黒川沿いの景色が好きです。どこでも自然が身近にあるフィンランドに比べて、来日前、東京は自然がなくて高層ビルばかりのイメージでした。しかし、住んでみると都心を離れた住宅街は静かで、公園も多いと気づきました。桜並木はとても美しくて、春は早起きもジョギングもやる気が出ます。

桜が有名な目黒川=2018年3月27日、吉野太一郎撮影

フィンランドにも、日本のお花見のような習慣があります。フィンランド語で「バップ」と言う、5月1日のメーデーです。家族や友人と集い、少し暖かく、日が長くなった屋外でピクニックをして、スパークリングワインで乾杯します。若い人たちは前日の夕方から屋外に繰り出してお祭り騒ぎです。冬が長く厳しいフィンランドでは、春の到来、夏の始まりが待ち遠しいので、バップは誰もが楽しみにする特別な日なのです。目黒川沿いでお花見をする人たちを初めて見たとき、バップを思い出しました。

桜が有名な目黒川=2018年3月27日、吉野太一郎撮影

日本のみなさんにとって、フィンランドはムーミン谷のようなイメージかも知れませんが、実際はもう少しモダンです。ムーミンとの共通点と言えば、家族を大切にするところでしょうか。父親の育児参加が当たり前なので、「イクメン」という言葉はありません。私も3歳と1歳の息子の子育てのため、可能な限り早く家に帰ります。日本の働き方は、今より男女平等の意識を高め、ワーク・ライフ・バランスを実現する必要があるのではないでしょうか。

目黒川=2018年8月、斉藤寛子撮影

フィンランドで女性の社会進出が広がり、男性が育児に参加するようになったのはここ30~40年です。変化は国を経済的に豊かにし、人々の幸福度を高めました。フィンランドも変われたのです。日本も変われると信じています。

(2018年9月21日付朝日新聞東京版掲載。肩書、年齢は掲載当時のものです)