ボディーランゲージの専門家によると、トランプ大統領が金委員長と初めて13秒間の握手をした際、大統領は自分から最初に手を伸ばし、金委員長の肩を軽くたたくことによって、いつもの支配力を示そうとしたという。
金委員長も負けじとばかり、握手が続く間トランプ大統領の手をしっかりと握り、まっすぐに大統領を見つめた。その後、手を離し、メディアの方に向いた。
「普通の握手ではなかった」と、オーストラリアのボディーランゲージ専門家で、「The Definitive Guide to Body Language」など同分野の著書が複数あるアラン・ピーズ氏は指摘する。
「握手した手が上下に揺れて、互いに引き寄せようとし、相手に支配権を渡さないようにしていた」と、同氏はメルボルンから電話でロイターにこう語った。
史上初の会談場所となったカペラ・ホテルのライブラリーまで2人で歩いていく途中、トランプ大統領は金委員長に話しかけ、少し先を歩かせることで緊張を和らげようとした。
だがトランプ大統領は、自身の半分程度の年齢である金委員長の肩を軽くたたいたり、ライブラリーを手で示して同委員長を誘導することにより、会話の主導権を維持した。
金委員長も、トランプ大統領を軽くたたいて優位性を保とうとした。トランプ大統領が話しているときは主にうつむいて聴いていたが、会話中に幾度か顔を上げた。
「ドナルド・トランプ氏は融和的で、ほとんど従順な態度で話していたが、彼のボディーランゲージは明らかに『ここを仕切っているのは私だ』と言っていた」とピーズ氏は語った。
「彼らが何者か知らなければ、大きな男が父親で、小さい男が息子と思うだろう」
支配欲
シンガポールに本社を置くインフルエンス・ソリューションズのマネジング・ディレクター、カレン・レオン氏は、トランプ大統領が、先週にカナダのシャルルボワで開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)で通商問題を巡り同盟諸国に対して見せたような敵対姿勢はまったく見せなかったと語った。
とはいえ、トランプ大統領の支配欲は目に見える形で表れていた。
「2人が握手するときはいつでも(強く握るせいで)指先が白くなっていた。2人はともに『ボスキャラ』だ」とレオン氏は語った。
「2人とも優位性を示したがっており、それ故に骨が砕けるほど力強い握手となった」
だが、着席したとたん、2人とも不安を隠しきれなかったとレオン氏は言う。トランプ大統領はゆがんだ笑みを浮かべて手をもみ、金委員長は床を見つめていた。
「トランプ氏はギャンブラーだ。親がわんぱくな子どもにするように北朝鮮を抑え込むことに賭けている」とレオン氏。これは金委員長とは対照的で、同委員長の場合は比較的失うものが少なく、米朝首脳会談の実施という大きな勝利をすでに手に入れている。
会談が行われたシンガポールの高級ホテルでカメラマンのシャッターの嵐に直面し、初の大きな国際舞台に登場した金委員長からは、畏怖(いふ)と驚嘆も伝わってきた。
「金氏はいくぶん、テーマパークにいる子どものように見えた。威圧的ではなく、高揚し、少し不安げに見えた」とピーズ氏は付け加えた。
Sam Holmes and Miral Fahmy(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)