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長時間化するスクリーンタイムが肌に与える影響を考える

ニューヨークタイムズ 世界の話題 更新日: 公開日:
Compared with the well-understood dangers of ultraviolet light (skin aging and cancer), science isn't settled on the effects of indoor sources of blue light on skin. (Agnes Ricart/The New York Times) -- NO SALES; FOR EDITORIAL USE ONLY WITH NYT STORY BLUE LIGHT RISKS BY CRYSTAL MARTIN FOR MAY 40, 2020. ALL OTHER USE PROHIBITED. --
Agnes Ricart/©2020 The New York Times

最近、家の中にいてオンラインで過ごす時間が長くなったことで、ブルーライトの危険性について耳にする機会が以前よりより増えたのではないだろうか。パソコン、スマホ、タブレット、テレビ、それにLED電球。みんなブルーライトの光源だ。こうしたデバイスにつながっている現在、私たちはブルーライトまみれになっているのでは?

肌へのダメージについて、もっと心配する必要があるのでは?

分かっているのは、以下のことだ。紫外線の危険(皮膚の老化やがん)についてはよく知られているが、ブルーライトの屋内光源が肌に及ぼす影響について科学的には解明されていない。色素沈着過剰や老化の早まりを引き起こす可能性があるものの、その他のこと――たとえば、それは何が原因か――については、私たちが家に閉じ込められるずっと前から議論になっていた。

ここでは危険性を説明するのに役立つよう、ブルーライトと皮膚の専門家と一緒に調べてみた。

ブルーライトとは何か

光の悪影響について考える時、私たちは通常、紫外線(UV)を思い浮かべる。紫外線は目に見えない。しかし、ブルーライトは見える。それをクールな色合いの白色光(LED電球のような)として知覚するかもしれないし、青い色にまったく気づかないかもしれない。屋内の光源はさまざまな波長を放出し、それらが組み合わさってあなたが知覚する色をつくりだすからである。

ブルーライトが肌に与える影響はまだ十分に分かっていないが、この光は他のリスクがあるため、健康上の重要な関心事だ。「ブルーライトは網膜にダメージを及ぼし、メラトニンの分泌を減少させるため、睡眠のサイクルを妨げる」と、ニューヨークの皮膚科医ミシェル・ヘンリーは指摘する。

もちろん、光源との近さは危険について考える際の要素の一つである。「ブルーライトの量は、パソコンからよりテレビからの方が少ない。距離が遠いからだ」とヘンリー。「さらに、スマホの方がパソコンよりも顔に近いので、浴びる光の量が多い」と言っている。

ブルーライトはどう肌にダメージを与えるのか

紫外線は細胞のDNAに直接的なダメージを与えるが、ブルーライトは酸化ストレスによってコラーゲンを破壊する。フラビンと呼ばれる化学物質がブルーライトを吸収する。その吸収の間に起こる反応が不安定な酸素分子(フリーラジカル)を生成し、皮膚にダメージを与えるのだ。

「それが(皮膚に)入って、基本的にコラーゲンに穴を開ける」とヘンリーは言う。

ブルーライトにさらされることは、有色人種の皮膚にとって一層の問題がある。皮膚学誌「Journal of Investigative Dermatology」に掲載された2010年の研究は、皮膚の色が中程度から高濃程度だと色素沈着過剰を引き起こすが、明るい色の皮膚は比較的影響を受けないことを示している。

医学界はUV光への反応に基づいて皮膚の色を分類した。タイプ1は、最もUVに敏感な最明色で、「ニコール・キッドマンやコナン・オブライエンがこの部類に入る」とマシュー・アブラムは言っている。米ボストンの「マサチューセッツ総合病院皮膚レーザー・コスメティックセンター」の所長だ。分類は、色が最も濃くて日焼けの可能性が最も低いタイプ6まである。

2010年の研究だと、タイプ2の皮膚ならブルーライトにさらされても色素沈着が起きない。

有色の皮膚の色色が濃くなり、それが数週間持続する。

「タイプ4、タイプ5、タイプ6の色素沈着は、色白の患者の場合とは異なる反応が生じるようだ」とアブラムは指摘する。「この点について検討するには、より大掛かりな研究が必要である。なぜなら、色素沈着は患者が最も懸念することの一つで、治療次第で患者の満足度が低下するからだ」と言っている。

