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100カ国行ったイモトアヤコだから分かる「世界の変化」とは

World Now 更新日: 公開日:
イモトアヤコさん=惠原弘太郎撮影

海外ロケなどで世界100カ国以上をまわってこられたタレントのイモトアヤコさん(31)。その目に、今の世界やその変化はどう映っているのでしょう。

――2007年に日本テレビ系番組「世界の果てまでイッテQ!」の珍獣ハンターに選ばれて以来、足を運んだのはこれまで実に100カ国以上。この10年、どんな変化を感じますか?

「誰もがスマホを持ってる状況になったな、と感じます。アフリカのマサイ族も、アマゾンの奥地に行っても、やっぱりスマホを持ってるんですよ。で、通じるんです。携帯で写真撮ったり、動画撮ったりもしてる。上半身裸で、テントのようなところで暮らしてるのにスマホを見ていたりするのは、すごいちぐはぐで不思議な感じがします。この10年は、そうした変化にびっくりしてますね」

「『イッテQ!』の撮影で行ったインドネシア・コモド島が人生で初めての海外だったんですが、当時の感覚は、今とはまったく違いますね。携帯電話もガラケーで、海外で使うこと自体が今のように普通じゃなくて、誰ともなかなか連絡が取れなくて、不安しかなかった記憶があります」

イモトアヤコさんphoto:Ebara Kotaro

――GLOBE編集部では、世界各国・地域の国内総生産(GDP)の推計値でそれぞれの大きさを示した地図を英World Mapper社に作ってもらいました。1960年の地図は欧米が大きく、2015年は中国とインドが大きくなり、2050年には東南アジアを含めアジア全体が突出して大きくなる見通しです。実感はありますか?

「中国とインド、すごいですね。こないだ行った中国で、顔認証で追跡できるドローンカメラを開発した若者に会いましたが、意欲も勢いもすごい。撮影の際に、20代前半くらいの男の子と女の子がドローンの試作品を持ってきてくれて、直接話もしたんですが、私たち撮影クルーにすごく情熱を持って紹介してくれた。中国もインドもすごい急成長して経済的にも発展してるってニュースでも見ますが、やっぱりすごいんだなと思う」

2050年の国内総生産(GDP)推計値に応じて国の大きさを示したもの。東南アジアを含め、アジアが突出して大きな経済力をもつ可能性がうかがえる(World Mapper社作成)

「ただ、中国もインドも、行って人と触れ合ってる限りは、変わったという感覚はあんまりないんですよ。中国もトイレに行くと、あぁやっぱり変わってないなと。インドでも高級なところに行けばまた別かもしれないですけど、街の雑多な感じは10年前と変わっていない気がします。この経済発展とのギャップ、どういうことなんだろう?って思います」

――要は格差がさらに開いている、ということでしょうか。

「ええ、そういう気がしますね」

イモトアヤコさん photo:Ebara Kotaro

――イモトさんにとって、世界の「ニューノーマル」ってどんなものでしょうか。

2010年ごろから、『どこも一緒だな』と思うようになりました。思った以上に、いろんな国や地域が発展してきたなと思います。例えばアフリカのガボンは、日本の多くの人は聞いたことがないだろうけど、街には日本料理屋さんがあり、インターネットもしてる。今や、どこでも最低限暮らせるベースはそろってる気がします」

――行ってよかったと思う国や地域はどこでしょう?

「すごくよかったのはルワンダですね。(1994年の)虐殺のイメージがすごく強かったんですけど、行ってみれば、まったくの都会でした。きれいだし、ゴリラの保護区はいいホテルもあって、きれいなちょっとしたリゾート。空気もよくて、おすすめですね。最後に行ったのは56年前ですが、コーディネーターさんを含め、当時ツチ系とフツ系に分かれて紛争したそれぞれの側の方がいたんですけど、今はまったく、少なくとも私たちの前では紛争当時の雰囲気もなかったですね」

