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ニューカレドニアの「すごいおばあちゃん」ウミヘビ研究に大貢献

ニューヨークタイムズ 世界の話題
A photo provided by Claire Goiran/University of New Caledonia shows from left, Geneviève Briançon, Aline Guémas, Monique Zannier, Monique Mazière, Sylvie Hébert, Cathy Le Bouteiller and Marilyn Sarocchi. A group of snorkeling seniors has helped scientists collect data about greater sea snakes in New Caledonia. (Claire Goiran/University of New Caledonia via The New York Times) -- NO SALES; FOR EDITORIAL USE ONLY WITH NYT STORY SCI SEA SNAKES GRANDMAS BY ANNIE ROTH FOR NOV. 30, 2019. ALL OTHER USE PROHIBITED. --
大型のウミヘビ研究で、データ収集に貢献したおばあちゃんダイバーたち=Claire Goiran/University of New Caledonia via The New York Times/©2020 The New York Times

オーストラリアの海岸からちょうど1600キロほど離れたところにニューカレドニアがある。そこは生命にあふれる多島海だ。コーラル・シー(サンゴ海)の中心部に位置するフランス海外領土で、ジュゴンやマンタ、有毒のウミヘビなど9300種を超える海洋生物が生息している。

なかには、体長が1.5メートル近くになり、一口で人間をかみ殺すことができる大型のウミヘビもいる。だが、そうした恐怖が75歳のMonique Zannierを悩ますことはない。彼女は、ニューカレドニアの中心都市ヌーメアのシトロン湾でいつもシュノーケリングを楽しんでいる7人のうちの1人だ。いずれも60歳から75歳の女性たちである。

「シトロン湾は私たちの遊び場だ」とZannierは言う。「ほぼ毎日、ここにいる。私たちは湾の隅々まで知っている」

彼女にとっては定期的な鍛錬として始まったのだが、やがて水生ヘビを研究する科学者たちへ豊富なデータや情報を提供することになった。こうした爬虫(はちゅう)類の生態に関する新たな知識を求める研究者たちは、彼女たちを「すごいおばあちゃんたち」との愛称で呼び、頼りにするようになった。ヌーメアの浅瀬湾にやって来る何百もの大型ウミヘビの追跡を手助けしてくれるのだ。

A photo provided by Claire Goiran/University of New Caledonia shows Claire Goiran with a Hydrophis named Jack in Noumea, New Caledonia, in the South Pacific. A group of snorkeling seniors has helped scientists collect data about greater sea snakes in New Caledonia. (Claire Goiran/University of New Caledonia via The New York Times) -- NO SALES; FOR EDITORIAL USE ONLY WITH NYT STORY SCI SEA SNAKES GRANDMAS BY ANNIE ROTH FOR NOV. 30, 2019. ALL OTHER USE PROHIBITED. --
「ヌーメアのジャック」と名付けられたマダラウミヘビを持つニューカレドニア大学の海洋生物学者Claire Goiran=Claire Goiran/University of New Caledonia via The New York Times/©2020 The New York Times

学術誌「Ecosphere(エコスフィア)」に2019年10月に掲載された論文は、シュノーケリングサイエンティスト(おばあちゃんたち)のチームと今回の研究の主著者でニューカレドニア大学の海洋生物学者Claire Goiran、オーストラリアのマッコーリー大学の進化生物学者Rick Shineとの協働の成果を強調している。

「彼女たちは称賛されるべきだ」とHarold Heatwoleは言う。オーストラリアのニューイングランド大学教授(動物学)で、この研究には関係していないが、「彼女たちは科学に多大な貢献をした」と指摘する。

Heatwoleによると、彼女たちの丹念なデータ収集で、世界中の広範囲にわたるどんなウミヘビよりも詳しい大型ウミヘビの生態についての情報がもたらされた。

地上の親類とは違って、ウミヘビはほとんど研究されていない。大半のウミヘビはかなり沖合に生息しており、扱いに危険が伴うので、ウミヘビを研究する手法や意欲がある研究者がほとんどいないのだ。

A photo provided by Claire Goiran/University of New Caledonia shows Claire Goiran, a marine biologist at the University of New Caledonia, photographing a Hydrophis major sea snake named Cathy in Noumea, New Caledonia, in the South Pacific. A group of snorkeling seniors has helped scientists collect data about greater sea snakes in New Caledonia. (Claire Goiran/University of New Caledonia via The New York Times) -- NO SALES; FOR EDITORIAL USE ONLY WITH NYT STORY SCI SEA SNAKES GRANDMAS BY ANNIE ROTH FOR NOV. 30, 2019. ALL OTHER USE PROHIBITED. --
ヌーメアのキャシーと名付けられたマダラウミヘビを撮影するニューカレドニア大学の海洋生物学者Claire Goiran=Claire Goiran/University of New Caledonia via The New York Times/©The New York Times

