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英国の名門イートン校、オンライン教育で日本上陸 トップが語ったその狙い

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来日したEtonX CEOのキャスリン・ウィテカー氏(左)。GSEシニア・マネージャーのマイケル・サンダークリフ氏(中央)、GSE取締役の友永喜久氏(右)とともに記者会見に臨んだ

11月27日に開かれた記者会見には、ウィテカー氏とともに、EtonXが日本進出にあたって提携した「グローバルスカイ・エデュケーション」(GSE)の幹部も登壇した。

EtonXはイートン校が2015年に創設したベンチャー。現在、世界30か国で展開している。アジアでリーダー教育に対するニーズが高まっていることから、日本進出を決めたとウィテカー氏は説明した。「日本の現在の教育事情」に詳しい専門家からの助言を得るパートナーとしてGSEと提携したという。

EtonXは「リサーチ・スキル」「創造的な問題解決」「インパクトを与える」など11種類のスキルを学ぶコースを用意し、「コミュニケーションコース」「リーダーシップコース」「就職準備」「進学準備」の4種類のスキルセットの形で高校や大学などの教育機関などに提供する。また企業の新人研修や若手リーダー研修といった次世代リーダー育成への活用も視野に展開していくという。

学習者は、このプログラムでの学びを通して、批判的思考(クリティカル・シンキング)や精神的回復力(レジリエンス)といった、リーダーに必要な能力を身につけることができるという。ウィテカー氏はこの能力を「Future Skills」と表現。起業家として問題を突破するためだけでなく、人生を自分で切り開いていくためにも役立つ力だという。

EtonXのウェブサイト

日本での展開にあたっては、学習者の英語力が十分でない可能性を考慮したサポート体制を整えていくという。「英語での講義に不慣れな生徒でも積極的に発言できるよう、一人ひとりのモチベーション向上にも努めたい」と話した。

■オンラインを選んだ理由

ウィテカー氏によると、イギリスの学校がマレーシアや中東などに分校を開く形で海外展開する例が増えているという。なぜイートンは分校でなく、オンラインでの展開を選んだのか。ウィテカー氏は「イートン校は技術の進歩を活用することで、より広い世界に学習者を増やすことができるのではと考えた」と説明した。本家イートン校は男子校だが、EtonXは性別問わず受講できることもメリットの一つだという。

本格的に展開する前の段階で、中国で「モダンリーダーシッププログラム」を提供して成功しているが、世界中の人に利用してもらうにはさらに技術の開発を進めなくてはいけないこともわかったという。そこで、中国からは一歩引いて新サービスの開発に注力。十分に準備が整ったところで、再度ローンチとなったといい、「中国での経験によって、世界展開の青写真が生まれた」と語った。

■求められるリーダー像

600年近い歴史を持つイートン校。GSEシニア・マネジャーのマイケル・サンダークリフ氏が「イートン校は様々な分野のリーダーを輩出してきているが、リーダーシップの理想は過去と現在とではどう変わっているか?」と質問。ウィテカー氏は「ベンチャー企業を立ち上げることが容易になったことで、若くしてリーダーになる人が増えた。そのため、若いうちからチャレンジに立ち向かうスキルを有していることが求められるようになっている」と答えた。さらに、「リーダーになるためには他にも幅広いスキルが必要。クリエイティブな問題解決力、売り込み方法を考える力、商品実用化のために人を説得する力、影響力も必要となるシーンがある」と言葉を継ぐと、GSE取締役の友永喜久氏は「日本の文科省も、第三期教育振興基本計画を実行するなどの対策を講じている」と日本の取り組みについても触れた。

日本ではどのような人にEtonXのプログラムを受けてほしいかと問われると、15年間にわたって日本に暮らしているというサンダークリフ氏がマイクを握り、「日本人は識字率も数字に関する能力も世界トップレベル。EtonXでの学びを通して、その能力を十分に生かす力をつける人が一人でも増えたらいい」と話した。友永氏も「ロボット工学やアートの分野においても、日本人には優れている点が多い。そのことをさらに多くの海外の人に知ってもらうためにも、発信力を身につけてほしい」と語った。

(取材・文・写真/松本玲子)