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【対談】「英語を話せない」ではない。今の英語力でできることからやる

Sponsored by EFエデュケーション・ファースト・ジャパン
EFエデュケーション・ファースト・ジャパン サンチョリ・リーさん(右)、GLOBE+編集長 堀内隆

堀内隆(以下、堀内) ご自身はお生まれがスウェーデンですが、ご両親が韓国系でいらっしゃるんですね。

サンチョリ・リー(以下、サンゲ) 両親ともに韓国人なのですが、うちの母は上海で生まれ、日本で育っています。なので、家では基本的に日本語で会話をしていました。僕は30代前半までスウェーデンで暮らしましたが、父とは韓国語で、母とは日本語で話していました。父も子どもの頃に日本語を学んだこともあり、家族の共通語は日本語でしたね。また幼少期から祖母に会いに年2、3回は日本に遊びに来ていたので、心の中はスウェーデン人に一番近く、次いで日本人と感じていました。

堀内 住んでいた期間としては、スウェーデンが圧倒的に長いわけですよね。それでも、気持ちの部分では日本にも近い、という感覚は不思議な感じがします。

サンゲ そうですね。それでも、自分が子どもの頃に見ていた日本と、社会人として改めて見た日本とでは随分異なっていました。

子どものころは「日本の子どもって凄いなあ」と思っていました。小学1年生の子どもを日本とスウェーデンで比べると、圧倒的に日本の子どものほうが読み書きも算数もできるんですよね。でも大人になってくると、不思議とあまり変わらないんです。スウェーデンでは子どもの頃は思う存分遊び、大人になったらしっかりと働く。残業はなく、共働きで子どもを育て、それにより社会が成長していくという、言うなれば、「いま」という時代に合わせフレキシブルに働き、生きていける国です。

こうした経験から、教育の最終的な目標は何か、と改めて考えたときに、「大人になってからも自由に生きて行ける力をつけるのが教育」だと思うようになりました。算数で必ずしも1位を取れなくてもいい。やりたいことができ、大人になった後でも自分で選べるチョイス(選択肢)がたくさんあれば人は幸せになれる、と。

堀内 日本で教育の議論をするとどうしても「受験」という文脈が強く出てしまうので、親もそこを意識してしまう。他言語を学ぶことに対しても、「何のために学ぶのか」は説明されないまま。自分自身を振り返っても、他言語を学んだ先に何があるのか、もう少し明確にわかっていたら学ぶ姿勢も少し違っていたかな、という気はします。

サンゲ 教育そのものの在り方や、教育についての考え方を見直す必要があるかもしれないですね。教育というのは、子ども時代だけに限らず社会人になっても続くわけですから。EFは「教育を通じて世界の扉を開く」を事業ミッションに掲げています。世界とつながるための教育、そのツールとしての言語であり、語学学習である、との位置づけです。

堀内 EFは海外留学事業を展開していますね。私は留学フェアの雰囲気が好きで、時々足を運ぶのですが、近年は高校生とそのご両親の参加が増えたように感じます。でも一般的には「海外に出て行く人は減っている」と言われていますが、日本から留学する人は実際のところどう変化しているのでしょうか。

サンゲ 企業の中には英語ができなければ昇進できないという基準ができたり、子どもたちになるべく多くの人生のオプションを提供したいと考える親御さんも増えていたり、様々なプラスの変化はあると思います。実際、おっしゃるように親御さんに連れられて来る子どもは多いように思います(笑)

日本の学校教育を振り返ってみると、良くも悪くも“one size fits for all”(一つの枠組みを全員に適用しようとする)形式だと思います。それでは合わない子は合わないんですよ。一方で海外留学を経験すると、留学を終えた後、日本に帰国することも、世界の大学に行くこともできるようになります。たった一度の留学でも、その後に続く選択肢が増えるんです。今の教育制度の在り方を見直すことも大切ですが、一度の留学が人生を変えることを皆さんに知ってもらいたいと日ごろから思っています。

堀内 留学をためらう気持ちとして、子どもからすると、「通じなかったらどうしよう」という恐れがあるのは理解できます。日本人の言葉に対する自信は、どうやったら変わっていくのでしょう。