ブルーライトはニキビの治療に使えるか

使える。ブルーライトのランプはニキビや前がん性病変を治す。「肌にダメージを与えるけれど、その半面、ニキビも治療できる」とアブラムは言う。「気分や記憶を良くすることにも役立つから、単純に『良い』とか『悪い』とかは言えない」

肌へのダメージをどう防ぐか

一番簡単なのは、デバイスから放出されるブルーライトの量を制限すること。アップルの製品には「ナイトシフト(夜間切り替え)」が付いており、より暖色系にシフトできる。標準的なLED電球をブルーライトの放出が少ないタイプに交換するのもいい。

酸化鉄を含むミネラル(無機質)の日焼け止めは、ブルーライトを防御するゴールドスタンダード(黄金律)である。酸化鉄を含むと、酸化亜鉛と二酸化チタンだけの場合と比べて、可視光に対する保護効果が高いことが分かっている。

「うまくごまかすなら、色付きの日焼け止めが有効。酸化鉄が含まれているのが普通なので」とヘンリーは言う。「Skinbetter Science Sunbetter Tone Smart SPF 68 Sunscreen Compact」という55ドルの製品は、そうしたミネラルの日焼け止めの一つだ。酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化鉄が配合されており、褐色の肌にも滑らかになじむ。

局所的な抗酸化物質はブルーライトがつくりだすフリーラジカルの抑止に役立つはずだが、これもやはり科学的に十分立証されていない。

「純粋に科学の立場からは、私は抗酸化物質を薦めない」とアレクサンダー・ウォルフは言う。日本医科大学の講師で、光と酸化ストレスがいかに早期の老化を招くかについての専門家だ。「ただし、抗酸化物質が培養細胞でうまく作用することを示す実験は確かに多くある。ビタミンCは細胞に直接浸透し、細胞に酸化による何らかの損傷を与えた場合、ビタミンCないし抗酸化物質は間違いなく役に立つ」
抗酸化物質のブルーライトに対する効果は証明されていないことを承知で、ミネラルの日焼け止めをたっぷり顔に塗って自宅で座っているのが気味悪く感じるなら、抗酸化物質が日焼け止めの優れた代替になる。抗酸化物質はまた、自宅で使われる青いLED光デバイスによるダメージを最小限に抑えてニキビの治療にもなる(ミネラルの日焼け止めはブルーライトをさえぎり、その殺菌作用を阻止してしまう)。

抗酸化物質に関する限り、ビタミンCは、その分子が皮膚に実際に浸透するほど微小だから、適切な選択である。36ドルの「Hyper Skin Hyper Clear Brightening Clearing Vitamin C Serum」はビタミンE配合でビタミンCを15%含んでおり、この二つの成分がフリーラジカルにあらがう潜在力を相互に高めるのだ。

ブルーライトをめぐる騒ぎが「Goodhabit」のような新製品の誕生につながった。その「Rescue Me Glow Potion Oil Serum」(80ドル)は、海洋由来のたんぱく質とエキソポリサッカライド――皮膚を覆う保護バリアーをつくる微生物が分泌するポリマー(高分子化合物)――を組み合わせたものだ。ポリマーは、抗酸化物質のようなフリーラジカルを中和する機能よりも、むしろブルーライトをさえぎる日焼け止めのように作用する。

ブルーライトについての会話からは、重要な事実の一つが往々にして除外されてしまう。それは、ブルーライトが抜群に豊富な光源は太陽だということだ。

「人間の目は、明るさを測るのに適していない。瞳孔が調節されるからだ」とウォルフは言う。「タブレットやスマホは明るいと思うかもしれないけど、肌に届く光の量という点では、太陽と比較すると非常に少ない」

こうしたことをすべて考えに入れれば、あなたのブルーライトへの露出度は新型コロナが大流行する前の生活と比べ、たぶん低下しているだろう。それは、屋内で過ごす時間が多くなっているという単純な理由からである。(抄訳)

(Crystal Martin)©2020 The New York Times

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