静けさにみちて/石川県・舳倉島
波と風の音しか聞こえない。
石川県の舳倉島では、島民の申し合わせで自動車を持ち込まない。あるのは消防車と医療関係の車計2台だけ。島内での移動や運搬は三輪自転車やリヤカー頼りだ。
海辺にいくつもある石積みは、漁に出た者の目印になっている。(石川県輪島市、2015年9月20日撮影)
(迫和義)
冬の昆布漁/北海道・礼文島
北海道・礼文島沖。気温零下3度の洋上には強い風が吹き、耳がちぎれそうだ。
堀内貞造(78、左)と早朝から昆布の養殖施設で作業するのは孫の孝範(27)。高校卒業後は札幌で就職したが、戻って漁師になった。
美しい高山植物に囲まれる夏の礼文を訪れる観光客は多い。だが、厳しい冬の間も島の暮らしは続く。
(北海道礼文町、2015年12月7日撮影)(迫和義)
(文中敬称略)
最西端の島を疾走する/沖縄県・与那国島
日本最西端の与那国島の北牧場を疾走するヨナグニウマの群れ。日本の在来馬8種のうちの一つで島内に約120頭いる。従順な馬が多く、最近は各地の牧場に引き取られて、動物との触れ合いで心を癒やそうとする「アニマルセラピー」に活用されるケースが増えている。
(沖縄県与那国町、2015年10月8日撮影)(迫和義)
愛すべき島の酔っ払い/迫和義
「島に住み続けることの大切さを、本土のあんたに言われたくねえよな」
沖縄・南大東島の飲み屋で知り合った男性がこのときばかりは声を荒らげた。
私と同世代の男性はサトウキビで生計を立てているのだという。国土や領土の保全とセットで語られることの多い周縁の島に住む気持ちを尋ねてみたのだが、「なんつったってよぅ、島の主役は俺っちよ。まあ、キビの事しか考えてないけどな」と軽く流されてしまった。
「おめえ、明日帰っちゃうのか?」
閉店までに、なぜか5回は握手した。
若い人の島離れ、乏しい就職先、医師不足……。そんなイメージが浮かぶが、果たして実態はどうなんだろう。半年以上をかけて、離島をめぐってみた。感じたのは、安易に「ひとくくり」にしてはいけないということだ。
島の数だけ課題があって、島の数だけ将来展望がある。そして島の数だけ美しい風景がある。今年、「有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別措置法」という長い名前の法案の国会提出が見込まれる。法律はひとつでも、それぞれの島に見合った取り組みをすることが大切なのだと思う。