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5G、DX、グローバル ITが描く明日の景色

Sponsored by 伊藤忠テクノソリューションズ 公開日:
伊藤忠テクノソリューションズ 菊地哲 代表取締役社長

SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)への企業の取り組みが重視される中、持続可能な未来の実現に向け、ITにはどのような可能性があるのか。商社系のシステムインテグレータとして独自の存在感を発揮し、日本と世界のテクノロジーを結ぶ役割を果たしてきた伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)。社長就任から8年目を迎えた菊地哲さんに、同社のビジョンや取り組みを聞いた。

■Y=aX2で進化する世界に求められること

――2022年にCTCは創立50周年を迎えます。この約半世紀のテクノロジーの進化について、どう感じられていますか?

当社は1980年代に、米国のサン・マイクロシステムズ(当時)と日本での販売代理店契約を結び、同社のワークステーションのサポートなどを行うエンジニアを自前で養成してきました。その結果、日本のオフィスにコンピュータが爆発的に普及し、当社も大きく成長しました。90年代はシスコのネットワーク機器も取り扱いを開始して、携帯電話のインターネット接続を契機にビジネスを伸ばし、現在の4Gや次の5Gの技術へとつながっています。

1台のコンピュータで複数のシステムを動かす仮想化技術や、クラウドなどは、当社では早くから手掛けていましたが、今では当たり前の技術になっています。「ムーアの法則」では、コンピュータの性能を示す半導体の集積密度が1.5年ごとに2倍になると言いますが、世の中のITが「Y=aX」という直線ではなく、「Y=aX2」という曲線のように、加速度的に進歩していると感じています。

――テクノロジーの進化がどんどん進む中で、それに人間が追いつけるのだろうかという不安もあります。

私自身もいまだに、スマホの使い方を社員に聞くことがあります(笑)。さまざまなサービスができて世の中が便利になって、普段から何気なく「同意します」とか「はい」とか答えていますけど、その裏でどういう技術が使われているかを正しく理解できている人は少ない。ギャップはどんどん広がっています。

当社のビジネスでいえば、お客様の会社のITを統括する情報システム部に向けた提案をおこなっていたのが、今は現場の担当者の方が自分の仕事に必要なものを直接調達したいので、我々も彼らと話をしなければなりません。そこで私が社員に言っているのは、「分かるように話しなさい」ということ。お客様が「ITは難しくても、CTCの人の話はよく分かる」と思っていただくことが大切です。

■5GもDXも、技術をどう使うかが大切

――今年は日本での5G元年。そのネットワーク構築にCTCは大きく関わっていますが、今後の取り組みは?

一般的に5Gの定義は、高速、低遅延、多接続。これら3つの要素が、100倍や1000倍の世界になるということです。

ただ、5Gの設備投資には大きな費用もかかりますので、それをどうやって回収するのかという問題があります。政府は携帯電話料金を下げるように言っていますから、個人のスマホユーザーから回収するのは難しい。そこで大きな役割を担うのが、5Gを使ってサービス提供などを行う企業。5GではBtoCだけではなく、BtoBの重要性が増していきます。

当社もシステムインテグレータとして、ネットワークを作るビジネスを展開してきましたが、5Gが完成したら、どうやって「使う」かが大きなポイント。5Gを活用した新しいビジネスを創出しなければなりません。お客様や他の企業とも協力しながら、5Gを使った新しい社会の姿を提案していきたいと考えています。

――具体的に5Gは、私たちの暮らしをどのように変える可能性を秘めているでしょうか?

よく言われているのが、自動運転や遠隔医療。街の中で車が安全に走行できたり、過疎地でも一流病院の医師の手術が受けられたり、今までと違う世界になるでしょう。高齢化が進む農業においても、センサーなどを使って家からいろんな作業が可能になります。5Gは、さまざまな社会課題の解決に貢献することができ、それはもちろんビジネスにもなると考えています。

昨年11月に当社がソリューション提供を始めたのが、特定の施設など限られた領域内で利用できるローカル5Gを使った製造業向けのスマートファクトリーです。AIやIoTを活用し、工場内の情報をセンサーで瞬時に集めて、サイバー空間に再現する「デジタルツイン」の技術によって、生産の最適化や故障予知などいろんな検証を設備を止めることなくコンピュータ上ですることができるようになります。当社の高度なネットワーク構築技術を発揮した事業の一例です。

5G, シミュレーション技術で社会課題の特定や可視化につなげる(イメージ図)

――2018~2020年度の中期経営計画ではデジタルトランスフォーメーション(DX)についても触れています。DXは社会にどのようなインパクトを与えるとお考えですか?

DXという言葉が流行語になって、「DXをやらないと会社は成長できない」という人もいるのですが、DXは技術を指すのではありません。ビジネスモデルのトランスフォーメーション(変革)がDXなのであって、デジタル技術はその切り口であるに過ぎません。

切り口には、AIやエッジコンピューティング、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)など、さまざまな技術があります。どれがDXの技術かは決まっておらず、どの技術を使ってビジネスをどう変えていくかを考えなければなりません。少子高齢化や人手不足を例にとっても、いろんな解決方法があるはずです。それらをお客様とともに考え、新たなビジネスを生み出していくパートナーとしての役割が、我々には期待されています。

■インフラ構築の強みを生かしてグローバル展開

――グローバル展開では、1990年から米国のシリコンバレーにR&Dの拠点を置いて活動されています。シリコンバレーの持つ優位性とは何でしょうか?

