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「育休取得、4人に1人が男性」の韓国 その理由は? 日本と共通の課題も

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「育休の先進地」としてよく名前が挙がるヨーロッパの国々に比べて、アジア各国の男性育休事情はどうなっているだろうか。お隣、韓国では、「男性も取った方が得」になる制度がつくられている。男性育休の取得期間は日本よりずっと長い。ただ実際に育休を経験した男性に聞いてみると、「職場の目」や「男性自身の意識」が課題だという、日本と似た状況も見えてきた。

■「パパの月」 男性が取った方が得になる制度

韓国の2021年のジェンダーギャップ指数は102位(日本120位)、19年の出生率は女性一人あたり0.92人(同1.36人)。背景の課題も日本に通じるものがある。

韓国に育児休業制度が導入されたのは1987年。当時は1歳未満の乳児を持つ女性が対象だった。95年に法改正し、男性も選択的に育休を取れるように。2001年の改正では、期間が延長されたほか、給付金が支給されるようになった。

男性育休で大きな転換になったのは14年の法改正だった。

法律の名前が「父母育児休業制度」に変わった。対象が満8歳(または小学校2年生)までに要件が緩和された。父母それぞれが最大1年、取得できる。分割して取ることもできるようになり(1回のみ)、それまでより柔軟な使い方ができるようにもなった。また、労働者の保護として、解雇や降格の禁止、復職後の地位保障などの規定など、違反企業への罰則も採用された。

特に父親の利用率を高めるため、このときの改正で「目玉」になったのが、「パパの月」制度だ。

この制度は、母親が育休を取った後、同じ子どもに対して父親が育休を取った場合(男女逆でも可)に、給付金が増額されるボーナス制度だ。

通常母親が取得する一人目の育休では、最初の3カ月に給付する額は給与の80%(上限額150万ウォン=約14万5千円)だが、父親への支給額は最初の3カ月分は通常の給与の100%(上限額は250万ウォン=約24万円)と高く設定されている。4カ月目以降はどちらも50%だ。
韓国は男性育休の取得状況を、「育休を取った人のうち、男性が占める割合」でみている。施策が効果を上げ、02年の段階では、育休を取る人のうち2.1%に過ぎなかった男性の割合が増えていった。17年には13.4%、19年には20%を超え昨年は24.5%まで上昇した。育休を取った人の4人に1人が男性、という計算だ。

日本で父親の育休取得を促す制度に「パパ・ママ育休プラス」がある。これは夫婦で育休を取ると1歳2カ月まで期間が延長できるというもの。
ユニセフの報告書「Are the world's richest countries family friendly?」によると、実際の額で計算すると、平均的な給与全額が出る日数として最も長いのが日本で30週分、2位が韓国で17週分だという。

日本の育休制度では、最初の180日間は育休前の給与の67%、それ以降は50%が育児休業給付金として支給されることになっている。

ただし夫婦で育休を取得しても給付金に差はない。比べると韓国の制度は「男性も取った方が得」な制度になっているといえる。

給付を充実させる動きは今も続いている。

来年からは、子どもが生後12カ月未満の期間に両親とも3カ月以上の育休を取った場合、夫婦で3カ月最大で1500万ウォン(約145万円)を給付する「3+3父母育児休業制」も新設。4カ月以降の給付金についても増額される予定だ。経営者らにもインセンティブを与えるため、中小企業向けに月30万ウォンの支援金なども導入予定だ。

■男性育休、平均で約半年間

昔に比べて育休を取る男性は大きく増えたとはいえ、「まだ足りない」という声は大きい。

妻の1年間の育休と入れ替わる形で、今年3月から半年間育休を取ったという30代後半の教員の男性は、育休の期間とその間の経済的な負担に悩んだという。

「パパの月」制度を利用したことで、3カ月は上限額を支給されることになったが、育休中には全額支払われず、一部は復職後6カ月たってからの支給になる。

「この部分が夫婦で一番悩んだところでした」。復職後の人事評価も気になった。「育休は1年取れますが、期間を6カ月にしたんです。あまり長くは休めないと思ったので」。

韓国政府の統計によると、男性の育休取得の平均期間は5.8カ月。比べて日本の場合は7割超が2週間未満とぐっと短い。これは韓国の「パパの月」の適用条件が30日以上で、ボーナスが支給される期間が3カ月になっているのが大きいと言える。

男性育休に対する職場や周囲の雰囲気はどうだろう。

この男性は「公務員なので恵まれている部分はあります。父親が育休を取ると聞いてびっくりしている人はいましたけれど、否定的な反応はほぼありませんでした」と振り返る。テレビのコマーシャルでも「父親の育休」が盛んに勧められていたことも大きかったという。

最近は育児中の記録を動画で撮影してYouTubeで公開する父親や、育休期間中に妻や娘につくったレシピを出版する男性など、「育児する父親」像は少しずつ定着してきている。

本人は問題なく育休を取れたという男性だが、男性育休が増えるためには何が必要かを尋ねると、経済的な保障のほかに「職場の偏見がなくなること」と「男性自身の意識」という答えが返ってきた。

「子育ては個人の問題、という職場が多いと思いますが、実際には社会や国の問題だと思うんです。それに私自身、父親は働いてお金を稼いでくるもの、というなかで育ちました。でも子育ては母親だけの専有物じゃありません。なかには仕事している方が楽だから、わざと夜遅くまで仕事をするという男性もいます。それだけ子育ては大変だから、夫婦で関わるべきなんです」

育休期間中は、朝食をつくり、妻のお弁当も用意した。子どもと一緒に保育園に登園した。家では洗濯や掃除などの家事全般をこなし、保育園からいつ連絡が来ても言いように待機した。

「育休のおかげでより積極的に子育てに関わることができました。子どもに父親と一緒にいる時間が増えましたし、とても良かったです」
育休を取った実感だ。