"Robert Mueller in the Cross Hairs"
2017年11月1日 ニューヨークタイムズ紙
今回取り上げたのは、ニューヨーク・タイムズ紙コラムニストのオピニオンで、ロバート・マラー米司法省Special Counsel(特別検察官)の捜査をめぐる反響や政界の動きなどについてだ。マラーは昨年の米大統領選での、ロシアによる介入やトランプ陣営との癒着に関する捜査を指揮している。マラーが共和党支持だったこともあり、5月に特別検察官に就任した当時は、共和党内では捜査を彼に任せたのは素晴らしいとのコンセンサスがあったようだとコラムニストは言う。共和党の元下院議長ギングリッチは、マラーについて「正直さとintegrity(高潔さ)があり、申し分のない評判」としていた。
だが現在、右派のideological snipers(イデオロギーに基づいた狙撃兵)がマラーをtaking potshots at (手当たり次第に撃って)激しく非難している。彼はcrooked cop(不正をする警官)で、gross overreach(全くの行き過ぎ)と言う者もいるという。何があったのか。
マラーは、トランプ陣営とロシアの癒着の有無をvigorously(精力的に)捜査し、その証拠を発掘したようだとコラムニストはみる。トランプが触れられたくないファミリーの財政状況にも踏み込んでいる。そして陣営幹部らが起訴され、政権内はパニックに陥っているというのだ。ある共和党議員は、ホワイトハウスでは「壁がだんだん近づいている。皆がfreaking out(ビクビクしている)」という。
こうしたことからマラーはin the cross hairs(ターゲットにされている)とコラムニストは指摘。トランプのbase(支持基盤、支持者ら)は、マラーを何とかするようegging him on(けしかけている)という。記事では、Saturday Night Massacre(土曜日の夜の虐殺)の再現についても触れている。1973年、当時大統領のニクソンが特別検察官アーチボールド・コックスを解任させた。解任への反発は大きく、ニクソンのouster(権力の座からの追放)につながった。しかし当時の議会両院の多数は、ニクソンと反対の民主党だった。今は両院とも多数がトランプと同じ共和党で、党内でのトランプ支持率も高い。トランプがマラーを解任しても反対があまり出ないのではないか、とコラムニストはみている。
特派員経験のあるこのコラムニストは、tin-pot countries(粗悪な政治制度や指導者の国)で取材したことがあるといい、そうした国では、公人が検察官の捜査を止めたり、政敵を刑務所に送ったりすることをblithely(のんきに)話していたという。まさか自分の国で似たようなことが起こるとは想像もしていなかったと言うが、それは私も同感だ。
(ニューヨークタイムズ紙の記事はこちら)