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現実に起きている「ズーム疲れ」

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タブレットで「Zoom」を使う女性=2020年4月、ロイター(写真はイメージ)

"Zoom Fatigue Is Real"

4月23日付 ウォールストリート・ジャーナル紙

コロナウイルス対策として自宅待機をしている我々にとって、 「Zoom(ズーム)」などのオンラインミーティングは今や日常茶飯事となった。これは、昔のSF小説で近未来技術として描かれていたようなものだが、それが現実となり、今こうして長距離にいる人とこんなに生き生きと話せるのは非常にありがたい。もしこのようなパンデミックが、インターネットが今ほど発達していなかった数年前に起きていたら、今よりも混乱を極めていただろう。一方、オンラインミーティングをたくさんすることで、負担に感じる人が徐々に増えてきている。これは「ズーム疲れ」と呼ばれ、今アメリカで話題になっている。

分析していくと、この現象には複数の背景理由がある。一つは回数が非常に多いということ。ロックダウンされたら、自由時間が多くなってrainy-day jobs(隙間時間があったらするような優先度の低い仕事)をたくさんtick off(終わらせる)ことができるのではないかと期待していた人は少なくない。しかし実際は、今までの社交時間が無くなったわけではなく、全てそのままオンラインに移っただけだった。従来の仕事と私生活の活動に加えて、コロナウイルスのために新しく計画されたものもこなさなければならなくなった。結果として、カレンダーがwent berserk(クレージーになってしまった)人は多い。

これにより、キャパオーバーしてしまい、オンラインはもう懲り懲りだ、と感じてしまった人が出てきている。「最初の頃は友人とビデオチャットすることを楽しみにワクワクしていたが、今では招待を断るようになった」と、ある西海岸に住む一人の母親はいう。ロックダウンになったばかりの頃は、オンライン上での社交時間を作ることに必死だったが、その後、予定が詰まり過ぎたことにより、逆にそれが心配のタネになった、という人もいるそうだ。

家にいるから、逃げ道がないという問題もある。今まで利用していたflaking(約束をすっぽかす)ための言い訳も、もう使えない。ロックダウンである以上、ほかに行かなければならない場所や用事があるとは言えないのである。

オンラインミーティングは脳への負担にもなっている。コミュニケーションにおいて重要なsocial cues(社会的手がかり)や相手の表情・身ぶりなどを、オンライン上で読み取ることは難しい。オンラインミーティングのマナーやエチケットは何なのかを知るのも難しいし、またWeb会議システムに不慣れであるとミュートなどの機能をうまく使えず、相手に失礼になってしまうこともある。

さらに、your interlocutor(会話の相手)の顔と自分の顔を同時に見られるということが認識能力の負担になっているということも、疲れの原因になりがちだ。実はこの理由で、私が所属している北九州市立大学の英米学科はオンライン会議をビデオなしで、声のみで実施しているが、その方が確かに疲労感が少ないと感じる。やはり最先端の技術でも、使い方の工夫が必要になる。