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世界の課題に個人が向き合い 未来に向けた行動を始めよう

World Now 更新日: 公開日:

社会の実務を担う中間層に 自分ごととしての認識を

プラスチックごみによる海洋汚染についての研究、食品ロス削減への動き、女子大学のトランスジェンダーの学生受け入れなど、昨今ニュースで目にするいくつかの話題は、国際的なプラットフォームから見るとすべてSDGsにつながります。17の目標は相互に関係しており、SDGsを意識することで、一つの課題への取り組みから社会的な広い視野を持つことができます。

2015年に「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、SDGsがスタートしてから3年、日本にもさまざまな変化が生まれました。経済界ではESG投資が浸透し、SDGsのピンバッジをつけた企業トップが、持続可能な経営を語っています。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は、「持続可能性に配慮した運営計画 第二版」を公表し、東京2020大会で実行される脱炭素や資源管理の配慮は、大会後のレガシーになるでしょう。地域での取り組みも活発で、SDGsを推進する地方創生は、政府が今年公表した「拡大版SDGsアクションプラン2018」で三つの柱のひとつに掲げられました。

そうした組織・団体の進展に比べ、個人の意識はどうでしょうか。アンケート調査結果では、シニア層と、社会への関心が高い若者世代には浸透しているものの、30代から40代の中間層と女性に認知度が低いことが課題となっています。サステイナブルな商品を選ぶ消費活動や、プラスチックごみを出さない生活様式など、個人のライフスタイルにSDGsが深く関わっているということがなかなか理解に至らないのではないでしょうか。

SDGsを浸透させるためのツールに『持続可能な社会のために ナマケモノにもできるアクション・ガイド』があります。これは誰にでもすぐできる簡単な第一歩からの始め方を示し、小さなアクションが、実は世界規模の格差拡大の是正や紛争の予防、気候変動への歯止めにもつながっていることを理解するのに役立ちます。こうした教育ツールを使って、学校や家庭で考える機会を増やしてほしいと思います。

2018年3月、モルディブの女子高校生向けに開かれた国際女性記念デーワークショプにて。温暖化による異常気象や海面上昇で飲み水の確保にも苦労しているこの国では、女性が社会的に多くの制約を受けている。ジェンダー平等に向けた活動の一環として、根本さんが自身のキャリアを中心に講演したところ、勇気を持った一人の女子が「どうしたら壁を打ち破れるか」と質問。活躍している女性の経験から学ぶといいですね、と会話を交わした  ©Ashwa Faheem UNDP Maldives

依然厳しい世界状況 進捗を知ることで注意喚起

18年6月に公表されたSDGsの進捗状況報告では、幼児死亡率や電気の普及などは改善していますが、極度の貧困はまだ多く、紛争の長期化により飢餓人口は増えています。安全な場所にいる人々が日常に埋もれず、現実を意識するためにも、SDGsというものさしが必要です。

また、先進国では特に、ビジネスチャンスには皆が積極的に取り組む一方、マイノリティーの人々が置き去りにされがちです。例えば障がいのある人、難民庇護申請者、外国人労働者など、弱者でも社会参画できる仕組みが、ビジネスや制度として新たなマーケットを生むことが望ましいと思います。

日本は、国連の重要な加盟国です。資金面だけでなく、世界のなかで立場を異にする国や民族の仲介役を担うことが期待されています。第2次世界大戦後、教育に力を入れて、それが経済成長の原動力になったという実績は、途上国への参考として生かせるでしょう。保健医療の分野でもリーダーシップをとっています。教育、人権、健康、栄養といったSDGsの基本的な考えを国際協力や外交の柱にしている国家として、日本が世界に果たす役割は大きいと思います。

国連広報センターでは、スポーツ界、ファッション界、出版界、芸能界などさまざまな業界と連携し一般の人にもっとSDGsへの敷居を低く感じてもらう発信も続けています。そして、多くの人が気づきを得て、自分自身の課題やアクションにつなげていくことを期待しています。



根本かおる KAORU NEMOTO
東京大学法学部卒。テレビ朝日を経て、米国コロンビア大学大学院で国際関係論修士号を取得。1996年から2011年末までUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)にて、アジア、アフリカなどで難民支援活動に従事。ジュネーブ本部では政策立案、民間部門からの活動資金調達のコーディネートを担当。WFP国連世界食糧計画広報官、国連UNHCR協会事務局長も歴任。フリー・ジャーナリストを経て13年8月から現職。



本記事は朝日新聞社が各界のリーダーたちの意見、自治体や企業がゴールに向けて取り組んでいること、若い人のチャレンジなど2018年の動きをまとめた冊子「SDGsACTION!2」からの転載です。「SDGsACTION!2」はPDFファイルでご覧いただけます。
冊子「SDGsACTION!2」のダウンロードはこちら
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