1. HOME
  2. 特集
  3. メタバースのリアル
  4. 【かんたん解説】「メタバースとは」が分かる

【かんたん解説】「メタバースとは」が分かる

World Now
仮想空間のイメージ
仮想空間のイメージ(米メタ提供)

「メタバース」とは、インターネット上につくられた仮想空間を指す。

一般に、ユーザーはVR(Virtual Reality)ゴーグルなどを使い、自分の分身として動くキャラクター「アバター」として空間に入る。空間内では、他のアバターたちと交流し、買い物や仕事などをすることができる。

アバターは手元のコントローラーで動かすことができ、他のアバターとは音声で会話することによってコミュニケーションが成り立つ。

メタバース上のアバターを操作するコントローラー
メタバース上のアバターを操作するコントローラー=五十嵐大介撮影

いまのところ、メタバースの厳密な定義はない。現実世界と別の新しい空間をメタバースと呼ぶこともあれば、現実世界と仮想世界を融合した空間を指すこともある。

仮想空間を現実世界と同じように体験することができる「VR技術」のほかに、現実の画像に文字や映像情報を重ねて表示する「拡張現実(AR=Augmented Reality)技術」などが用いられる。

仮想の空間で楽しむオンラインゲームは広く知られているが、ゲームには基本的にシナリオがあるのに対し、メタバースはコミュニケーションのための空間だ。いま注目が集まるメタバースの技術は、VRゴーグルや「ヘッドマウントディスプレー」という装置を頭に着けて、自分のお気に入りのアバターで仮想空間に入り込むことが特徴といえそうだ。

メタバースは、「メタ(超越した)」と「ユニバース(宇宙)」を組み合わせた造語。アメリカのSF作家ニール・スティーヴンスンが1992年に発表した小説「スノウ・クラッシュ」で描いた世界が起源とされている。仮想空間の世界を舞台にした映画には、「マトリックス」のほか、「レディ・プレイヤー1」「フリー・ガイ」「サマーウォーズ」「竜とそばかすの姫」などがある。

2000年代に登場し、一時流行した仮想空間「セカンドライフ」が、いまのメタバースのはしりであるといわれている。ただ、当時はネットの通信速度の遅さなどが足かせとなり、普及しなかった。

現在は、PCの処理速度が格段によくなったことに加え、「NFT(非代替性トークン)」と呼ばれる新しい技術が組み合わさり、仮想空間で「お金」(暗号資産=仮想通貨)がやりとりできるようになったことで、メタバースは急速に脚光を浴びるようになった。NFTとは、画像や動画、音楽などを作成した日付や識別番号、所有者の履歴といった情報を改ざんしたり、コピーしたりできないように記録する技術で、デジタルデータにつける「証明書」のようなものだ。

こうした技術の進化を受け、世界のさまざまな企業から多くのサービスが提供されている。「VRチャット」や「クラスター」、「バーチャルキャスト」などが知られている。

2021年10月には、アメリカのIT大手フェイスブックが、会社名を「メタ」に変更し、今後はメタバース関連のビジネスに力を入れていくことを明らかにしたことで、さらに注目が高まった。同社はアバターで会議ができる「ホライゾン・ワークルームス」というサービスを手がけている。

仮想空間のイメージ
仮想空間のイメージ(米メタ提供)

コロナ感染が拡大するなか、リモートを中心とした新しい生活様式の広がりも、メタバース普及の追い風になっている。学校などの教育現場や英会話、コンサートやイベントなどのエンターテインメント、フィットネスでも導入をめざす動きがみられる。

日本でも大手百貨店やアパレルショップが、メタバース上に「バーチャル店舗」を試験的にオープンしている。自分のアバターがお店に入ると、同じくアバターの店員が迎えてくれる。このアバターは実際の店舗スタッフが操作しており、リアル店舗で取り扱っているファッションを紹介してくれる。気に入った商品があれば、ネット通販のサイトへ飛んで購入することができるケースが多い。

仮想空間に職場をつくり、「バーチャルオフィス」で従業員たちが働く試みも出てきている。従業員は、自宅のパソコンからバーチャルオフィスに出社し、それぞれの座席に座る。アバター同士が近づけば、会話ができる。遠隔地で勤務する従業員同士も、すぐ隣に座ってコミュニケーションがとれる。

いまの技術では、視覚や聴覚を再現することに重きがおかれているが、技術開発がさらに進めば、触覚や嗅覚もメタバース上で共有できるようになり、リアルとほぼ変わらない体験ができるようになるともいわれる。

ただ、メタバースが本格的に普及するのは、「5~10年はかかる」(メタバース関連の事業に詳しいシリコンバレー在住のベンチャーキャピタリスト)とみられている。

まず、使用するハード面での制約がある。VR用のゴーグルは、すでに世界に約13億台あるといわれるスマートフォンに比べると、まだ普及は始まったばかりだ。しかもVRゴーグルは重たいので、長時間装着していると疲れがたまったり、「VR酔い」を感じたりする人もいるという。関連のデバイスをどこまで軽量できるかが、普及のカギを握っているといえそうだ。こうした状況で、メタバース関連の企業は、小型で軽く、安全性の高いデバイス開発にしのぎを削っている。多くの消費者にとって買い求めやすい価格で販売できるかも重要だ。

ブルームバーグ・インテリジェンスは、メタバース関連の市場規模について、2020年時点は4787億ドル(約61兆円)だったのが、24年には7833億ドル(約100兆円)に拡大する可能性があるという予測を発表している。(中川竜児)