サンゲ 残念ながら、僕にも答えはないですが、これは学校と親とがともに責任をもって取り組んでいくべきだと思っています。授業中、幼い頃は「はい、はい!」と手を挙げていた子どもたちが、年を重ねると、たとえ答えがわかっていても手を挙げなくなっていく。それをどうやって変えていくか。10やって9失敗したら、親は「なんでできないの!」と言ってしまうことが多い。けれど、逆に1できることに「良かった、1できて」と言ってあげてもいいと思うんです。

多くの若者が、「留学しよう」と思ったときに、言葉が通じないんじゃないかとか、失敗することの方が多いとイメージしてしまうのでしょう。どうやって自信をつけさせるのかということが大事だと思うんですけど、日本の教育だとその点が少し弱いんじゃないかな。

世界80か国から約800人の学生が通う全寮制ボーディングスクール、「EFアカデミーNY校」

堀内 仕事を英語でするハードルは、実はそんなに高くないと思っています。私は特派員としてイスラエルとロサンゼルスで働いていましたが、政治や経済などの特定の分野について取材する分には、ある程度決められた用語や言い回しが分かっていればインタビューはできてしまう。最後まで難しいのは、やっぱりパーティーですね(笑)。日常会話ほど難しいものはない、と痛感しました。どれくらい英語が話せますか? と聞かれて、「日常会話程度です」と答える人は多いですが、じつはそれが一番難しい。

サンゲ 自信をつけることも大事ですが、もうひとつ勝手ながら僕が思うのは、日本人は日本人同士でも距離を置きますよね。スウェーデンでは、男同士でもハグをします。距離を置かないことによって、人に対してより関心を持てるようになる。

堀内 実際に海外に行ってみないと分からないことって多くて、まさにハグの感覚などはそれだと思います。ほかに中東に駐在していたときの経験ですが、アラブの女性は男性とは握手しないか、しても指先だけで、ふんわりと触れるだけ。ヨーロッパで挨拶として頬へキスするときの回数も、国や地域によって違いますよね。「3回」が普通の国で4回キスしようとすると「え?」という顔をされて気まずくなったり。ネット上で世界中の情報が見られる時代ですが、こうした習慣は実際にやってみないとわからない。

サンゲ 今おっしゃったことはすごく大切です。じつは、EFの目的は他言語を教えることではないんです。イマージョン、つまり文化や生活体験に浸ってほしい。そうしながら言語を取得していく。これは機械では無理だと思うんですよ。外に出て、実際に自分自身の体験としてこうしたことを沢山の人が経験することで世界は変わっていくのではないかと思います。

その場の体験そのものに価値がある。これはなんでもそうだと思います。例えば、イタリアで飲んだワインを気に入って「日本でも飲もう」と思い持ち帰っても、帰国してから実際に飲むと「大したことなかったな」ということもあります(笑)。

堀内 そう、味を決めるのは味だけじゃないんですよね。その場の雰囲気というか。

サンゲ 「あの人と飲んだとき、本当に楽しかった」というシチュエーションを含めてですよね。結局は誰と飲んだか、時間を共有する「人」の部分も大きい。

日本でEFは語学学校として知られているところが大きいのですが、EFアカデミーというイギリスとアメリカにボーディングスクール(寮制の私立高校)も展開しており、僕個人としては、この事業にも大きな情熱を持って取り組んでいます。ニューヨークにあるボーディングスクールでは、中学3年生から高校3年生までの約800人が80ヵ国からやって来た子どもたちと毎日一緒に寝て、食べて、勉強をする。その子たちは、自分の国に帰っても、友達が世界中に広がっている。別の国に自分が知っている友達がいると思ったら、その国と戦争しようという気持ちにはならないですよ。そこはEFが一番の目標にしている「世界の平和」につながると思いますね。

学業だけではなく、さまざまな「摩擦」を経験することも海外留学の大きな成果のひとつ

堀内 海外に出ることが必要だと私が思うもう一つの理由に、「摩擦」を体験することができる、ということがあると思います。国によって言葉も違えば、習慣も違う。たとえば、駅の窓口に行っても、日本のように丁寧に説明してもらえる国は稀ですよね。どちらが良い悪いの問題ではなく、社会のあり方の違い。日本社会にもこれから外国人が増えて、当然摩擦が起きる場面も増えていくでしょう。そうしたことを知っているか否かが、摩擦も受容できる社会に日本がなるかどうかの分かれ道になる気もします。

サンゲ 外に飛び出してさまざまな経験をすることで、自分の国についてもより良くわかるようになると思うんです。他人の文化を知るということは、自分の文化を知るということ。逆に摩擦のない留学をしてもあまり大きな変化は得られないですよね。

