異なる協同組合が連携、より良い暮らしに貢献
農林水産業、購買、雇用創出、介護・福祉、医療、金融、保険など、世界ではさまざまな分野で協同組合が活動しています。協同組合とは、人々が共通のニーズや願いを満たすために自発的に出資金を出し合い、事業を営み、その事業を利用する自治的な組織です。日本協同組合連携機構(JCA)は、総計約6500万人の組合員を擁する日本のさまざまな協同組合組織を会員とし、その連携を促進する活動をしています。
「持続可能な開発のための2030アジェンダ」では、協同組合がステークホルダーのひとつとして位置づけられ、17の目標の達成に重要な役割を果たしうることが、国際的にも認識されています。倫理的で包摂的、そして誰一人取り残さないというSDGsの原則は、協同組合の理念と重なります。SDGsという概念が生まれる前から、協同組合は人々の暮らしに根ざし、持続可能な社会の実現を目指してきたのです。私たちが長年にわたり取り組んできた途上国における協同組合の育成支援も、貧困や飢餓などの問題解決に貢献するものです。
SDGsに協同組合の活動を当てはめると、新たな可能性が見えてきます。「協同組合同士の連携を進めることで、これまで以上に持続可能な地域のより良い暮らし・仕事づくりに貢献できるのではないか」。JCA設立の動機ともなったこの思いは、さまざまな連携の実践例から生まれました。例えば、豊かな海を作るための豊かな森づくり。漁協が培ってきた水産資源管理の力と、JAや生協のネットワーク、森林組合の植林技術が連携することで、森‒川‒海のつながりを重視した自然を守る取り組みが実現します。ほかにも子どもの居場所づくり・高齢者の仕事づくり・まちづくりなど、協同組合間連携による地域の諸課題の解決に大いなる可能性を感じています。
「協同労働」で、地域を活性化 持続可能なコミュニティ経済を
JCAに属する組織のひとつであるワーカーズコープは、「協同労働」によって失業者や障害者の就労、介護や子育てなどの地域課題に挑んでいます。協同労働とは、「人と地域に必要とされるよい仕事」を働く人自らがおこし、職場と地域にコミュニティを育てていく働き方です。16年11月、ニューヨークの国連本部で開催された有識者会議で発表したこの概念と実例は、国際社会にインパクトを与えました。それは広い意味での「ケア」であり、人と人を双方向に関係づける実践です。
私たちは、SDGsに通じる持続可能な地域づくりを「FECH自給コミュニティの創造」と捉えています。F=フード(食)、E=エネルギー、H=ホーム(住まい)、C=ケアを地域で自給し、循環させる取り組みです。例えば、荒れた山林や農地を借りて、若者たち皆で出資と労働を担い、次世代に遺す森や里づくりに挑戦。貧困や格差の問題に対処し、環境保全にも寄与しながら多様性を認め合い、誰もが安心して暮らせる地域を目指しています。
勝又博三 HIROMI KATSUMATA
1979年全中に入会。農政課長、国際企画課長、経営対策課長、総務企画部長、経営指導部長等を経て、2011年農業者年金基金理事。15年JC総研常務理事、17年代表理事理事長。18年から現職。
古村伸宏 NOBUHIRO FURUMURA
1986年労働者協同組合センター事業団に入職。各地の事業所長、事業本部長を歴任。 2001年ワーカーズコープ連合会事務局長。05年同専務理事。17年から現職。
本記事は朝日新聞社が各界のリーダーたちの意見、自治体や企業がゴールに向けて取り組んでいること、若い人のチャレンジなど2018年の動きをまとめた冊子「SDGsACTION!2」からの転載です。「SDGsACTION!2」はPDFファイルでご覧いただけます。
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