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フライトが「飛び恥」と言われる時代 空の旅について私たちができること

ニューヨークタイムズ 世界の話題
FILE -- A plane at a gate at LaGuardia Airport in New York, on March 12, 2019. A small group of frequent fliers, 12 percent of Americans who make more than six round trips by air a year, are responsible for two-thirds of all air travel and, by extension, two-thirds of aviation emissions, according to a new analysis by the International Council on Clean Transportation. (Chang W. Lee/The New York Times)
ニューヨーク・ラガーディア空港ゲートに待機する旅客機=2019年3月12日、Chang W. Lee/©2019 The New York Times

スウェーデンの人たちが「フリュグスカム」(flygskam=飛ぶのは恥、の意)とか英語で「フライング・シェイム」(flying shame=同)と呼んでいる環境運動は、地球温暖化を引き起こす二酸化炭素(CO2)の排出量削減に向け、飛行機を利用しないよう呼びかけている。

しかし、アメリカ人にとって、ホリデーシーズンに祖母に会いに行くのに旅客機に乗るのは「恥」だと、本当に思わなければいけないのか?

ひと言でいえば、おそらくノーだ。もし本当に豪華な空の旅をするというなら、話は別だが――

NPO国際クリーン交通委員会(ICCT)の新たな分析結果によると、アメリカ人で飛行機をよく利用するのは少数派で、年に6往復以上利用しているのは全体の12%。この人たちが空の旅全体の3分の2を占めている。詰まるところ、飛行機から排出されるCO2の3分の2を出しているということになる。

平均すると、これらの旅客1人当たり年3トン以上のCO2を排出している計算だ。特に国際標準からみれば、相当な量だ。年に9往復以上も利用すると、1人当たりの排出量は最高レベルに達する。

もしすべてのアメリカ人が年に6往復以上も飛行機を利用すると、ジェット燃料の使用量は6倍に上り、ICCTの推定によると、飛行機はたやすく乗用車を超えて最大のCO2排出源になるだろう。

「世界中を頻繁に行き交う飛行機に、気候は耐えられない」。ICCT飛行プログラムのリーダー、ダン・ラザフォードは言った。「私たちは、ある段階でどのフライトが必要で、どれが『ぜいたく』なのかを全体的に算出する必要がある」

平均的なアメリカ人のCO2排出量のうち、旅客機が占める割合は大きくない。実際、アメリカ人の約半数はまったく利用していない。残りの3分の1が年に最高5回利用しており、それが排出量全体の約3分の1を占めていた。

つまりほとんどのアメリカ人は、車の排ガスや自宅の冷暖房からの排ガスにもっと関心を寄せるべきだろう。

しかし、米国における飛行機のCO2排出量は、世界全体の4分の1を占め、他国より断トツに多い。今回のICCTのデータは、米国内での飛行機によるCO2排出の責任の所在を鮮明にしている。

ただし、ひと言付け加えておく。米国ではそれほど多くの人が空の旅をしないため、1人当たりの排出量は少なく、世界ランクでは11位だ。シンガポール、フィンランド、アイスランドといった高所得国より後にランクされている。また発展途上国の中には中国やインドといった急速に発展している国々があり、それらの国では、国民の収入が増え、空の旅がより身近な中間層が広がっている。

一方で、燃料効果がもっと高い旅客機ならCO2排出量を低く抑えられるのは当然のことで、ボーイングやエアバスといった航空機メーカーはこれまでも燃費の向上を競ってきた。

問題は、燃料の効率化を改善しても、それで相殺される以上のスピードで空の旅が急速に伸びていることだ。一方で、バイオ燃料といったCO2排出量の少ない燃料の利用は遅れている。

このため、空の旅によるCO2排出量は、これまでの予測よりも急速に増え、世界の民間航空機が2018年に排出したCO2は9億1800万トン。これはドイツとオランダを合わせた年間排出量とほぼ同じほどだった。

FILE -- A passenger plane flies over New York, March 12, 2017. A small group of frequent fliers, 12 percent of Americans who make more than six round trips by air a year, are responsible for two-thirds of all air travel and, by extension, two-thirds of aviation emissions, according to a new analysis by the International Council on Clean Transportation. (George Etheredge/The New York Times)
ニューヨーク上空を飛行する旅客機=2017年3月12日、George Etheredge/©2019 The New York Times

では、空の旅を極力抑えるにはどうしたらいいか?

