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世界の指導者でいつづけるのか 「トランプのアメリカ」が向かう先

World Now
ジョン・アイケンベリー(国際政治学者)

トランプの勝利は世界のシステムにとって深い衝撃だ。自由主義的な世界秩序を守ることについて、米国が指導的な役割をこれからも果たし続けるかどうかの岐路に立っているといえよう。トランプは過去の大統領のようには米国の重責を理解していないと思う。

もしも米国が、過去70年間その外交の特質であった指導的な役割から急速に後退し、「アメリカ第一」で、NATO加盟国の防衛義務や、アジアへの(核の傘を含む)拡大抑止を果たさないというサインを送れば、世界の秩序は地域ごとの勢力圏に変わっていくだろう。

トランプは、勢力圏的な考え方に傾いている。ロシアや中国に対して、「(自分たちが求める)一定の振る舞いをしている限りは共存し、地域の最高実力者になることを許す」というシグナルを送ることは容易に想像がつく。

特にロシアに関しては、プーチンが勢力圏をウクライナやバルト三国などに広げようとしていることに対して、強く押し返すことに消極的だ。ロシアが近隣諸国の主権や自由を侵害することは、我々の問題でもあるという考えを、トランプは持っていないようだ。

原則を重んじるよりも、取引重視型のリーダーといえる。たとえば中国に対して、北朝鮮問題で自分たちを助けるなら、南シナ海での要求を受け入れるといったやり方だ。

戦後70年で初めて、世界秩序や民主主義に根本的な問いが投げかけられている。しかし私は、開放的で、緩やかなルールに基づく、協力的な国際秩序が、長期的には米国や欧州、日本や韓国にとっても大きな利益になると考える。ナショナリズムや孤立主義は、問題へのリアクションであって、解決策ではない。

米国が主導してきた自由主義的な世界秩序は、まだ生命力を保っている。しかし、これを守るためには多くの努力が必要となる。私たちはこれまで達成したものを思い起こし、現在のような米国の指導力と秩序がなければ、世界がどれほど危険なものかを考える必要がある。

平和を創造して経済を復興させたこと、国連や貿易機構を創設したこと、民主主義の団結、冷戦の勝利など、戦後に紡がれてきた「基本となる物語」を守る必要がある。また、米国の同盟国にとっては、トランプ政権に同盟の重要性を訴えることが非常に重要になる。

一方、独裁的なポピュリスト(大衆迎合主義者)たちは彼らの世界の中で、「自由民主主義は機能不全に陥っており、多文化主義は危険だ」という全く異なる「物語」を描いている。彼らに対する政治的な優位を取り戻すためには、イデオロギーと政治の闘争が必要になる。(聞き手・大島隆)

 

John Ikenberry

1954年生まれ。米プリンストン大ウッドロー・ウィルソン公共政策大学院教授。邦訳された著書に『リベラルな秩序か帝国か』(勁草書房)、『アフター・ヴィクトリー』(NTT出版)など。