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3Dデザインをすべての人の手に

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手に持った端末で空中に描いたものがヘッドセットの中で立体として空中に浮かぶ。誰にでも簡単に3Dデータをつくれるように王立芸術大学院の4人が発明、デザインした。実演しているのは共同創業者のオルワセイ・ソサンヤ
photo:Nakamura Yutaka
手に持った端末で空中に描いたものがヘッドセットの中で立体として空中に浮かぶ。誰にでも簡単に3Dデータをつくれるように王立芸術大学院の4人が発明、デザインした。実演しているのは共同創業者のオルワセイ・ソサンヤ photo:Nakamura Yutaka

グラビティスケッチ

ロンドンの王立芸術大学院のイノベーション・デザイン・エンジニアリング(IDE)学科卒業後、スタートアップを起業したオルワセイ・ソサンヤさん。世に出したものは、仮想現実(VR)の世界で描いたものがそのまま3Dの設計データとなるソフトウェア「グラビティスケッチ」だ。これを使ってどんな未来を描こうとしているのか。

――なぜこれを開発したのですか

ふとした思いつきを現実にできる、誰でも直感的に使える道具が欲しいと思ったからです。

通常は紙とペンでアイデアをスケッチしますね。つくりたいものが立体なら、二次元のスケッチを三次元の設計図に変換することになりますが、これがなかなか難しい。3Dの設計ソフトを使いこなすにはそれなりの知識や熟練を必要とするからです。小さな子どもでも使えるような道具をつくって、3Dのものづくりを〝民主化〟したいという思いがありました。

同時に、プロのデザイナーにも喜んでもらえるでしょう。デザイナーは立体を二次元の紙の上で表現する技術は非常によく訓練されています。でも、立体をコンピューターの3Dソフトで表現するとなると勝手が違う。僕はジャガーランドローバーで2年間働いた経験があるのですが、いきなり3Dキャドでスケッチするデザイナーはいませんでした。紙の上で直感的に描かないと、アイデアが持つ不思議な魅力(magic)を表現できないからです。カーデザイナーのそんな姿を見て、「不思議な魅力」を損なうことなくアイデアを育むことができるような道具をつくれないかと考えるようになったのです。大昔ならそれは石を削って造形する彫刻という方法だったのかもしれませんね。それをデジタルの世界で実現したかった。

普段持ち歩く携帯電話やタブレットで使えるアプリも提供しています。これは説明書が要らず、細かな計算や数字の入力も不要なので、使うにあたって年齢や言葉の壁がありません。アイデアを思いついたらその場でスケッチできるし、部屋に戻ってから続きの作業ができます。データを別のソフトウェアに移して、より高度で厳密な設計も可能ですし、クラウド上で別々の場所にいる人間がVRを使って一緒に作業することもできるでしょう。

つまり、自由自在に描いたスケッチそれ自体が高度な編集や共有を可能とする3Dデータとなるのです。ある意味、デザインする方法自体に革命を起こしたいと考えています。

――王立芸術大学院に入学する前は何を専門としていたのですか。

機械工学です。ヒューレットパッカード(HP)のOEM生産を請け負っていた台湾の工場で働いた経験もあります。そのとき感じたのは、デザイナーとエンジニアとの間でコミュニケーションをとることの難しさでした。デザイナーはプロダクトによりいっそう「特別感」を与えたい。でもエンジニアは技術的に可能かどうかという視点から離れられない。IDE学科を選んだのは、まさにデザインとエンジニアリングをつなぐ役割を担いたいと考えたからです。

グラビティスケッチが、両者が円滑にコミュニケーションする道具になればいいなとも思っています。

――目指すところは何ですか。

そもそもソフトウェアの開発に注力したのは、ハードウェアを開発するのに必要なお金もマンパワーもなかったからです。すばらしいソフトを開発できれば、それに適したハードウェアが必要となった場合に優位な位置に立てると考えました。ですから、日々の業務や活動で拡張現実(AR)や仮想現実(VR)の技術を使うことが当たり前になったとき、僕たちが開発したソフトが世界中で使われる基本ソフトのようになってほしいと思っています。

そしてグラビティスケッチが普及する過程で、より多くの人が3Dの創作を楽しんでもらえるようになってほしいし、デザイナーや技術者のものづくりのお手伝いができればうれしい。みなさんの頭の中にあるものが実際にカタチになるのを見るのが、開発者として何よりのを喜びです。(中村裕)

Oluwaseyi Sosanya

1984年、米国生まれ。2014年に王立芸術大学院IDE学科卒業後、大学院時代の仲間とグラビティスケッチを設立。