A Free Rideという英国のグループが提案したアイデアは、旅客機の利用者に段階的に課税していくシステムだ。すなわち誰でも毎年1枚、帰り便のチケットを無税とする。2度目に利用するチケットから低い税率をかけ、旅客機を利用する度に課税率を高くしていく、としている。

「普通の人たちがようやく手に入れた休暇を奪おうなんて、私たちは考えてもいない」とA Free Rideの創設者のレオ・マリー。「年に一度、家族で過ごす休暇はここでは問題にしていない。それでも私たちは気候変動に取り組むことはできるし、休暇シーズンには誰でも空の旅ができる。私たちが問題にしているのは、ごく少数の金持ちのエリート旅客だ」と言うのだった。

19年10月、英国のある委員会が航空会社に対し、マイレージ(訳注=会員の旅客に搭乗距離に比例したポイントを付与するサービス)を禁止し、「過剰な空の旅を奨励しないよう」勧告する報告書を出した。報告書は利用が頻繁な旅客は「裕福で、旅費など気にしないような人たちに偏っている、という傾向が強く出ている」とデータを引用して述べ、そうした人たちは「余分な飛行をしないよう、徐々に効果的な課税を負うべきだ」と勧告した。

航空業界はそんな手段には反対だ。「米国の航空会社は、CO2排出量をさらに削減するよう取り組んでいる」と業界団体エアラインズ・フォー・アメリカ(Airlines for America)スポークスマンのカーター・ヤンは反論した。「新型の、もっと燃費効率が良い機体や持続可能な代替航空燃料に投資を続けねばならないが、あの提案はそうした我々の努力を傷つけるだけで、何の助けにもなっていない。投資に欠かせない資金そのものを政府の財源に吸い上げようとするだけだ」とも語った。

もちろん、多くの人たちは仕事上、頻繁に飛行機を利用せざるを得ない。エアラインズ・フォー・アメリカによると、米国で飛行機を利用する客のざっと30%はビジネス旅行者だ。しかし、電子メールやSlack(スラック、訳注=ビジネスで使うチャットツール)やテレビ会議の時代に、すべてのビジネス旅行がはたして本当に必要なのか?

その点を疑問視する会社も出始めている。欧州では、休暇中に旅行する際、電車やその他のよりクリーンな輸送手段を使う従業員に、休暇を余分に与える会社が出始めている。

英国の委員会報告書は、航空会社に各フライトのCO2排出データを提示すべきだ、とも勧告している。多くのレストランがメニューごとにカロリー量を提示しているのと同じようにすれば、旅客の選択肢はもっと広がる、というのだ。

ICCTの調査によると、燃費効率の最も低い旅客機を使う航空会社は、最も効率の良い機体を使う他社に比べて26%から60%も多くの燃料を消費している。

さしあたり、頻繁に飛行機を利用する人であっても、最新型機が飛ぶルートを選んで、CO2排出量を最小限に抑えようとすることもできる。エアバス社が10年に発表した燃費効率のよいA320neoが飛ぶルートを選ぶこともできるはずだ。また、ファーストクラスの座席はエコノミークラスより、もっと広い空間を占めるため何倍ものCO2を排出している。頻繁な利用客はその点にも配慮すべきだろう。旅行する人は飛行機によるCO2排出を埋め合わせるような選択肢を取ることもできる。

そして無論のこと、頻繁に空の旅をする人は、今年9回目の飛行機の利用が本当に必要かどうか、あらためて考えてみることもできるはずだ。(抄訳)

(Hiroko Tabuchi)©2019 The New York Times

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