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秋田の海に風車が並ぶ日 これからの洋上風力発電ビジネスに向けて

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茨城の波崎ウインドファームの陸上風車

地元関係者との粘り強いコミュニケーション

初夏の秋田の潮風が、心地よく頬をなでる。船の上で、風力発電専門企業コスモエコパワーの藁谷(わらがい)茜さんは、遠く離れた陸を眺めていた。

「数年後、秋田の海に洋上風力発電の風車が並ぶ——」

年間を通じて安定した偏西風が吹き付ける秋田県西岸は、陸上には既に多くの風車が建てられている。その秋田でいま検討が進んでいるのが、洋上風力発電のプロジェクトだ。風車の高さはブレード(羽)を含めると100メートルを超える。実現すれば、その壮観な姿は、日本の新しいエネルギーを象徴する景色になるだろう。

風力発電設備を建設するうえで重要なファクターとなるのが、地元とのコミュニケーション。環境に影響を与えると想定される問題を解決し、地域に歓迎される設備を目指すことが必要とされる。コスモエコパワーの事業開発部に所属する藁谷さんは、秋田の洋上風力発電プロジェクトで漁業者をはじめとする地元関係者や自治体との交渉や調整を担当している。

コスモエコパワー株式会社 事業開発部の藁谷茜さん

「地元の方々の理解が不可欠な事業なので、丁寧に計画を説明して、少しずつ理解を得られるように真摯に対応しています。不安を持つ方もいらっしゃいますので、頻繁に現地を訪れて、粘り強いコミュニケーションを心掛けています」

多い時には月の半分ほど、本社のある東京を離れて秋田に滞在しているという藁谷さん。風力発電事業では、騒音や景観などの問題がクローズアップされがちだ。コスモエコパワーでは係争になるようなトラブルは20年間ほとんどなかったのが、先輩社員たちの誇りだという。だが、洋上風力発電では、今までにないノウハウも積み重ねていかなければならない。

「私たちは漁業に関して素人なので、地元の皆さんの目線に立って計画を進められるように勉強しています。東京の人間は入り込みにくい印象があるかもしれませんが、こちらが話をすれば耳を傾ける姿勢を持っていただける。それが大変ありがたいです」と話す。

この秋田の海での洋上風力発電事業の実現へ向けて、地元調整が進んでいる

何度も通ううちに、だんだんと秋田に溶け込んでいく。「実際に漁を見たい」と頼み込み、漁船にも乗せてもらえた。

「風車は建ったら20年以上、ずっとその地域にあるものだと思います。だから地域の方々にしっかり納得していただいたうえで建設し、さらに『風車があって良かった』と喜んでいただける事業にしたいです」と藁谷さんは話す。

秋田で進行中の洋上風力発電プロジェクトはひとつではない。
コスモエコパワーでは、藁谷さんが担当する案件のほかに、秋田・能代の両港湾区域での洋上風力発電プロジェクトにも関わっている。2022年の運転開始を目指して計画されている秋田港・能代港プロジェクトの発電規模は約14万kW。実際の発電量を30%として計算しても年間の発電量は約3億7000万kWhとなり、一般家庭の電気使用量を約4500kWhとすれば約8万2000世帯分もの電力をまかなえる巨大事業だ。

また秋田では由利本荘市の沖合でも、コスモエコパワーが参画する洋上風力発電プロジェクトが進行している。

秋田新屋にある陸上風車もコスモエコパワーが参画している

この秋田の複数のプロジェクトが成功すれば、各地で進められている洋上風力発電の計画にとって弾みになる。全国からの注目が秋田に集まっている。

「洋上新法」を契機に計画が本格化

「洋上風力発電のメリットは、大規模な開発が可能であるということ。風車は効率化を求めて大型化が進み、10メガワットを超えるクラスのものも開発されています。その大きさの風車は陸上だと輸送面で問題があり、洋上での建設が向いています。さらに、海には多くの基数を建てることができるという点も大きいですね」

そう話すのは、コスモエコパワーの設計・建設部洋上グループ長、岩田充生さん。秋田をはじめ青森や北海道などで同社が手掛けている洋上風力発電プロジェクトの管理を担当している。具体的には、風況調査、海底のボーリング調査、基本・詳細設計などに関わる事項の検討を行い、今後は工事に関する調達や管理にも携わっていくことになる。

