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トランプ大統領とパウエルFRB議長の関係は

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デビッド・ウェッセル氏に聞く

「低金利が好きだ」と公言するトランプ大統領と、利上げに動くパウエル新議長体制のFRBとの関係はどうなるか。デビッド・ウェッセル・ブルッキングス研究所上級研究員に聞いた。

――(新たなFRB議長に就任した〕ジェローム・パウエル氏はどんな人物ですか。
彼は金融市場での経験があり、国内金融担当の財務次官も経験しているので、ワシントンでの経験も豊富だ。これはアカデミズムの世界のほうが経験が長いバーナンキやイエレンとの違いだ。
たとえば、パウエルはバーナンキとイエレンの議長としての12年間よりも多く、議会の政治家と食事を共にしたり、一緒に野球を見に行ったりしことがあるだろう。彼はワシントンに非常に広い人脈を持っており、政治的な環境には慣れている。

――パウエル氏の強みと弱みとは何でしょう。
パウエルが金利を引き上げようとして、トランプ大統領がそれをツイッターで攻撃するような局面が来るかもしれない。そのときに議会がすぐにトランプの側に立つことはないだろう。FRBがトランプの標的になったとき、彼の人脈が助けになるはずだ。
興味深いのは、大きな決断をしなければならないときだ。経済の洞察力と、ほかのFOMCメンバーからの信用が求められるときに、彼は(前任のイエレンやバーナンキと)同じようなバックグラウンドは持っていない。

――あなたは以前、物価上昇率が低すぎるときは、財政と金融が協調する理由があり、政府と中央銀行が協力することは悪いことではないと指摘していました。いまトランプ政権は大型減税で景気を押し上げ、FRBは利上げをしようとしています。この状況においては、FRBと政府の協調はどうあるべきと考えますか。
いまは古典的な状況です。ほぼ完全雇用の状態にあり、政権は大型減税をしました。歳出も拡大するでしょう。独立した中央銀行が必要な理由は、景気が過熱してインフレの恐れがあるときに、たとえ不人気でも利上げする独立性を中央銀行に持たせたいからです。いまはこのような独立性が重要な局面にあたるでしょう。

――トランプ政権のこの1年の経済をどう評価しますか。
経済はとても良い状況と言えるでしょう。200万人の新規雇用が創出され、株価も上昇しました。指標はとても良いものです。しかし、これがすべてトランプ政権のおかげというわけではありません。この結果をもたらした政策の多くは、彼が就任する前に導入されたものです。
一方で彼がもたらしたものは、ビジネス・コミュニティにおける、英経済学者ケインズの言う「アニマル・スピリット〔動物的衝動)」です。
企業は減税と規制緩和を歓迎しており、より投資をしようとしているかもしれません。つまり、ビジネス・コミュニティのムードに影響を与え、これがより早い成長を助けたかもしれません。
ただ同時に、多くのエコノミストが、(トランプの)不確実性が市場と経済にとって悪影響を与えると指摘しています。トランプが貿易でやったことは、長期にわたるネガティブな結果をもたらすでしょう。国を分極化させていることは、国にとっても経済にとってもよいことではありません。北朝鮮との間で第三次世界大戦を始めるかもしれないと皆を心配させている状況は、消費者にもビジネスにもプラスにはなりません。


David Wessel ウォールストリート・ジャーナル紙で長年経済を取材し、「バーナンキは正しかったか? FRBの真相」などの著書がある。2013年からブルッキングス研究所上級研究員。