僕自身も異なる国や文化間の摩擦を経験してきたから今の自分がある。実際、EFはスウェーデンで創業した会社なので、僕のように日本と関係が深いバックグラウンドがあり、それでいてスウェーデンの文化を知っている人が一番フィットするのではないか、ということが、ジャパンの社長を任された一番の理由ではと思っています。仕事で覚えなければいけないことがあれば、会社としては教えればいい。でも文化というものは本当の意味では教えるのは難しい。

コミュニケーションツールである英語 自らの立ち位置を知って


堀内
 次にCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)についても伺いたいと思います。これは、「聞く、話す、読む、書く」ことから言語能力を評価する国際的な指標ですが、国際基準で言語能力を測ることの意味はどこにあると思いますか。

サンゲ CEFRは「正解か不正解か」の判断だけでなく「自分は外国語を用いて何ができるか」という基準で語学力を測ることができる。「CEFR〇〇レベルならこうした内容の会話ができる」など、自分のできることを正しく把握することで、「なぜこの言語を話したいのか」を考え、個々がそれぞれ目標を立てることができます。日本にはTOEICの点数がすごく高い人も多いのですが、実際に英語で面接をするとコミュニケーションを取れないことも多い。CEFRは言語を使うことを前提に、幅広いレベルに適用できる基準を示してくれるので、減点方式の学習法で英語に苦手意識を持つ人が多い日本人には合っているかもしれません。

言語はあくまで世界とコミュニケーションを取るためのツールなので、国ごとにバラバラの評価基準を用いるのでなく、世界共通の基準で自分の立ち位置を知ることができるという点にとても賛同しています。

堀内 EFの出している、EF EPI英語能力指数(EFが提供する英語能力テストEF SETの受験データをもとに、英語を第二言語とする世界約100カ国の英語能力を示す指標および世界ランキング)も私は毎年見ていますが、どうしても高いところ(国)はずっと高いままですし、低いところ(国)は低いままですね。大きく変動した、というのがあまりないな、という印象を持ちます。

サンゲ EF EPIは英語能力(指数)と社会との関連性を経年的に追ったレポートです。レポートが示す大まかな動向として、国の経済力と英語力が連動していることが分かっています。日本の経済はここ数十年ずっと並行しているので、英語力も並行。一方で他国のほうが、早いスピードで伸びているので、英語力自体はあまり変わっていないのに日本は相対的に遅れていっている。EF EPIのソースとなるEF SETは、オンライン環境さえあれば誰でも受験することができます。受験状況は国ごとに多少の差はありますが、受験後すぐに結果を知ることができ、世界での自分の立ち位置を相対的に知るにはとても役立つツールです。そういった意味でもより多くの方にEF SETを受けて頂きたいですね。

まずは自分の実力をチェック <わずか5分の英語力診断>

堀内 来年、東京には英語学習のビックチャンスが来ますね。EFとしては、ソウル(1988年)、北京(2008年)、ソチ(14年)、リオ(16年)、平昌(18年)のオリンピック・パラリンピックに続き語学トレーニングパートナーとなりますが、この機会をEFとしてどのように活かしたい、また日本の人たちにどのように活かして欲しいと考えていますか。

サンゲ 普段なかなか話したり聞いたりする機会がない、というなかで、すごくいいチャンスだと思うんです。日本を訪れる外国人はみな、日本人に対して熱い思いを抱いて日本にやってきます。駅で迷っている人がいれば自ら話しかけてみる。レストランで隣に座った人に話しかけてみてもいい。なんでもいいんです。国内で“留学”するようなものなので、自分から話しかけてみることが大切だと思います。

堀内 自分から動かないと、ですね。

サンゲ そうですね。話しかけられたら怖いから逃げる、のではなく、それをチャンスだと思うようにする。これこそ“日本で経験できるイマージョン体験”なんです。少なくとも一人、二人の外国人の知り合いをこのオリンピックを通してつくる、という目標を立ててみてもいいと思います。実は、街中で知り合った外国人に「ちょっと家に遊びに来ない?」と気軽に声を掛けてみたら、彼らにとっても日本ならではの経験ができる貴重な体験、本当に嬉しいことだと思いますよ。「自分は英語を話せない…」ではなく、「今の自分の英語力でできること」から始め、自信をもって話しかけてほしいと思います。