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知りたい意欲にスイッチON 学校生活に豊かな気づきと対話を

World Now 更新日: 公開日:
それぞれが気づいたこと、疑問に思ったことをふせんを活用して洗い出し、グループのメンバーと共有する

何のために学ぶのかを 問い続けながら課題を探す

八名川小学校の校長室には、よく見える壁に「何のために学ぶのですか」と大きく書かれた書が掲示されている。

「これは、本校の前校長手島利夫先生が八名川小に赴任してきた最初の全校朝会で、子どもたちに問いかけた言葉です。この問いかけが、私たちが考える学びのすべての根底にあります」。そう話してくれたのは、2018年4月から新たに八名川小学校の校長となった澤田純二先生だ。

「この学校に赴任してきて受けた印象は、子どもたちがよく話を聞き、やさしい視点を持っているということでした。この地域はもともとあたたかな下町の文化的背景がある場所なので、そういう風土で育ったからかもしれませんが、手島先生をはじめとした先生方の教育の成果も大きいと思います」と澤田校長は言う。何のために学ぶのかというゴールを意識することは、SDGsの概念にも通じる。

現在八名川小学校が掲げる教育目標は、「自ら学び考え行動する子」だ。変化の大きな社会に対応できる「しんのある子の育成」を目指す。「しん」とは、「学びに向かう力=心」「問題解決の力=進」「実践力=芯」。三つの「しん」は相互に深く関わる。そのために八名川小学校が作成しているのが、学びを深める教科横断的な学習カリキュラムである「ESDカレンダー」。ESDを踏まえて豊かな学びを作るために、教科や領域を超えて学びたい心に火をつける指導を行ってきた。その一連の取り組みとSDGsを結びつけたのが「SDGs実践計画表」となる。八名川小学校が取り組んできたESDは、6年間の教育課程を通して、SDGsの具体的な目標に向かっている。各学年の単元をSDGsのそれぞれの目標と結びつけることで、学びの目的が明確になり、教育に地球規模の視点を取り入れることができるはずだ。その優れたアイデアや授業の方法などを広く伝えるため、定期的に研究や発表を公開している。

保護者や地域を巻き込み 主体的で協働的な学びを

八名川小学校の取り組みを象徴するイベントとして、学習発表会の「八名川まつり」がある。これは、同校の保護者や地域住民、外部の教員や教育関係者にも広く公開されており、子どもたちはこの学習発表会に向けてそれぞれのテーマをもとに、数カ月をかけてグループごとに学びを積み上げていく。

和服を着ながら、江戸を生きた人々の暮らしについて発表する6年生

「例えば、6年生が前期で取り組むのは『江戸・深川のまちを語ろう』というテーマです。学習のねらいは、自分が生まれ育った地域の歴史や文化に目を向け、地域に対する誇りや愛着心を育てること。また、今と昔の暮らしや歴史を知ることで、多様な文化を理解する力が身につくのです。子どもたちが釣りを楽しんだりする身近な小名木川は、江戸時代、人や物を運ぶ物流の重要な大航路でした。同じ場所のいまと昔を残されている写真や絵で示し、『いまと昔でこんなに違うんだ』『この船で何を運んでいたのかな』などと子どもの興味を喚起させること。それこそが、子どもの学びに火をつけることなのです」と澤田校長は話す。

知りたい意欲にスイッチの入った子どもたちは、地域にある深川江戸資料館で調べ学習をする。そして同じテーマに興味を持った子どもたちでグループを作り、さらに気になったこと、調べたこと、疑問に思ったことなどを共有していく。資料だけでなく、資料館の人や地域の人に話を聞くのも大切な学習のプロセスだ。調べ、学んだことは、学校を飛び出して外部でも発表し、他校の子どもたちや地域の人に伝え合う。そうして深めた学びのプロセスが、自分で考え、行動する力や、多様な意見を聞き、柔軟に対応する力をつけ、これからを生きる子どもたちに欠かせない「しん」を育成していく。

深川江戸資料館の展示室で現在も愛される江戸の食文化についてプレゼン




本記事は朝日新聞社が各界のリーダーたちの意見、自治体や企業がゴールに向けて取り組んでいること、若い人のチャレンジなど2018年の動きをまとめた冊子「SDGsACTION!2」からの転載です。「SDGsACTION!2」はPDFファイルでご覧いただけます。

冊子「SDGsACTION!2」のダウンロードはこちら
江東区立八名川小学校の活動を紹介したページのダウンロードはこちら

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