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変わるハッカー文化 「犯罪者」を当局に突き出す

World Now 更新日: 公開日:
米ラスベガスで開幕したハッカー世界最大の祭典「デフコン」
米ラスベガスで開幕したハッカー世界最大の祭典「デフコン」=2013年8月、藤えりか撮影

髪を赤や黄、青や緑に染めたハッカーらでごった返すホテルに、黒いシャツを着た丸顔の白人男性がぬらりと現れた。8月1日、ラスベガス。世界中からハッカーが集まる「デフコン」の記者室。男性は、チェット・ウバーと名乗った。

ネブラスカ州オマハに住むウバーは、「常に警戒するプロジェクト」の一員だと自己紹介した。ネット上で犯罪やテロ活動などを発見したら米連邦捜査局(FBI)などに知らせる、ボランティアの「サイバー自警団」だと説明。母親が経営していたサイバーカフェを拠点に1996年に活動を始め、現在、米国各地の約600人で1日2億5000万以上のIPアドレスを監視しているという。デフコンには「若き有能なハッカー」のリクルートに来たとも話した。

ウバーが、「エイドリアン・ラモも我々のメンバーだ」というと米国人記者らが色めき立った。ラモは、民間告発サイト「ウィキリークス」への情報流出に関与したとして米軍に逮捕された上等兵を、当局に突き出したと主張している人物。

「ウィキリークス」は、米軍のヘリがイラクの民間人を攻撃した映像を流したり、アフガニスタンでの作戦に関する米軍の機密文書を公表したりしている。創設者はやはり元ハッカーだ。だが、ウバーは「よい市民は、悪事を見つけたら当局に知らせるものだろう」という。

セキュリティー研究者のダン・カミンスキーによれば、「ハッカーは基本的にカウンターカルチャーの活動というのが長年の共通理解だった」。しかし最近はハッカーと当局の接近が、珍しくない。デフコンを創設したジェフ・モスは昨年、国土安全保障省の諮問委員になった。「反体制の側にいたハッカーに、体制側や研究者社会が耳を傾けるようになっている」とカミンスキーは指摘する。

ダン・カミンスキー
ダン・カミンスキー=米シアトル、勝田敏彦撮影

デフコンの直前にやはりラスベガスで開かれたサイバーセキュリティーの会議「ブラックハット」では、元CIA長官のヘイデンが基調講演。集まったハッカーらに語りかけた。「サイバーは陸、海、空、宇宙に続く第5のドメイン(領域)だ。最初の四つは神が作ったが、最後の一つはあなた方が生み出した。そこでの戦いを考えるのは、何と難しいことか」

米国では昨年から、若者にハッキング技術を競わせる競技会が始まっている。国防総省や国土安全保障省が後援し、将来の「サイバー戦士」を国家規模で発掘するのが狙いだ。これまで約4000人が参加したという。(藤えりか)