私のON
ブラジルで僧侶をしています。マリリアは日系人が多く住む町で、ほかにも仏教寺院があります。私がいる寺は1949年の創立で、300軒ほどの門徒さんがいます。葬儀や法事を執り行うほか、二カ月に一度、日曜の定例法要も勤めています。お経をあげてポルトガル語で法話をしたあと、門徒のみなさんと一緒にお茶を飲みながら談笑します。日本と違うのは持ち寄る食べ物ですね。ひき肉をイモで包んで揚げたブラジルではおなじみのサウガジーニョなどを食べながら、近況を語り合います。
遠くパラグアイやアルゼンチンなどに住む門徒さん宅を訪ね、お経をあげて回るという仕事もあります。携帯の電波も届かないような山中で、移民してきた先祖が持ってきた仏壇をいまも大切に守り、私を迎えて寝食を提供し、次の家まで案内してくださる方々と接していると、仏教がインドから中国や朝鮮半島を経由し、言語や文化の壁を越えて日本に伝播した、という歴史を肌で感じることができます。お釈迦さまもお寺に安住することなく、こうして歩まれていたのだろうなと考えますね。 日本人の墨絵アーティストを招き、寺でパフォーマンスをしてもらうこともあります。宗教を越えて現地の人たちとの交流の輪を広げることができる。こうした活動もまた、寺が本来果たすべき役割なのではないかと考えています。
私のOFF
法話はテキストを読むことで乗り切っていますが、ポルトガル語はまだまだ。週に1度マンツーマンで先生について勉強しています。パンデイロというタンバリンに似た楽器を習っていた縁で、リオのカーニバルに2回出ることができたのは良い思い出です。
近く出るカラオケ大会では「麦の唄」をうたう予定。シャワーを浴びながら練習に励んでいます。
(構成 GLOBE記者 田玉恵美)
いずはら・しゅう
1967年、広島県で寺の次男に生まれる。石川県小松市の寺などで僧侶を務めた後、2007年に真宗大谷派(東本願寺)の公募に応じて現地へ渡った。