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創設75年、幹部の男女同数を達成した国連 次の課題はフィールドにあり

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国連のポラード事務次長=東京の国連広報センターで、丹内敦子撮影

国連本部の幹部は男女同数を達成

――今年1月、国連史上初めて、最高幹部レベルで男女同数を達成したそうですね。

はい、上級管理職レベル、事務次長および事務次長補レベル、つまり最高幹部レベルで男女同数を達成しました。

――いつから、どんな目的で、男女同数にするような動きが始まったのですか?

これは国連の組織全体を対象にしたもので、2017年から男女同数戦略を開始しました。アントニオ・グテーレス事務総長が掲げた約束の一つです。 SDGsのジェンダー平等に関する目標5(ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る)に貢献するものでもあります。男女同数は国連の核心的な価値を反映しています。

国連本部ではずいぶん進歩を遂げましたが、フィールドにいる女性職員についてはまだ課題があります。フィールドの仕事の多くは困難な勤務地にあり、そこでの女性の割合は約29%ですので、まだまだやるべきことがあります。国連はさらなる進化と成長を遂げたいと願っています。

――ポラード事務次長の部署がこのような戦略を進めるうで重要な役割を担っているそうですね。

女性のための国連基金、UN Womenと協力して、女性がもっと柔軟な働き方ができ、育児休暇を増やし、ワーク・ライフ・バランスに配慮した政策をつくり、さらにその実施状況を監督する役割を担っています。

――あなたは国連トップの1人ですが、これまで女性であることに苦労を感じたことはありましたか?

若いときを振り返ると、女性だから苦労したとは言いませんが、男性の同僚よりも何かをするのが難しかった時代はあったとは言えるでしょう。例えば、最初の昇進は、男性同僚よりも厳しい競争を勝ち抜かなければなりませんでした。とても協力的な上司がいたことは非常に幸運でした。彼らの大多数は男性でしたが、彼らにとっても若い女性をどのようにサポートしたかを示すのは理に叶ったことだったので、私にはチャンスでした。ですから、私はこうした課題をチャンスに変え、後悔することは何もありません。

――国連で働く日本人職員の男女比はどうですか?

国連事務局で働く日本人のバランスは女性の方が多くなっています。日本人同僚の63%が女性で、37%が男性です。

――日本は世界経済フォーラムが昨年末に発表したランキングで世界121位でしたが、この結果についてどう思いますか。

私たちの究極の目標は、すべてのスタッフが活躍できる環境をつくることだと言えます。男女同数はすべての国にとって重要なことで、女性に力を与えると、社会に貢献し得る力となるのです。 女性が最大限の能力を発揮できるようになると、あらゆる国が恩恵を受けます。

国連でも、女性が職員の一部となり、キャリア開発について支援されることは重要です。そうすることで、国連は才能あるスタッフを抱え、一人ひとりが自らの可能性を発揮できるようになるからです。

国連創設75周年と期待される役割

――今年は国連創設75周年だそうですね。

はい。国連広報センターが先ごろ主催した国連創設75周年記念イベントでスピーチをし、日本の聴衆と議論しました。次世代につながる国連の今後25年について議論し、一緒に未来を築いていこうという機会となりました。私からは特に日本の若者に、こうした議論に参加して未来に進もうと訴えました。

――日本人は昨年、大型台風や猛暑といった異常気象を経験し、気候変動の脅威を強く感じました。気候変動は地球規模の問題で、国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)の果たす役割に期待が寄せられます。

次回COP26はグラスゴー(英国)で開催されます。各国政府は私たちの世界が必要とし、野心的に求める変化を実現しなければなりません。削減や適応についての高い目標、そのような目標を達成するためには巨額な資金も必要です。これは世界に根ざした問題と挑戦です。あらゆる都市や地域、銀行、年金基金、業界に対し、世界の平均気温上昇を1.5度までに維持、抑えるにはどうするべきか再考するよう呼びかけています。

科学界は非常に明確な結論を出しています。2030年までに温室効果ガスの排出量を2010年レベルから45%削減し、2050年までに正味ゼロエミッションを達成する必要があります。これは膨大な作業です。主だった義務は主要排出国が担わなければなりません。

―― 他方、主要排出国である米国がパリ協定から離脱の手続きを進め、COPの限界も見えてきました。

気候危機を助長した国が先頭に立たなければなりません。したがって、そうした国の対応が遅れると、見通しは非常に厳しいように見えます。 しかし、グテーレス事務総長は非常に野心的で楽観的です。気候変動との闘いは今後も続くと思いますが、テクノロジーは私たちの味方だと思います。

科学者たちは、手遅れではないと言っています。また、エコノミストとあらゆる資産運用会社は、気候変動への影響を重視した投資こそが21世紀の競争に勝利する鍵だと語っています。そしてグレー(環境問題に関心のない)経済からグリーン(環境問題への関心が高い)経済に移行するために利用可能なすべてのツールと知識は、すでにそろっています。それを活用するかどうかは、私たち次第です。 国連が主導して呼びかけます。私たちは、この危機にコミットしています。 現実にある危機なのですから。

――日本の若者に向けてメッセージを。

日本人の若者に国連でのキャリアを検討してもらい、国連のポストへの上手な応募方法を伝えるために来日しました。私が日本で出会った若者たちからは熱意を感じました。こうしたやりとりが継続され、国連からのメッセージがずっと届くことを望みます。

日本の若い人たちへの私のメッセージは、私たちは、脆弱で相互に結びついた小さな世界に住んでいるということです。若者の未来は、地球上のすべての若者の未来と密接に絡み合っています。国連は、すべての人にとって持続可能な未来について取り組める場所です。ですので、日本の若い人たちに国連についてもっと学び、私たちに加わって下さいと呼びかけたいです。

【ポラード事務次長略歴】
1960年生まれ。西インド諸島大学キングストン校(ジャマイカ)で会計学修士号を取得。89年に政府による実施プロジェクト責任者として国連開発計画(UNDP)と連携したことから国連でのキャリアがスタート。平和維持活動局や国連ボランティア計画(UNV)、総会・会議管理局(DGACM)などで要職を歴任している。