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日本企業は、SDGsの“観客”ではなく“選手”であれ

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主体的に仕組みを作り ビジネスを通じた貢献を

いま、日本の政府や企業に必要なのは、SDGsの“観客”から“選手”へと、そのマインドセットを変えることです。

2015年のSDGs採択までの過程で、残念ながら、日本政府や企業、NGOはそのルール作りに積極的に参画してきませんでした。その後、首相直轄の「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」が本格的に始動し、近年ようやく世界にキャッチアップしたというところでしょうか。

これからの日本は、決められたルールにただ従って行動する“観客”ではなく、その枠組みやあり方をも自ら考え提言する“選手”であるべきです。その施策の一つとして、17年10月、国連大学と日本の大手企業20社による「SDGs企業戦略フォーラム」を立ち上げました。これは、本業のビジネスを通して企業がSDGsにいかに主体的に取り組むか、どのようにSDGsを活用し浸透させていくかを議論する場です。

主体的な取り組みの一例が、ルール作りです。欧米企業ではすでに、「環境や社会に配慮していない企業とは取引しない」「トレーサビリティーの確保ができない製品は店頭に並べない」といった方針を一部で打ち出しています。SDGsそのものに法的拘束力はありませんが、こういった取り組みは、世界各地の取引先へ多大な影響を及ぼします。日本でも以前、環境省等の呼びかけに応じて家電メーカーの多くが白熱電球の製造を取りやめたことで、省エネ性能に優れたLED照明が急速に広まりました。消費者の意識を変えることは容易ではありませんが、ルール次第でSDGsに貢献する社会を構築することはできるのです。

また、SDGsの169のターゲットにはその進捗を測る指標があり、その指標は随時見直しをしていくことになっています。自社の社会貢献を評価する指標として何がふさわしいか、今後のハイレベル政治フォーラムなどで、日本企業からも積極的な提案がなされることを期待しています。

日本には古来、売り手・買い手・世間に目を配る「三方よし」という商売の心得が根付いていますね。これはまさに、経済・社会・環境に配慮するSDGsの考え方そのものです。日本企業でより深いSDGsの議論が始まるのに時間はかからないでしょう。

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2018年7月の「ハイレベル政治フォーラム」。1,000人を超える各国政府、企業、市民社会のリーダーらがニューヨークの国連本部に集った

未来の世の中を決めるのは いまを生きる我々の選択

17の目標、169のターゲットからなるSDGsは、いまクリアすべき社会課題がまとめられている“チェックリスト”のようなものです。外出時に持ち物リストがあると忘れ物が減るように、SDGsを活用することで、自社の事業に企業価値を毀損するものがないかをシンプルに確認することができます。またESG投資に関しては、SDGsに照らせば、非財務情報として何を開示すべきかを判断できますし、自社の改革すべき部分を見極める材料にもなります。

ただし、SDGsに問題がないわけではありません。例えば、文化・芸術といった知的好奇心の充足、LGBTや宗教の問題などについては明確には触れられていません。本来の目的である「人類の幸福」を追求するならば、SDGs達成のその先についても考え始める必要があると思っています。

国連や教育機関をはじめ様々な立場で活動してきて、改めていま感じるのは、社会のあり方は良くも悪くも意外に大きく変わるものであり、それは自分たちの選択の結果いかんであるということ。その経験や思いを若い世代に伝えていくことも、我々の使命の一つだと思っています。

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沖 大幹  TAIKAN OKI
1989年、東京大学大学院工学系研究科修了。2018年から現職。国際連合大学上級副学長、国際連合事務次長補、東京大学総長特別参与、SDGs企業戦略フォーラム座長を兼任。気候変動に関わる政府間パネル(IPCC)第5次報告書統括執筆責任者ほかも務める。水文学部門で日本人初のアメリカ地球物理学連合フェロー。近著に『水の未来 ──グローバルリスクと日本』。



本記事は朝日新聞社が各界のリーダーたちの意見、自治体や企業がゴールに向けて取り組んでいること、若い人のチャレンジなど2018年の動きをまとめた冊子「SDGsACTION!2」からの転載です。「SDGsACTION!2」はPDFファイルでご覧いただけます。

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