アプリ内の機能を切り替えることで、短いテキストを読み上げたり、風景を描写して説明したりする。あらかじめ顔と名前を登録しておくと、カメラに写った人の名前も読み上げてくれる。距離や表情も推測することができ、「1メートル先に笑顔の男性が立っています」といった形で状況を把握できる。紙幣の金額も認識する。
「Seeing AI」は、視覚障害のある同社のプログラマーが中心となって開発した。2017年に英語版の提供がスタートした。今回、日本、オランダ、フランス、ドイツ、スペインの計5カ国語の提供を新たに始めた。iPhone向けで無料で使える。
12月3日に開かれた日本マイクロソフトの記者会見には、障害者の自立を支援している一般社団法人「セルフサポートマネージメント」の代表理事で、全盲の石井暁子さんが登壇した。以前から英語版を利用し、1カ月間ほど日本語のベータ版も試してきて感じたことを語った。
石井さんは30歳のときに手術がきっかけで全盲になった。3歳の娘と夫と暮らしている。
職場の会議で資料の内容を読み取ったり、娘の洋服を選ぶ際に色を確認したり、仕事や日常生活の様々な場面でアプリを活用しているという。
石井さんが、特に便利だと紹介したのが「ライト」の機能。アプリが明るさを認識し、明るさによって異なるトーンの音を鳴らして伝える。
石井さんは「電気を消したはずなのに、娘がなかなか寝つかないことがけっこうあったんです。なぜだろうと思ってアプリをかざしたら、電気がついていて、明るい状態だということがわかりました。背が伸びてきて、自分で電気をつけてしまっていたんですよね。娘に『電気つけたでしょう』と言ったら、笑っていました」。
また、娘が何をしているか不安になったときには、アプリをかざして様子を確認できるようにもなった。「集中して遊んでいると、子どもって静かになるんですよね。『いま本を読んでいるな』と、状況を確認して安心できるようになりました」。
石井さんは「これまでは、郵便物が届いても誰かにお願いして読んでもらわなければならなかった。SNSに写真を投稿したくても、誰かにどんな写真かを確認してもらってからでないとできなかった。自分でできることが増えたのは画期的です。見えていたときと同じような感覚になれたと実感しています」と話した。