Society 5.0 for SDGs
SDGsは、国際社会の叡智を結集して定められた包括的かつ野心的な目標であり、その達成に向けて企業には創造性とイノベーションの発揮が求められています。
そうした中、経団連では「Society 5.0」の実現を目指しています。Society 5.0とは、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く、5番目の新たな社会を意味しています。人類の歴史上、それぞれの経済社会の大変革の背景には、灌漑技術、蒸気機関、コンピューターなど、過去の延長線上にはない大きな技術革新がありました。現在、私たちも、AI、IoT、ビッグデータ、ロボットなど全く新たな技術革新に直面しています。経団連では、現下の革新的技術の普及・発展は、産業のみならず社会全体に大きなパラダイムシフトを引き起こす可能性を秘めていると考えます。
ただし、このような大変革により、AIやロボットが個人を束縛したり、行動を監視するような社会となってはいけません。また一部の先進国や大企業だけが成果を享受する社会になってもいけません。Society 5.0とは、革新技術により社会の最適化を図り、あらゆる人びとが快適で活力ある生活を享受し、様々な社会的課題が解決される未来社会です。そして、社会的課題の解決を民間が担うことにより、持続的な経済発展を同時達成する社会です。これはまさにSDGsと軌を一にするものであり、経団連では「Society 5.0の実現を通じたSDGsの達成」(Society 5.0 for SDGs)こそ、企業が果たすべき役割と考え、2030年に世界で実現できるよう取り組んでいます。
経済界自らが行動し、実現を図る
Society 5.0の実現を通じたSDGsの達成の推進に向け、経団連では、2017年11月、このコンセプトを柱に、会員企業の行動原則である「企業行動憲章」を改定しました。
また、18年7月の夏季フォーラムでは「経団連行動宣言」を採択し、具体的な取り組みとして、①「未来社会協創会議」による Society 5.0 全体コンセプトの提示、②民間経済外交の戦略的推進、③持続的成長に向けた生産性の向上と働き方改革の加速、④人口減少下における地方創生の実現-を掲げました。特に、経団連で新たに設置した「未来社会協創会議」では、Society 5.0の社会実装に向け、横断的な議論を行い、具体的な提言をとりまとめたいと考えています。
さらに、すでに各企業が事業として行なっているSDGsに資する事業やイノベーションを収集した事例集「Innovation for SDGs -Road to Society 5.0-」(日本語/英語)、それらを掲載した特設ウェブサイトの開設を、18年7月の「SDGsビジネスフォーラム」(於 国連本部)で発表しました。また経団連のSDGsへの取り組みをまとめた小冊子や企業行動憲章に関するアンケート調査結果も公表しています。こうした事例や取り組みを積極的に発信するとともに、多くの方々からのフィードバックを活かすことで、Society 5.0に向けた価値創造につなげたいと思います。
Society 5.0の実現を通じたSDGsの達成には、技術のみならず、法制度や社会受容など様々な壁を突破しなければなりません。また革新技術の発展や激動する国際政治経済情勢など、これからの時代は過去の常識とは異なる「不確実性」に満ち溢れています。しかし、そうした時代であるからこそ、経済界自らが変革をリードし、国連やWEF*¹、WBCSD*² 等の機関・団体、政府、学術界、NPOなど、様々なステークホルダーとの連携・協力を通じて、Society 5.0の実現を通じたSDGsの達成を図っていく決意です。
皆様の一層のご支援・ご協力のほど、よろしくお願いいたします。
*1. World Economic Forum *2. 持続可能な開発のための世界経済人会議
■ 経団連SDGs特設サイト
https://www.keidanrensdgs.com/
中西宏明 HIROAKI NAKANISHI
1970年日立製作所入社。2003年執行役常務、04年執行役専務、06年執行役副社長、10年4月代表執行役 執行役社長、同年6月代表執行役 執行役社長兼取締役、14年代表執行役 執行役会長兼CEO兼取締役、16年取締役会長兼代表執行役などを経て、18年4月より取締役会長 執行役。同年5月より経団連会長、現在に至る。
本記事は朝日新聞社が各界のリーダーたちの意見、自治体や企業がゴールに向けて取り組んでいること、若い人のチャレンジなど2018年の動きをまとめた冊子「SDGsACTION!2」からの転載です。「SDGsACTION!2」はPDFファイルでご覧いただけます。
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