イモトアヤコさん photo:Ebara Kotaro

――世界を回ってきた中で今、幸せや豊かさについてどんな風に感じておられますか。日本はGDP拡大を主なものさしとしてきましたが、そうじゃない価値観で生きている人たちも世界にはいるし、また増えています。

「ミャンマーの小さな村でロケをした時に、合間に地元の子どもたちと遊ぶうち、2人の男の子と仲よくなったことがあります。ロケが終わって帰る時に、彼らはサドルもブレーキもない自転車で2人乗りの立ちこぎをして、追っかけてきてくれたんですよ。ブレーキがないから岩にぶつかって止まって、転んで笑って。それで、ミャンマーのお菓子をくれたんですね。持ってるお菓子を全部。小学生ぐらいで一番食べたい時期だろうに、いいのかなぁって思いつつ、でもせっかくだからいただきました。お返しにこっちも日本から持ってきたお菓子をあげたんですが、切ない感じがしました。たぶんあの子たちは、もらったものも村のみんなで分けるということで生きてきた。一方、私たちは所有することへの安心感で生きている。すべてを捧げられる心を持ってる子たちが豊かで幸せなんだろうなあ、ってすごく思いました。ただ、お金で買える幸せとお金で買えない幸せ、どっちがいいかは正直、私はわからない。お金で買える幸せをも知ったうえで、どっちを取るか自分で選択できるのが一番いいなあとは思います」

――イモトさん自身が幸せや豊かさを感じるのはどんな時ですか?

「ワクワクする時に私は幸せを感じますね。好きなものを食べたり、お買い物したり、好きな人と会ったり。さらに、自分がこうなれたらいいなぁ、とか妄想してる時が一番楽しい。特に最近、そう思います」

――逆に日本の見方は変わりましたか。

「地元の鳥取が改めて好きになりました。帰ると、自然も含めて『あぁ、いい』って思うんですよね。地元は大山があって、日本海に近い。あんなに山と海が近い場所ってなかなかないんだなと思います。鳥取から東京に出てきた時より、東京から『イッテQ!』で世界を回り出してからの方が、より鳥取を好きになった気がします。 世界をいろいろ見てみて、外から見れば見るほど中がすごく好きになる。やっぱり出てみないとわかんないんだなあって思いましたね」

――GLOBE200号「豊かさのニューノーマル」企画では、若い人たちを中心に盛り上がる地方移住も取り上げています。

「いいですねー、いいですねー。今はネットがあるので、仕事をしようと思えばどこでもできますよね」

――これまで100カ国以上も回られたからこそ感じた、ということでしょうか。

70カ国ぐらい行った頃は、正直『もういい』って思ったんですけど(笑)、90100カ国目ぐらいからまた興味がわいてきました。最近、アゼルバイジャンに初めて行ったんですが、事前にネットで調べたり、ペルシャ人のおじさんに一帯の歴史について話を聞いたりして、がぜん興味がわきました。見るところは、まだめちゃくちゃあるなと。見てないところ、行ってないところは、行けるなら行った方がいい、と心から思います。本やネットの情報も大事ですけど、行ってみたら空気感も含めて違いますからね。行ったうえで、自分でどう思うかを感じていけばいい。今はそれを感じられる時代なんだと思います。アメリカもヨーロッパもガボンもルワンダもそんなに大差ない。でも、それこそ行ってみないとわからない。それに、今は行こうと思いさえすれば、意外に簡単に行けるんですよ。お金や時間のこともあると思いますが、学生でも少しお金を貯めれば、思ったより簡単に行けるよ、っていうのは言いたいですね。そう思うようになったからこそ、私もこれだけ世界を回ってよかったなと思います」(聞き手・構成:藤えりか)

イモトアヤコさん photo:Ebara Kotaro

イモトアヤコさん タレント 1986年生まれ。鳥取県出身。2007年から日本テレビ系番組『世界の果てまでイッテQ!」にレギュラー出演。番組の企画で海外ロケや登山などに挑戦し、100カ国以上を回っている。10月からはTBSラジオ「イモトアヤコのすっぴんしゃん」のパーソナリティーも務め、俳優としてテレビや舞台でも活躍している。