多くのITがなぜアメリカで生まれるのかというと、それはシリコンバレーという環境があるからです。シリコンバレーでは、ベンチャーが雨後のタケノコのように次々と生まれ、そこにベンチャーキャピタルがCOOやコーポレート系のスタッフを送り込む。成功して上場する場合もあれば、たとえ失敗した場合でも、次から次へ新しいことを始めるという文化があります。だからこそ、優秀な人材が集まるわけです。

――ASEAN地域では積極的にビジネスを拡大しています。

現在拠点を置いているのが、シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア。これらは成長が期待できる地域であり、当社が得意とするインフラ構築においても圧倒的な強みを発揮できると思います。また、数多くの日本企業が進出しており、現地では日本レベルのシステムを求められています。それに対して、我々は地元の企業を買収して自分たちの技術を投入し、顧客である日本企業からの信頼を得ています。

――CTCのグローバルなビジネス展開にはどのような特徴がありますか?

サン・マイクロシステムズやシスコのような、最先端の技術を見つける「目利き力」と、それらのものを「組み合わせる技術力」を生かせるということにあります。たとえば日本の家電だと、最先端のテレビと最先端のブルーレイレコーダーは別のメーカーのものを選んでも、規格が合っているのでちゃんとつながります。ネットワーク機器では、最先端のものをどうやって組み合わせるかが難しく、我々が磨き上げてきた技術力が求められます。お客様からは「世界で最先端の良いものを使いたければ、CTCに聞け」と評価する声もいただいています。

■ITの本業を通じて豊かな社会の実現に貢献

――CTCのミッションは「明日を変えるITの可能性に挑み、夢のある豊かな社会の実現に貢献する」。ご自身にとって「豊かさ」とはどういうものでしょうか?

ミッションの英訳では、豊かさは「Global Good」。200年ぐらい前でも人間の一生はけっこう悲惨で、平均すると30歳ぐらいで亡くなり、風邪を引いただけでも死んでしまったそうです。それが今は、人生100年という時代。実生活を考えるとやはり進歩しているわけで、「明日はいい日になる」という希望を私は持っています。

地球温暖化など、時間をかけて解決しなければならない問題もありますが、現実的に5年後や10年後を考えると、いろんな社会課題の解決方法が考えられます。特にITの分野の可能性は大きいのではないでしょうか。

――現在手掛けている事業で、社会課題の解決に直接つながるものを教えてください。

わかりやすい例は、再生可能エネルギーの安定利用に直結するテクノロジー。風力発電や太陽光発電の30分後の発電量を予測するサービスを提供しています。太陽光も風力も天候によって発電量が左右されるので、それを予測して既存の電力とマッチングさせる技術が有効となります。

IT業界の抱える課題としては、電力消費量の問題があります。1ラックのサーバーで消費する電力は10家庭分。当社ではこれを、省エネの仕様に替えていく方向で進めています。企業が個々にシステムを持っていたのを集約して、クラウドに接続してもらうことによって、最大9割の電力消費量を削減することもできます。

――SDGsという共通目標が作られたことで、経営に与えた影響はありますか?

CTCが手掛けるITのビジネスは、本業を通じてSDGsにかなり貢献できると思っています。SDGsのためにやったと直接意識しないような仕事でも、真面目にやっていれば何らかの形で役に立つはずです。当社のミッションともリンクしていますね。ただ、17個の目標や169個のターゲットがあって、自分の仕事がどう結びついているのかをイメージするのが難しい。それを社員に啓蒙していくのも私の仕事であり、さまざまな取り組みを通じて一人ひとりの意識は変わってきていると思います。

――業界では人材不足が加速する中で、「明日を変える人材の創出」をマテリアリティ(重要課題)の一つに掲げておられます。次世代の人材育成にかかわる活動についてお聞かせください。

子どもたちとITの出会いの場となる「未来実現IT教室」を2015年度から運営しており、社員が講師を務めています。小学校の出前授業では、子どもたちがエンジニアとなって、トラックの運送ルートを最適化する中でプログラミング的思考を学びました。小さい時にそういうことを経験した記憶は子どもにとって大切であり、我々はITの分野でできる限り貢献していきたいと考えています。

CTC社員が講師を務める「未来実現IT教室」

昨年10月には、一般財団法人の「CTC未来財団」を設立しました。宮城県岩沼市でプログラミングワークショップを開催したほか、修学支援などの事業を行っています。

――会社名の略称である「CTC」は「Challenging Tomorrow's Changes」の意味。そして、中期経営計画には「Opening New Horizons -新しい景色を見るために-」とサブタイトルを付けています。どのような明日の景色を見てみたいとお考えですか?

社員には登山の話を例に挙げて説明しています。

山に登る時には、まずこの山に登ろうと決めたら、ルートを決めて、準備をして。実際に山に登って、途中で迷ったら、また計画を考え直して。ということをやりながら、頂上にたどり着くと、ぱっと新しい景色が広がる。その景色を見るために山に登るのですが、けっしてそこで終わりではありません。さらに高い山があって、次はあそこに登ろうかと決めて、同じように山登りを繰り返していくのです。

会社の経営も人生も、山を登り切って新しい景色が開けることによって、次に行くものが見えてくる。その繰り返しが大事です。何かをやり残して、まだ登り切っていないという状況では、次へと進むことができません。何とか登り切りたいという気持ちがあるからこそ、次の景色が見えるのだと思います。