中国人を中心とする訪日外国人の「爆買い」が注目される中、観光の呼び水として免税店も脚光を浴びている。外国人観光客でにぎわう東京・銀座の量販店や雑貨店をのぞくと、「DUTY FREE」(DF)の表示を多く見かける。
実はこれは、消費税免税(TAX FREE)との混同、もしくは勘違いだ。DFは、消費税だけでなく酒税やたばこ税、関税の免税を意味する。基本的に、空港の出国審査後の制限エリアなどで販売される商品にのみ適用され、「空港型免税店」とも呼ばれる。輸入前の関税のかかっていない商品を保管する場所で販売が行われているとの理屈だ。許可なしに空港型免税店を営むことはできない。
だが、実は空港型免税を国内で体験できる場所がある。アジア・太平洋地域を中心とした世界的免税店チェーン「DFSグループ」が展開する「Tギャラリア沖縄」(那覇市)だ。2004年に営業を始めた。沖縄振興特別措置法に基づいてできた店で、免税ショッピングで観光客を誘致する沖縄振興策の一環という意味合いもある。
どんな店なのか。10月下旬、「Tギャラリア沖縄」を訪れてみた。那覇空港からモノレールで約30分。駅に直結した地上3階建てで、首里城をイメージした赤い柱が並ぶ。売り場はサッカー場一つ半ほどの広さがあり、DFSの店舗の中でも最大級だ。店内には海外空港の免税店のように、世界中の化粧品や貴金属が陳列され、高級ブランド店も立ち並ぶ。自分が沖縄にいることを忘れてしまいそうだ。
買い物をするためには、まず入り口で「ショッピングカード」という三つ折りで黒色のリーフレットに必要事項を記入する。帰りの日付と便名が欠かせない。このカードを作ることで、県内で商品を使わずに持ち出す「県外個人輸出業者」になるという仕組みだ。
明るい店内を歩くと、「30%お得」といったポスターが目立ち、免税店ということが実感できる。もっとも、一部高級ブランドの店頭には「国内各店舗と同じ価格で販売している」との表示があった。ブランド価値を維持するために、あえて免税販売をしないという戦略なのだという。
家族へのお土産でも買おうとぶらぶらしていると、妻がお気に入りのフランスのコスメブランド店が目に入った。洗顔フォームを手に取ると、価格は3000円。たしか、東京などで買うと4000円近くしたはずだ。関税抜きの値段なので確かに安い。
日本語に加えて英語、中国語も操るという女性店員に会計してもらう。名前と帰りの便名を告げて支払いを済ませると、女性は商品を専用のポリ袋に入れた。ここで持ち帰ることは出来ないのだという。「帰るときに那覇空港のDFS窓口で、レシートを見せて受け取ってくださいね」
なるほど、沖縄県内では使うことができない代わりに、関税分を安くするシステムになっているのだ。次の日、空港で窓口を探す。手荷物検査後、航空券を持った人しか入れないエリアにあった。購入を証明するレシートを見せると、すぐに商品が出てきた。
現在、この店の利用者は日本人観光客が大半というが、店内では中国語や韓国語も多く耳にした。今年1月に訪日ビザ条件が緩和されたこともあり、特に中国人客が急増しているという。DFSはこの店舗の年間の売り上げなどを明らかにはしていないが、業績は右肩上がりのようだ。
訪日観光客の需要を見越して、同じような国内での空港型免税店は広がりを見せている。2015年度中には東京の銀座三越、来年4月には福岡三越で、空港型免税店が新たに誕生する予定だ。
(グローブ編集部・杉崎慎弥)