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環境への意識を高め、深めるために 誰でも楽しめるゲームを考案

World Now 更新日: 公開日:
中学生・高校生が垣根なく意見を交わすSDGsゼミ

私立海城中学高等学校 「KS(Kaijo School)プロジェクト」という特別講座を設け、各教科のカリキュラムを超えた生徒たちの主体的な学びを大切にしている海城中学高等学校。自然との共存について、より多くの人とともに考えるために、SDGsゼミの生徒たちがワークショップを考案する。

ゲームを通して考える 持続可能な社会の実現

海城中学高等学校では、放課後に授業の教科を超えた様々な講座が開かれており、生徒は自主的に興味のある講座に参加する。SDGsゼミはそんな講座の中の一つ。2017年1月にオープンしたゼミには、中学3年生から高校2年生の16人が参加し、毎週火曜日の放課後、SDGsについて学ぶとともに中高生でもできることを考え、持続可能な社会のために自分たちが今できることを模索している。

SDGsゼミではこの夏、認定NPO法人開発教育協会(DEAR)が主催する開発教育全国研究集会(d-lab)に参加。生徒たちが考案したワークショップを一般の人に発表し、体験後のフィードバックを軸にした振り返りと改良に向けた話し合いが、この日は行われていた。「寿司ゲーム」と「象牙の密猟ロールプレイ」の2班による話し合いは、真剣な議論の合間に度々爆笑が起こる盛り上がりぶりで、生徒たちが活動を楽しんでいることが伝わってくる。

「寿司ゲーム」とは、SDGs14番目の目標である「海の豊かさを守ろう」に関連させて「環境にやさしい消費とは何か」をゲームを通して考えてもらおうというもの。ゲームは5〜6人のグループで行い、各グループの机に置かれた「寿司カード」を自由にとり、1ラウンドごとに設定した600円の所持金でその金額内で食べられるだけの寿司を食べてもいいというルールが決められている。

ラウンドが終わるごとにグループで食べた寿司ネタの種類と数を集計。寿司ネタにはあらかじめ「環境コスト」が設定されており、グループごとの環境コストの平均値によって次のラウンドでの寿司ネタの値段が変動する。ゲームに勝ち負けはなく、環境コストの高いものを食べることによって、だんだんと食べることができる寿司ネタが減ってしまうことを実感してもらいたいという目的だ。環境コストについては、水産庁のデータを参考にし、東京海洋大学の勝川俊雄准教授に生徒たちが取材。「実際にゲームに参加した人から、ゲームが難しかったという声があったのが残念。文化祭では、見学に来た小学生にもゲームを体験してほしいので、改良に取り組みたい」と声が上がった。

(写真左)研究集会で「寿司ゲーム」に挑戦する参加者 (写真右)参加者にSDGsと「象牙の密猟ロールプレイ」について説明する

深刻な環境問題を知り 芽生えた自然への意識

もう一つの班が取り組むのは「象牙の密猟ロールプレイ」。SDGs15番目の目標である「陸の豊かさも守ろう」という観点から考案したワークショップだ。「世界で絶滅しそうな動物はもっと色々いるけれど、日本でも印鑑などで使われる象牙は、身近に考えてもらえると思い、アフリカゾウの問題を取り上げた」という。

ゲームでのそれぞれの役割は①政府関係者②動物愛護NPO関係者③密猟組織メンバー④猟者⑤国外向け象牙密輸集団⑥生物学者。この6人がワシントン条約に基づき、ゾウの密猟に関する国内法を整備するための会議を行う。会議を通して、密猟をしている村の人の現状はどうか、生物多様性の保全をどうするかなどを議論してもらい、どのようにして合意に至ったかを発表してもらうというものだ。SDGs15番目の目標を達成するためのワークショップを作っていくうちに、密猟をせざるを得ない貧困の問題に対しての気づきもあった。

この班の反省点は「70分という持ち時間内で、多くのグループが意見をまとめるところまでたどり着かなかったこと」だと言う。それを踏まえて「自己紹介の時間を制限するべきだった」「小学生のためには、もう少しやさしい台本を用意してあげては」という意見が交わされた。

SDGsゼミに参加しているメンバーの中には、世界有数の生物多様性の高さを誇るボルネオへのスタディツアーに参加し「豊かな自然とその自然が破壊されていく現実を知って自分にできることはないかと思い、SDGsについて考えるようになった」と話す生徒も。知ること、見ること、体験することから湧き上がる好奇心と10代の行動力で、様々なアイデアと手法が発信されていく。

世界の課題に気づき、世界を変える力が自分にもあることを知ってほしい

2017年の1月から始まった本校のSDGsゼミには、生物の教員である私のほかに、国語、社会、家庭科の教員が参加しています。そして、現在の生徒の活動は「寿司ゲーム」班、「象牙の密猟ロールプレイ」班に加えて、18年に新たに発足した「ジェンダー」班があります。男子校でジェンダーの問題について考えるのは珍しい取り組みかもしれませんが、株式会社資生堂と国連女性機関(UN Women)が開催する高校生対象のプログラムに参加し、ジェンダーに関する問題提起と、自分にできることを考えています。

生徒たちのアイデアと行動力は大人が想像するよりもはるかに豊かでパワフル。彼らの柔軟な発想力で、どんなワークショップが出来上がっていくのか、毎回とても楽しみです。(談)

海城中学高等学校 グローバル教育部 理科教諭  関口伸一氏


 

本記事は朝日新聞社が各界のリーダーたちの意見、自治体や企業がゴールに向けて取り組んでいること、若い人のチャレンジなど2018年の動きをまとめた冊子「SDGsACTION!2」からの転載です。「SDGsACTION!2」はPDFファイルでご覧いただけます。
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