「ウミヘビについては、あまりわかっていない」とShineは言う。「私たちが知っていることのほぼすべてが、漁網に偶然かかったウミヘビから得たものだ」

ShineとGoiranは2013年、神秘的な大型ウミヘビについて、何ができるかの検討に乗り出した。過去8年間にたった6回しか大型ウミヘビを見られなかったにもかかわらず、彼らはシトロン湾を研究の場に選んだ。大型ウミヘビには尾に独特の斑点があり、それぞれの個体は写真から容易に識別できる。

湾を調査する時間に限りがあることとフルタイムで働いてくれるボランティアの助手がいなかったため、GoiranとShineの研究はゆっくりとスタートした。研究当初の3年間で、2人が目録にした大型ウミヘビはわずか45匹だった。

ところがGoiranが、引退生活をしていたAline Guémas(61)に出会った2017年6月、すべてが変わった。ある朝、Goiranがシュノーケリングをしていた際、彼女はサンゴ礁を写真に撮っていたGuémasと出会った。

「私たちは水中でおしゃべりをし始め、私が何をしているかを説明すると、彼女は手伝いたいと言ってくれた」とGuémasは振り返る。

GuémasはGoiranの毎週の調査に参加するようになり、ウミヘビを撮影し、サンゴ礁上の位置を記録した。

「とてもうれしかった」とGoiran。「私がしてほしかったことを彼女は正確にやってくれた」

GoiranがGuémasに他の引退生活をしている人たちも誘ってくれるよう促すと、ほどなくして彼女は7人のチームを結成した。

「彼女が友だちに声をかけ、その友だちが他の友だちにも声をかけた」とGoiran。

最初にグループに加わったのが、理学療法としてシュノーケリングを始めたZannierで、帆船で世界を一周した62歳の元看護師Sylvie Hébertとヘビを怖がる63歳の体操選手Marilyn Sarocchiも同じようにシュノーケリングをしていた。

「毎朝8時から8時半の間に集合した。潜水用具をつけて1時間ないし2時間、泳いだ」とSarocchi。「浜辺に戻ってお茶を飲み、そこの美しさを堪能する。とてもリラックスできる」と彼女は言う。

グループを結成して以来、「すごいおばあちゃんたち」はシトロン湾でのシュノーケリングによる調査を何百回も繰り返し、何百匹もの大型ウミヘビを識別した。

「彼女たちが仕事に取り組むようになってすぐに、私たちは湾の大型ウミヘビの豊富さを非常に過小評価していたことに気づいた」とGoiranは研究に記している。

A photo provided by Claire Goiran/University of New Caledonia shows Monique Mazière in Baie des Citrons, a bay in New Caledonia
マダラウミヘビを撮影するGoiran=Claire Goiran/University of New Caledonia via The New York Times/©2020 The New York Time

彼女たちが撮影した写真は、25カ月の間にシトロン湾にきた大型ウミヘビが少なくとも140匹がいたことを証明した。

この研究は、大型のウミヘビが、以前考えられていた以上に生態系で大きな役割を果たしている可能性があることを示唆した。

「大型のウミヘビはサンゴ礁における重要な中間捕食動物であることがわかった」とGoiranは言う。中間捕食動物は捕食動物と獲物を結ぶ食物連鎖の中間に位置し、他の動物を食べることも他の動物に食べられることもある動物のことで、「たくさんの大型ウミヘビがおり、多くの魚をエサにしている」と彼女は指摘した。

Goiranは、彼女と「すごいおばあちゃんたち」が収集したデータが自然保護活動家たちを手助けしウミヘビ保護の改善に役立つことを願っている。「ヌーメアのウミヘビはうまくいっているけれど、よそではウミヘビが絶滅の危機に瀕(ひん)している。ウミヘビを保護できるよう、その重要性を人びとにわかってもらう必要がある」

世界のウミヘビ60種ほどのうち、国際自然保護連合(IUCN)が絶滅を深刻に危惧しているのはわずかに2種類だけである。しかし、少なくとも23種類についてはデータ不足のため保全状況が不明だ。

Goiranは、こうした知識の溝を埋めようという研究者たちに対して、市民サイエンティストを志望する高齢者に助力を求めることを勧めている。

「みなさんに知っていただきたいことを一つあげるとすれば」として、彼女は「彼女たちを決して過小評価してはいけないということ」と話していた。(抄訳)

(Annie Roth)©2020 The New York Times

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