性犯罪者たちは、若者の生活内部に簡単にアクセスできる方法を見つけた。彼らは複数のプレーヤーが参加するビデオゲームとチャットアプリを通じてオンラインで知り合い、彼らの「犠牲者」となる若者の自宅内にまで入り込み、バーチャル・コネクション(仮想接続)をするようになった。
この種の交流の多くは「セックストーション(sextortion)」という、子どもたちに露骨な画像を無理やり送らせる犯罪につながる。 子どもたちを性犯罪者にさらすゲームやその他のオンライン活動。家族はどうしたら最良の対応ができるのか? 2人の専門家に聞いた。
シャロン・クーパーは、米ノースカロライナ大学の法医学小児科医で、性的搾取に関する専門家。マイケル・ソルターは、オーストラリアのニューサウスウェールズ大学で犯罪学を専門に研究する准教授だ。2人とも、子どもの性的虐待に関する研究では国際的に認められている。
以下、2人の助言を要約した。
<子どもが他人とオンラインで交流する際のルールを決める>
クーパー オンラインの安全性について親子で会話する際、「ルールを作りましょう」という言葉を明確にして話し合いを始めるべきだ。なぜなら、親は子どもを愛しているし、子どもが安全なことを願っている。そして子どもにとって最良であって欲しいからだ。
私は、親には子どもたちのオンライン・アクセスを管理し、常に管理を怠らないようにする権限があると力説している。調査でも、オンラインでの行動に介入する親たちは、最も立ち直りが早い子どもを持っていることが示された。介入の対象は、オンラインの時間(多すぎないように)、内容(年齢にふさわしいか、社会性のあるものか)、さらに親の権限(アクセスはプレゼントであって、子の権利ではない)に関してだ。
<新しいゲームやアプリは子どもと一緒に>
ソルター ゲームやアプリの新しいサービスを子どもとある程度共有する体験は、リスクを特定したり信頼を築いたりするのに役立つ。それに、けんか腰にならずに話し合う機会も提供してくれる。Common Sense Media(コモンセンス・メディア、訳注=子ども向けの安全な技術とメディアを促進するために家族に教育と支援を提供する米国のNPO)やオーストラリアのeSafety commissioner(イーセーフティー・コミッショナー、訳注=オンラインの安全性を推進するオーストラリア通信メディア庁傘下の独立事務所)のウェブサイトといった信頼できる配信元の情報を利用して、もっと違ったプラットフォームを探し出すこともできる。こうした信頼できる配信元は、新しいアプリやその安全性に役立つ要点を提供している。
<オンラインの安全性について話し、耳を傾ける>
ソルター オンラインにおける私たちの権利と責任について話すことから始めることもできる。オンラインでは人を大切に扱う義務があると同時に、他の人からも私たちを大切に扱ってもらう権利がある。あなたはそう強調することだってできるはずだ。
子どもたちが危険を感じるような状況とはどんなものか。また安全に使えるような戦略はどうか。子どもと一緒に妙案を考え出すことだってできる。合理的なルール作りをしよう。だが同時に、常にオープンな会話をし続けよう。そうすれば子どもが何か気になることが起きたら、気楽にあなたのところにやってくる。
実際、子どもが数カ月も深刻な性被害にあったまま押し黙っていたケースを私たちも何度も経験した。すでにオンラインでのトラブルに巻き込まれたうえ、ルールを破ったことが問題視されるのを恐れていたのだった。グルーマー(訳注=10代のような若い子と性交渉をする年長者を指す)と虐待者は「黙っていること」を頼りにしている。
<どんな心配事でも信頼できる大人と一緒に声を上げよう>
ソルター オンラインでの「友人」は信用できない、という警告を出そう。彼ら(性犯罪者たち)は自分との関係を内緒にするよう子どもに要求する。子どもの個人的な情報をたくさん要求する。好意と贈り物を約束する。彼らはいろんなプラットフォームやサービスを通じて子どもと接触する。その子の容姿について親しげな話をし始める。そうして直接会おうと要求してくる。
子どもが最初にすべきことは、信頼できる大人たちに不審に思うことを声に出して話すことだ。子どもたちは、ネットにヌード画像を送ってはいけないことを知るべきだ。そもそも自分が望んでいないことをする必要はどこにもない、ということを思い出すべきだ。子どもたちが一番間違えるのは、不愉快に感じた時に、自分自身の声に耳を傾けないことだ。
<被害の前兆に常に気をつける>
クーパー 私たちは、安全を守る責任が全面的に子ども自身にあると感じさせないよう気をつけないといけない。というのも、もし子どもたちがしくじったら、その子たちは相当な罪悪感と自己嫌悪に陥ってしまうからだ。そうは言っても、最も重要な危険信号は、オンラインにあまりに長い間夢中になっていること、それに親が止めるよう命じた時に子どもが怒り出す反応だ。そのほかに、子どもがどんな人物のものか分からないような「声」とやりとりしたり、親をだますといったことを含めた不適切な行為を要求する誰かとやり取りしたりすることだ。
<子どもを不愉快にするユーザーをブロックすることを教える>
ソルター 子どもと一緒にプラットフォームやアプリを検索する際、不審なユーザーがいることをどう報告し、どうそれを遮断したらいいか、その方策を探し出そう。子どもが望んでいない、あるいは不愉快な接触を図るユーザーがいたら、探し出した方策を利用するよう、子どもに勧める。もしそのユーザーがそれでもしつこく接触しようとするなら、警察に連絡する。
<もし性犯罪に巻き込まれても、子どもを非難するな>
ソルター あなたが最初にしなければならないことは、一方的な判断をしないこと、それから子どもに「心配はいらない」と声をかけて安心させることだ。グルーマーは子どもたちが恥ずかしくて誰にも打ち明けられないと感じる点に付け込む。だから子どもを支えてあげることが重要だ。
親が一番犯しやすいミスは、当惑することだ。本来親子の間で子どもの性に対する関心の芽生えを話し合うのは悪いことではないはずなのに、その余地を作れない状況になることだ。子どもが抱く性的関心について話すのは、実に難しい。
<子どものオンライン活動の保護者としての責任を持つ>
クーパー オンライン業界は、そもそも安全安心を推進するビジネスをしているわけではない。「この機器であなたのお子さまの安全をどう守るか」というパンフレットが付いた携帯電話の新商品など、私はいまだに見たことがない。私たちは子どもたちを励まして、信頼できる大人に伝える方法を示さないといけない。(抄訳)
(Michael H. Keller)©2019 The New York Times
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