日本では、一般に便器は水工店や住設機器店を通して売られますが、アメリカではホームセンターなどで自ら買って日曜大工で取り付ける人たちが多いのが特徴で、これが市場の約半数を占めます。
アメリカでは水不足に悩む地域が多いため、便器にも厳しい節水基準があります。いま、連邦レベルで適用されるエネルギーアクト法は、トイレを1回流すのに使って良い水量を6リットルと定めています。このほか、州ごとに独自の条例などで厳しい基準があります。水が豊富にある北部の五大湖周辺(イリノイ州やミシガン州)は比較的、無頓着ですが、干ばつに悩むカリフォルニアやテキサスの規制は1洗浄で4.8リットルです。
いまTOTOでは最新の節水型トイレで3.8リットル洗浄を実現しましたが、我々が実現してきた節水技術の進歩は、アメリカ市場に牽引されたといえます。実際TOTOの節水便器は6リットル、4.8リットル、3.8リットルと発売してきて、プロユーザー(水工店や設備機器店)から高い評価を得ています。TOTOはこれから人口が増え続ける有望なアメリカ市場で、節水競争で技術が認められ、優位に立つ事で、節水に貢献しながら他社との差別化を武器にビジネスを拡大させていきたい。シェア1位のコーラー(米)をはじめ、欧州メーカーも参入してきており、現地での競争はきわめて激しくなっています。
一般の人たちにも増して、ビルやホテルのオーナーといった人たちは自分たちの利益に跳ね返ってくるので、便器の洗浄量にとても敏感です。かつて日本のあるホテルを米国のファンドが買収した際、レセプションの近くにあるトイレの便器を洗浄水量8リットルのものから4.8リットルのものに代えました。これだけで年間2千万円の水道代が節約できたそうです。日本の感覚では、ここまで考えることは少ないですよね。
米国市場のシェア争いにおける現状はまだ満足できるレベルにはありませんが、洗浄水量ひとつとっても日本より高いレベルを求められ、技術改良にドライブがかかったことは事実。海外に出た意味は大きかったと思います。
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