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自治体SDGsが、地域の課題を解決し、住みやすい街をつくる ②

World Now 更新日: 公開日:

国は、自治体によるSDGs達成に向けた取り組みを公募し、優れた提案をする都市を「SDGs未来都市」に選定しています。その中でも先導的な取り組みを「自治体SDGsモデル事業」として選定。資金的に援助をしています。

これは、2017年に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生総合戦略2017改訂版」で位置付けられた施策によるものです。地方創生を推進するに当たり、持続可能な開発目標を主流化し、SDGsの観点を取り入れて、経済、社会、環境を統合的に向上させる取り組みが必要とされています。

選定都市の成功事例は国内外に発信し、普及啓発することで、持続可能なまちづくりを広げていきます。

取り組み
【経済】ME-BYO BRAND制度で未病産業市場拡大/スマートエネルギーの促進/ロボット技術の社会実装
【環境】エネルギー自立型コミュニティー(CEMS)の実現に向けた、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)、燃料電池車(FCV)などの導入促進/温室効果ガス削減に向けた事業者の取り組み促進
【社会】行動変容のための未病指標の構築・活用/「人生100歳時代」の地域社会づくり/「ともに生きる社会かながわ」の実現

事業の社会的な影響・効果を「社会的インパクト」として「見える化」し、SDGsの取り組みへの社会的投資を呼び込む

「SDGs社会的インパクト評価」で社会的投資を促進する

神奈川県の「SDGs社会的インパクト評価実証プロジェクト」は、SDGsに沿った取り組みが社会にどのような変化・効果を与えたかを「見える化」することで、従来の“財務的評価”に“社会的・環境的評価”を加え、SDGsに沿った取り組みを展開しようとする企業などにとって新たな資金調達の流れを確立していくもの。藤沢市で開発が進む「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(FSST)」で行われる、デジタル技術の活用により住民を地域の担い手として育成し、コミュニティーケアによる“互助”を促進するなどの実証事業を評価対象としていく。

こうしたプロジェクトを通じて「SDGs社会的インパクト評価システム」を構築することで、SDGsに取り組む企業・NPO等への投資を促進し、SDGsの目標達成につなげていく。

FSSTをフィールドに、最新テクノロジーを組み合わせ、SDGsを先導するスマートタウンの実現を目指す

取り組み
【経済】みなとみらい21地区など、都心部に活力を創出する/国際競争力のある港湾をつくり、市民生活を豊かに
【環境】花と緑にあふれ、豊かな自然環境と暮らしが共存する都市をつくる/脱炭素化・循環型社会の構築
【社会】高齢化や住宅地再生など地域課題の解決により、「住みたい」「住み続けたい」と思えるまちづくり/多様な人が活躍する社会に

ガーデンシティ横浜。環境先進都市を目指し、花・緑・農・水を活用した幅広い取り組みを展開

公民連携し、それぞれの持つ力を結集させ課題に立ち向かう

横浜市は2019年に人口減少局面を迎え、25年には高齢者人口が約100万人になるなど、様々な課題を抱えている。都市の賑わいを保ちながら、パリ協定やSDGsといった世界の要請にも応えるため、これまで環境未来都市として進めてきた取り組みなどの成果を生かし、新たなステージへ進めていく。

最も重要なのは「市民力」だ。そのために、行政・市民・企業・大学や団体同士がつながり、各取り組みの相乗効果を高める拠点「SDGsデザインセンター(仮称)」を創設。様々なニーズや解決につながるシーズを収集・分析し、解決策の企画・立案、提案まで一貫した協力・支援を行う。「市民力」を発揮し、連携する統合的取り組みが、環境・経済・社会課題を同時解決するソリューションを生み出す構想だ。さらに、得られた知見を同様の課題に直面する国内外の都市に発信していく。

国際競争力のある港の実現により、東アジアのハブポート機能の強化や、クルーズ客船の受け入れ環境の充実・誘致推進を図る

取り組み
【経済】イノベーションを生む新しい交流拠点の整備/公的不動産活用による企業誘致
【環境】市民、NPO、来訪者、企業との共創による環境・景観活動の推進/渋滞対策の推進
【社会】住民主体によるサービスの充実/長寿社会のまちづくり/鎌倉版地域包括ケアの構築

住民が主体となって活動している「鎌倉リビングラボ」

地域資本を増やしてまちの豊かさを向上

鎌倉市が目指すのは、古都としての風格を保ちながら、生きるよろこびと新たな魅力を創出するまち。総合計画に自治体SDGsを導入し、EBPM(証拠に基づく政策立案。政策の効果の測定を、関連する情報やデータに求める)の推進、SIB(行政サービスを民間に委託し、達成された事業成果に応じて出資者へ支払う仕組み)の試行、地域資本の設定・可視化などを進める。また、歴史的建造物を活用して地域資本と位置づけ、経済(働く)・社会(交流)・環境(歴史と文化の継承)のSDGs好循環モデルを創出。市民に情報を発信し参画を促す。

そのほか、住民が主体となってサービスや物を生み出し、暮らしをよりよいものにする地域・社会活動「鎌倉リビングラボ」を進めており、今後、総合計画改定や政策立案にもこの手法を活用していく。

SDGsショーケースのモデルプロジェクトを行う古民家・旧村上邸

取り組み
【経済】えごまの6次産業化推進/再生可能エネルギーによる高付加価値作物の栽培実証
【環境】木質バイオマス利用計画の策定/小学生の植樹体験/呉羽丘陵のフットパス推進
【社会】お年寄りにやさしい低床車両電車「セントラム」「ポートラム」/交通空間のにぎわい創出

市内電車環状線(セントラム)とガラス美術館

公共交通と再生可能エネルギーでコンパクトシティを深化

富山市のまちづくりの根底にあるのは、高齢者が元気で暮らせること。お年寄りの外出機会を増やすために、65歳以上の市民が路面電車やバスに乗り、市内中心部で降りると運賃が1回100円になる割引制度を導入している。また、市内を走る「セントラム」「ポートラム」などのLRT(次世代型路面電車システム)は、車両の低床化、駅のバリアフリー化を実現し、本数を増やすことで市民の足として大いに活用されている。これらの交通システムを使う人が増えればおのずと停留所や駅周辺の街は活性化し、コンパクトシティの深化・充実が進むというのが狙いだ。

また、豊富な水資源を生かした水力、森林資源から生まれる木質バイオマスなどの再生可能エネルギーを広く活用し、小中学生の環境学習や市民エコツアーで紹介することで、市内のエネルギーのあり方について理解を深めている。

森林が持つ地球温暖化防止の効果を学ぶための、市内の小学生による苗木の植樹体験



本記事は朝日新聞社が各界のリーダーたちの意見、自治体や企業がゴールに向けて取り組んでいること、若い人のチャレンジなど2018年の動きをまとめた冊子「SDGsACTION!2」からの転載です。「SDGsACTION!2」はPDFファイルでご覧いただけます。
冊子「SDGsACTION!2」のダウンロードはこちら
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