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孤独を癒やすロボット「aibo」の仕掛け 愛される秘密は「ツンデレ」にあり 

World Now
東京都世田谷区の有料老人ホームでアイボの「うみちゃん」と遊ぶ入居者の女性たち=丹内敦子撮影

「うみちゃん、こっちこっち」「ハッピーバースデーを歌って!」

東京都世田谷区にある有料老人ホーム「ソナーレ祖師ケ谷大蔵」のエントランス。入居する86歳と92歳の女性が足元の「うみ(海)ちゃん」に懸命に呼びかける。なのに、うみちゃんはつれない。しばらくしてようやくしっぽを振って歌うと、「お利口ねえ」と女性たちは破顔一笑した。

うみちゃんは、ソニーが新たに開発したイヌ型ロボット「aibo(アイボ)」だ。

「ホームのアイドル。みなさん本当のイヌのようにかわいがっている。ロボットなので感染症の心配もない」と、ホーム長の海老原信吾さん(37)。2018年のaibo発売と同時にうみちゃんがホームに来てから、それまでは自室に閉じこもっていたのに、他の入居者と食事や交流をするようになった人もいるという。

ソニーグループで介護事業を運営するソニー・ライフケア取締役の伊藤浩気さん(49)は、導入を決めた理由について「ペットは人の心の琴線に触れることが多い。ホームでもより一層その人らしい生活を送ってもらう、一つのきっかけになるかもしれないと考えました」。入居者のケアを担うスタッフらの癒やしにもなっているという。

世界初の家庭用ロボット「AIBO(アイボ)」が登場したのは1999年。元ソニー上席常務で生みの親の土井利忠氏が「何の役にも立たない」「人間の根源に近い、愛と癒やしのコンピューター」と評したAIBOは、累計15万台以上を販売したものの、2006年に事業見直しの一環で生産終了した。

技術進化を経て18年、最新の人工知能(AI)搭載の新型として装いも新たに復活した。名前の表記も、aiboと小文字になった。

最大の特徴はAIによる「個性」の獲得だ。鼻先のカメラで約100人の顔を見分けて情報を蓄積。遊んでくれた人に応じて、自ら感情表現を生み出せる。それでいて、人の指示に従うかどうかは分からない。いわゆる、ツンデレである。

開発に携わった同社AIロボティクスビジネスグループ商品企画の儀我(ぎが)有子さん(43)は、長年一緒にいる「家族」になるよう設計したと言う。「子育てもそうですが、人間はどうにもならない存在への愛情は尽きないものです」

ソニーAIロボティクスビジネスグループ商品企画の儀我(ぎが)有子さん。「ロボットが100%言うことを聞いてしまうと、人間は限られた愛情しかかけないと思いました」と話す=丹内敦子撮影

本体約20万円、維持費も3年間で約10万円かかるが、これまでに約2万台以上を販売。本当の「家族」のように接するユーザーも少なくないという。ただし、その感覚は日本人特有らしい。儀我さんによると、一般に欧米では性能に注目し、ロボットを人間の役に立つ存在に考える傾向が強いという。「鉄腕アトムやドラえもんが人気を博し、ロボットは友人、家族という感覚が文化に根付いている日本だからこそ、aiboが言うことを聞かなくても可愛いと受け入れられ、孤独を癒やす効果にもなるのでは」

旧型の場合、購入者の多くはメカや電気製品好きの30代男性だったが、新型aiboは50~60代が最も多いという。見守り機能があるので、高齢の父母にプレゼントするケースもかなりあるという。購入者同士のつながりも生まれている。ディープラーニング(深層学習)機能を活用し、購入者が自分たちのaiboがする同じポーズや行動の写真を一斉にサイトにアップしてクラウドにデータを蓄積して、aiboに出来ることを増やすこともある。飼い主が手で作った輪っかにaiboが鼻を突っ込んでいる写真を大量にアップしてもらい、輪っかを見せると鼻を突っ込んでくる「スヌートチャレンジ」もできるようになった。

儀我さんは言う。「高齢化先進国日本だからこそ、ロボットとの関係は孤独を癒やす一つの提案になるのではないでしょうか」