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「今は昔の新天地移住、苦しくてもじっとしているアメリカ人」

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アイオワ州デダムの街並み。アメリカの田舎町を象徴するような風景だ

"Struggling Americans Once Sought Greener Pastures--Now Theyre Stuck

201782日付 ウォールストリート・ジャーナル紙

 

日本を訪れたときによく聞かれる最近の質問にこんなのがある。「来日するアメリカ人でトランプ支持者だという人に一度も会ったことがないが、なぜでしょう」。疑問を持たれた方は、大都市に住む高学歴のアメリカ人にお会いになっているのだろう。トランプ支持者が多いstruggling(貧困状態の克服に苦労している)地域に住むアメリカ人はなかなか日本に来る機会がないのだ。

この記事は、そんな地方の貧困層がアメリカ国内においてさえmobility(流動性)を失っている現実に焦点をあてたものだ。かつてのアメリカなら、生活に困窮した人々がgreener pastures(今よりも良い場所)を求めstrike out(今の場所を離れる)のは当たり前の風景だった。スタインベックの『怒りの葡萄』に描かれたようなmigration(大規模な移動、小説では生活に窮したオクラホマ農民の一行がカリフォルニアを目指した)も過去何度かあった。しかし、いまはたとえ新天地への移転が最善策だとわかっていてもstuck(身動きがとれない)人々が驚くほど多いのだという。

記事によると、その理由は主に三つ。一つは大都市の住宅費の高騰。二つ目は、州ごとに免許が異なる職業が増えていること(バーテンダーや花屋も別の州で働こうとすると免許を取り直す必要がある)。公的な生活支援に加え、地縁、血縁を頼みにできる環境にあれば、じっとしている方が楽だと考えてしまうのも無理からぬことだ。 そして、三つ目が大都市と田舎町との文化の違い。都市部では、外国からの移民、同性結婚、secularism(世俗主義)を受け入れる人々が増えているが、田舎に住む人々の価値観は概して保守的だ。違った価値観に対する抵抗感も移動を妨げているというのだ。

こうした分析とともに、記事の筆者はmobilityの低下は、米国のpolitical divide(政治的分裂)をより深刻にしただけでなく、米国経済にとってdrag(足を引っ張るもの)になっていると指摘している。人手が足りない地域への労働力の供給をchoke off(妨げる)からだ。「石の上にも三年」という考え方を良しとしないアメリカでは、好ましくない傾向なのだ。