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報道の信頼性、見えるように 読者に判断材料を示したい

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─―トラスト・プロジェクトとは何ですか?

読者や視聴者が報道の質の高さを判断できる方法を、ジャーナリズムに関わる人々が考えるプロジェクトです。ネット利用者がより正確な情報を手にできるようにすることを目指しますが、コストをかけた報道の再評価にもつながればと考えます。ネット上では、伝統メディアの報道も個人ブログも、企業や政府の広報文も、同列に並びます。ネットは真実もウソも同じように拡散させる。報道はもっと、信頼性を可視化しないといけません。

─―具体的にはどういうことを? 

一例を紹介します。あるパーティーで会ったニューヨーク・タイムズの若手記者の話です。彼は3カ月間、「イスラム国」(IS)について取材し、翌日それが掲載されるところでした。「おめでとう」と伝えると、彼は「でも、発行して数時間後には、500ぐらいのコピー記事がネットにあふれるでしょう」と言ったのです。忘れられません。 

ただ、ここにヒントがあります。彼はシリアやパキスタンに潜入し、45人に話を聴いた。記事は3人の編集者や弁護士のチェックを受けたそうです。リスクを取り、コストをかけて確認した事実は、記事の信頼性を高めます。でも、それは記事を読むだけでは分かりません。こうした情報を透明化していきたいのです。

─―情報源の秘匿は守られますか?

全ての情報を開示しろとは言いません。匿名の情報源が必要なのもわかるし、編集者との詳細なやりとりを知りたいとも思わない。ただ、取材にかけた時間や、記事のチェック体制の透明化は記事の信頼性を判断するのに有用です。「我が社の編集者の目を通った記事だから信頼できる」という伝統的なメディアの論理は、ソーシャルメディア上で、誰のオススメかを吟味しながら記事の信頼性を判断する世代には通じない。

─―グーグルが検索結果でオリジナル記事を上位に持ってくるようなことはしない?

質の高い報道が上位にくることは望ましいですが、検索のアルゴリズムは尊重したい。例えば、オリジナルを元にした派生記事の大半は単なるパクリかもしれませんが、一部は、わかりやすい解説や鋭い論評が添えられ、多くの人が読みたい記事かもしれません。記事の信頼性を裏付ける情報を、グーグルのシステムが理解して上位表示させるにはどんな情報を開示すべきかを、プロジェクトでは議論しています。


─―報道の将来をどう見ていますか?

常に前向きに捉えています。ネットでの収益化は難しく、広告や課金で試行錯誤は続いています。一方で、成功例もある。パリ発の「メディアパルト」というネット新聞は、有料会員の月額会費で運営されています。料理レシピにもスポーツ速報にも頼らず、調査報道を展開しています。

既存メディアは「デジタル化」を、「流通経路の変化」と捉えがち。印刷物をデジタルに仕立て直して終わり、と。大間違い。まったく新しい市場で、新しい読者への新しいストーリーの伝え方が必要です。そう認識して初めて、読者を引き込む方法を考えられる。バーチャルリアリティーからデータジャーナリズムまで、可能性は広がっています。