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難しい「静かな火山」の解釈/高田亮・産業技術総合研究所研究員

World Now 更新日: 公開日:

主に日本とインドネシアの火山について研究しています。私たちにとってインドネシアの火山研究が有益なのは、つい200年前の1815年にタンボラ山が、1883年にはクラカタウ山が大規模な噴火を起こしており、記録が豊富で情報を取りやすいからです。

タンボラ噴火が「火山の冬」によって世界に与えた影響は欧米の研究者が詳しく研究を進めています。私たちはむしろ、どのようにタンボラのような巨大噴火が起きるかのプロセスを詳しく研究しています。そのために1996年からインドネシアとつきあっています。これまでにタンボラのほかジャワやバリ、ロンボクの各島で調査をしてきました。

大きな噴火の前は、マグマがエネルギーをためています。静かな火山で長く休んでいる火山ほど、エネルギーをためている可能性があります。逆に、そのまま死んでしまう火山もあります。静かな火山を、どのように解釈するかが難しいのです。

火山は比較的静かな時期でも、ときどき小さな噴火をすることがあります。その間にマグマの組成が変わるなど、次の大噴火につながるような兆候をとらえることができる可能性があります。大きな噴火はいきなりドカンとはこないのです。タンボラでも約500年前とか千年前に小規模な噴火がありました。巨大噴火の噴出物の下に、小さい噴火の跡が残っていたので分かったのです。

大規模な噴火は、日本では7千年前からありませんが、インドネシアはこの1千年に3回もありました。世界のスケールでみれば、巨大噴火は必ずどこかで起きます。火砕流の直撃を受けるような場所は逃げるしかありませんし、火山灰が厚く積もるような場所もしばらくは住めなくなりますが、火山の冬のような現象に対しては、人類全体としてどう生き残るかを考えるのが大事です。

自分の国に直接被害がなくても、影響はすぐに及びます。たとえば食糧を考えると、日本はいろいろ輸入していますが、輸入先が火山の冬で不作になると食糧難になるかもしれません。仮に北半球の気温が大きく下がっても、それ以外の地域でサポートできるような態勢が必要になります。

このような協力は可能なのでしょうか。地球温暖化と比べてみましょう。温暖化は科学的には明らかですが、国際社会が協調して対策に当たるのは難しい面があります。産業に直接ネガティブな影響を与えかねないので国家間に争いがあるからです。

でも、これが一時的な災害ならば支援はしやすいはずです。自国の産業にダメージを与えるようなことも少ない。火山の冬が続くとみられる数年間限定ならばなおさら、可能かもしれません。



たかだ・あきら 

専門は火山学。インドネシアの各火山のほか、富士山、有珠山、三宅島などの地質にも詳しい。国立研究開発法人の産業技術総合研究所活断層・火山研究部門に所属。
(聞き手・江渕崇)