――韓国コンテンツは、いつから勢いをつけてきたのでしょうか。
やはり、2000年初めごろからアジアで人気に火がついた「冬のソナタ」が始まりです。その後、自然発生的に韓国ドラマの輸出ブームが起きましたが、韓国政府はこれをみて新たな成長産業として考え始めました。コンテンツの輸出額は増え続け、18年は96億ドル(約1兆円)に達しています。19年、20年の統計はまだ出ていませんが、増加傾向は保っています。
――やはりドラマや映画、K-POP関連が大部分なのでしょうか。
実はゲームが約6割を占めています。韓国が強いのがオンラインゲームですね。特に中国や東南アジア市場で韓国のゲームは人気があります。
――コンテンツ産業への韓国政府の寄与はどれほどあるのでしょうか。
結果をデータで示すのは難しいのですが、一つの物差しとしてコンテンツ分野に投入した政府予算の推移があります。1999年は約1000億ウォン(約95億円)で所管の省の予算の11.7%でしたが、20年は5565億ウォンと5倍を上回り、省予算の17%になっています。同じ時期に全体の政府予算の増加は4倍ほどだったので、そのペースを上回っています。
――投資の動きは?
最近の特徴は中国マネーです。ワンダという大企業グループが韓国の制作会社に投資をしました。動画配信のiQIYIは、韓国の有名な脚本家と俳優が加わったドラマの配信を決めました。中国勢として国外市場の攻略を成功させるには、韓国コンテンツが必要だと判断したのでしょう。ネットフリックスやiQIYIが韓国コンテンツに手を伸ばすのは、韓国市場を狙った動きではありません。欧米の市場を念頭に置いたものでもありません。韓国コンテンツを使い、東南アジアや中東、中南米の市場をカバーする戦略なのです。
――確かに爆発的な人気ですね。
韓国のコンテンツ産業が、デジタル技術を活用するDX(デジタルトランスフォーメーション)に迅速に対応してきたことが、大きな要因です。00年代初めの韓流ブームは衛星放送の普及と軌を一にしています。インターネットの高速化により、オンラインゲームが拡大しました。ネットで動画が簡単にみられるようになると、ユーチューブを活用して歌手PSYさんの「江南スタイル」が世界で大ヒット。BTSもユーチューブを戦略的に利用していますよね。DXは従来のコンテンツの流通を変え、その波に韓国は乗ったといえます。
――実際に、どの国で、どれほど韓国コンテンツは受け入れられているのでしょうか。
昨年、ネットフリックスの状況を調べてみました。例えば、韓国のゾンビ映画「#生きている」が配信されると当初は人気上位に位置しましたが、一時的です。全体的にみると欧米市場で商業的に注目に値する成功を収めた例はほとんどありませんでした。
――持続可能性はありますか?
ユーチューブやネットフリックスなどコンテンツを提供する「プラットフォーム」の影響力は、今後5、6年は続くとみています。長期的には分かりませんが、中期的にはプラットフォームの力が維持されることで、韓国コンテンツが持続する可能性は十分にあるでしょう。
韓流が持続するためには次なるブームも必要ですが、引っ張るのは「ウェブ漫画」だと断言します。日本でも人気のドラマ「梨泰院クラス」も原作はウェブ漫画です。漫画からドラマや映画にもなるため、コンテンツとしての相乗効果がとても高いといえます。
――デジタル戦略が功を奏したといいますが、そもそも、どうして外に出る力をつけたのでしょうか。
日本は「ガラパゴス」といわれながらも、国内に一定の市場規模があるため、あえて国外に出る必要性はありません。欧州のうち文化産業といえばフランスですが、アフリカの旧植民地を擁しているので実際の市場規模は大きい。韓国は自国にそこまでの市場はなく、だからこそ外に打って出て生き残ろうとしているのです。