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首相通訳の醍醐味、日米首脳会談でも行われた「テタテ」とは?最新ニュースから学ぼう

世界でビジネスをするための外国語習得術 更新日: 公開日:

1月13日、岸田首相は首相就任後、初めてアメリカの首都ワシントンを訪問し、バイデン大統領と首脳会談を行いました。通訳のみを同席させた会談を含め、計2時間行われたとのことです。

この通訳のみを同席させた会談のことを、外交用語で「テタテ」と言います。

フランス語で内密の話である”tete-a-tete”に由来します。首脳会談の通訳は、日本では外交官の最重要任務の一つですが、通常、両国から1人ずつ通訳が出ます。今回の日米首脳会談も日本側1人、アメリカ側1人だったと思います。日本側は岸田首相の日本語を英語に、アメリカ側はバイデン大統領の英語を日本語に訳すのです(母国語から外国語への通訳です)。

私は外務省時代に、アラビア語通訳として、このテタテに同席したこともありました。しかし、アラビア語・日本語の通訳の場合は難易度が高く、アラブ諸国に通訳をこなすレベルの日本語が出来る外交官がいなかったことから、私が日本と相手のアラブの国を代表して日本語・アラビア語双方向の通訳を1人でやっていました。その責任の重さは並大抵ではありませんでした。

2004年11月25日、小泉純一郎首相(当時)とクウェートのジャビル副首相の会談で通訳する中川浩一さん=本人提供

言語は、国際社会で生き抜くための最大の武器です。外交官はその責務を国レベルで負うわけですが、その中で首相通訳は単なる機械ではなく、首脳の分身となって、適切な言葉を使わなければなりません。

これは、実は、グローバルビジネスシーンでも同様です。世界を股にかけるビジネスパーソンも、今や英語だけではなく、多数の言語を身に着け、しかもAIの翻訳に頼ることなく、自身の言葉で、会社を背負ってビジネスを進めてほしいと思います。

外国との商談の場で、社長の通訳を務めることは、社長の期待を一身に背負うことにもなり、プレッシャーですが、成功体験を積み重ねていきましょう。

日常生活では、通訳を行う機会はあまりないかもしれませんが、自治体のボランティアなどに応募して、ぜひ経験してみてください。母国語以外の言葉を訳すのがいかに難しいかわかると思いますが、それができればあなたの脳で考えた言葉を自分で訳すことは簡単に思え、外国語会話力の飛躍的な向上につながると思いますよ。

首脳会談に臨む岸田文雄首相(左)とバイデン米大統領=2023年1月13日、米ワシントンのホワイトハウス、朝日新聞社

日米首脳会談について、あなたの意見を外国語で話してみよう

先般行われた日米首脳会談について、日本がアメリカとどう付き合うべきか、あなたの考えを外国人に話してみましょう。 

まず日本語を読んで、ここから自分ならどの単語や表現を使って、自分の意見を言おうかと考えてみてください。英語でなく、日本語で考えましょう。そして自己発信文を、私が提唱する「自己発信ノート」に書いてみてください。一人称で考えることが重要です。

 

次に、日本語の記事の英語の原文を見ます。

 

あなたがイメージした英語と違っていても、まずは原文の英語をそのまま引用して、自己発信文を英語にしてみましょう。

 

このように選んだ題材の文章を少し加工するだけで、自分の意見を表す文章が完成しました。

自己発信文に戻ると、英単語はいくつかのバリエーションを持っていくことが、語学力を高めるコツになります。これらを踏まえた「オリジナル単語帳」のイメージは下記の通りです。

みなさんに「宿題」です

次の日本語からいくつの外国語(英語)が言えますか?少し日本語を言い換えても構いません。バリエーションの訓練が、ビジネス本番で必ず役に立ちます。このコラムでお伝えしているとおり、大事なことは、伝えること。思いつくかぎりの想像力でトライしてみてください。回答は次回、お伝えします。

106 悪化させる

107 軽減する

108 予見する

109 脅迫する

110 控える、慎む

前回(レッスン20)の回答

101 まひさせる paralyze, numb, cripple

102 見捨てる discard, dispose, throw away, abundun

103 養育する nurture,bring up, raise, foster

104 派遣する dispatch, send, bring to, detatch

105 操作する manipulate, operate, maneuver

メモを取らない「力」はこうつけよう(後編)

前回は、メモを取らない「力」をつけるにあたり具体的に私がおすすめしたのは、まずは日本語のテレビやラジオのニュースを30秒間聴いて、それを、覚えている限りメモに書き下す訓練でした(母国語で記憶を保つ能力を鍛えるものです)

今回は、これらを前提に、外国語の運用に落とし込んでノウハウをお伝えしたいと思います。

ビジネスの本番では、相手の長い話を外国語で聴いて、それに的確に対応することが必要です。それが、通訳の世界ではよく使われる「リプロダクション」という練習法です。

外国語の音声を一通り聴いてから、自分でその外国語の文をそのまま口頭で再現(復唱)するのです。もともと、通訳者専門のトレーニング方法だったのですが、ビジネスレベルのリスニングでも役に立つため、最近では一般の上級レベルの英語学習者にも取り入れられるようになってきました。最初は1文ずつ、慣れたら23文まとめてと伸ばしていきましょう。

この勉強法は、記憶保持力、集中力を鍛え、結果としてリスニング力、スピーキング力、語彙力、文法や構文の知識などが養われます。大変つらい練習ですが、私の外交交渉の経験からも、相手の話す内容を記憶して長く保持し、自分の発信を的確な内容にするために大変効果的でした。

ただし、初心者にはあまり効果がないので、そこは注意が必要です。最初は、レッスン7で書いたように、ヒアリングはあくまでも、自分が習ったものを繰り返すことが基本です。