コスモエコパワー株式会社 設計・建設部洋上グループ長、岩田充生さん

洋上風力発電の建設にかかるコストは陸上に比べてkWhあたり2倍程度と言われている。一方、発電量は、風の強さと安定性・風を受けるブレード(羽)の面積に応じて増えるため、風車の大型化が見込める洋上では、陸上よりも高い発電効率が期待できる。

より大規模な発電量を求めて、ここ数年で欧州を中心に風力発電の洋上進出が加速している。世界では既に5000基以上の洋上風車が運転を開始しており、発電規模は2018年で23ギガワット。これが5年後には2.7倍、10年後には9倍に増えると予想されている。

国別では、イギリス、ドイツ、デンマーク、ベルギー、オランダなどの欧州諸国が約8割、中国が約2割を占めている。それらの国々に比べると日本の洋上風力発電は微々たる量ではあるが、そもそも現在稼働している洋上風車は国の実証事業だ。商業ベースでは実用化されていなかった。

では、なぜ日本では洋上風力発電の事業化が遅れていたのか? 要因の一つは、一般海域を長期にわたって利用するための明確なルールがなかったことだった。

その状況を変えたのが、2019年4月に施行された洋上新法「再エネ海域利用法」だ。海域の大半を占める「一般海域」の利用期間が、従来は自治体の条例で数年だったのが、最大30年間と定められた。これにより、事業者は海域を30年間占有でき、安心して計画を進めることができるようになった。

洋上新法では、風力発電に利用する海域は入札制となっており、価格だけではなく実施能力や地域調整力も評価される。その部分で大きなアドバンテージになるのが、陸上風力発電の経験値だ。

「私たちの会社で言うと、20年以上にわたり陸上で培ってきた地元の方との合意形成の進め方や、風車のメンテナンス、プロジェクトのノウハウが洋上にも生かされると思います。早くから洋上風力発電に着目し、取り組みを進めてきた先行者メリットも大きいです。コスモエネルギーグループとしても、脱化石燃料に向かう社会の中で、再生可能エネルギーを将来に向けた新たな強い事業の柱と考えています」と岩田さんは話す。

デンマークにある洋上風力発電「Middelgrunden Offshore Wind Energy Farm」

風力先進国、欧州に学ぶ

ようやく船出の準備が整った日本の洋上風力発電ビジネスだが、欧州との差はまだまだ大きい。先進国のオランダでは、政府が意欲的な長期導入目標を設け、環境アセスメントなどのサポートを行っているほか、プロジェクトごとの規模が大きく、また個々のプロジェクトを類似した条件の事業にすることでノウハウを後続するプロジェクトに継承できるなどの利点が、洋上風力の普及を促している。

「洋上のプロジェクトは日本ではまだあまり実績がなく、ヨーロッパの知識に頼らざるをえないのは確かです。ゆくゆくは国内市場が、海外の力を借りなくて済むほどに成熟しなければなりません。そのために個人的にも知識を深めていきたい」と岩田さんは話す。

コスモエコパワーの強みを生かすアイデアの一例が、ドローンの活用だ。同社では、風車のメンテナンスを基本的に自社で手掛けていることを強みとしてきた。洋上風車の定期的な点検を、船を出さずに低コストで実施する手段としてドローンでチェックするための実証が行われている。

さらに、海に浮かぶ浮体式風車に関する調査研究も進められている。水深10~50メートルの海底に建てる着床式水車のポテンシャルは、日本沿岸で91ギガワットとされている。水深50~200メートルの深い海域でも運用できる浮体式風車が実用化されれば、世界で6番目に広い排他的経済水域(EEZ)を持つ日本の可能性をもっと広げることができる。

日本の海に風車が並ぶ景色を、まだイメージできない人も多いだろう。だが、風車が地域に溶け込んで、それが当たり前の風景になった時、一人ひとりの環境とエネルギーに対する意識も変わってくるかもしれない。

コスモエコパワーの藁谷さんは未来をこう思い描く。
「風力発電の先進国では、風力で発電した電気を使うこと自体に『地球のためにいいこと』という誇りを感じるという人もいるそうです。そんな方が一人でも増えるように、私も頑張っていきたいなと思います」