国は、自治体によるSDGs達成に向けた取り組みを公募し、優れた提案をする都市を「SDGs未来都市」に選定しています。その中でも先導的な取り組みを「自治体SDGsモデル事業」として選定。資金的に援助をしています。
これは、2017年に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生総合戦略2017改訂版」で位置付けられた施策によるものです。地方創生を推進するに当たり、持続可能な開発目標を主流化し、SDGsの観点を取り入れて、経済、社会、環境を統合的に向上させる取り組みが必要とされています。
選定都市の成功事例は国内外に発信し、普及啓発することで、持続可能なまちづくりを広げていきます。
取り組み
【経済】木質バイオマス発電の推進/CLTなど木材需要の拡大/資源循環・環境保全型農業の推進/観光地域づくり
【環境】持続可能な森林づくり/生ゴミの資源化/マイクロ・小水力発電の推進
【社会】経済、環境に係る学習機会の創出/グローバル人材の育成
「住んでみたくなるまちづくり」で永続的な発展を目指す
岡山三大河川の一つ、旭川が市内を縦断する真庭市は、飲料水はもとより、農業用水や工業用水にも恵まれた地域。きれいな水と限りある豊かな資源をどのように生かし、将来へつなぐかが課題となる。そのため真庭市では、複数の板を積み重ねて接着するCLT(直交集成板)など木材の需要拡大、林地残材・製材端材・樹皮などを使ったバイオマス発電、生ゴミなどをメタン発酵させて作る液体肥料「バイオ液肥」の生産・活用といった取り組みを行っている。また、未来を担う人材育成のために、ふるさとを知り、ふるさとへの思いを育てる「郷育」を掲げている。
これらの取り組みによって地域エネルギー自給率100%を目指し、市民が住み続けたくなる、市外の人が住んでみたくなる安全安心な真庭を実現し、人口減少、地域経済衰退などの負の連鎖を断ち切った、永続的発展モデルを構築するのが真庭市の目標だ。
取り組み
【経済】地域エネルギー拠点化の推進/ロボット、AIによる生産性向上/1次産業、環境関連産業の活性化
【環境】エネルギーや資源の地域循環/環境国際協力、ビジネスの推進/里山などの自然保全
【社会】女性、高齢者、障がい者の活躍/安心で災害に強いまちづくり/市民活動の場の提供
官民一体での課題解決が「当たり前」という市民意識
1960年代の公害問題や、80年代の産業構造の変化により、政令指定都市の中でもいち早く様々な課題に直面し、取り組んできた北九州市。逆風で培われたものづくりの技術、公害克服の経験、そして市民の力は「環境未来都市」の下地となっている。
北九州市では、響灘地区に循環型産業団地を形成する日本初のエコタウン事業「北九州エコタウン」や、洋上風力発電やバイオマス発電といった再生可能エネルギーの拠点化「北九州次世代エネルギーパーク」など環境への取り組み、「プノンペンの奇跡」と呼ばれる劇的な成果を残したカンボジアにおける水道分野の国際協力などを実施。これらは第1回「ジャパンSDGsアワード」の受賞、国の「SDGs未来都市」選定など、国内外から高く評価された。今後はSDGsの取り組みを進めることにより、都市ブランドの強化や市民生活の質の向上を目指していく。
取り組み
【経済】収穫量のデータ化、生産工程の体系化、自動運転での輸送/規格外品ECマーケットの確立
【環境】島外大学生、島内高校生によるイノベーションプログラム実施/環境関連のイベントを実施
【社会】6次産業システムの管理人育成/IoT運用業務による雇用創出/市民共創の「みらい創り対話会」
IoT事業で生まれた雇用が街を活性化させる
麦焼酎や壱岐牛、マグロ、ウニなど、様々な名産品で知られる壱岐市。米や麦のほか、アスパラガスの栽培も盛んなこの街で進められているのが、Industry4.0(生産・流通工程のデジタル化によるコストの削減と生産性の向上)を駆使した農業のスマート6次産業化だ。アスパラガスの栽培においては現場映像の共有や遠隔による作業支援を行うなど、最小限の労力で最大限の収穫を得るための技術革新を行っていく。また、収穫量をデータ化することで生産量を可視化して新規卸先企業の誘致を狙う試みも始まった。将来的にはECマーケットを通して食品ロスの解消も目指す。
スマート6次産業化の実現は、農業とIoT事業の両方で新たな雇用を創出し、街の活性化を促す。未来の農業のあり方を示す試みには、多くの期待が寄せられている。
取り組み
【経済】地熱資源の多面的活用/森林資源の有効活用および高付加価値化
【環境】木質バイオマスボイラー導入/未利用資源を活用した発電推進/コミュニティー活動でのエコ推進
【社会】地域資源活用における公平性/地域主体で運用するコミュニティー交通システム
地熱と森林の恵みを活かした経済内部循環の構築
小国町の冷涼多雨な気候は杉の育成に適しており、良質な森林資源の活用は建材利用にとどまらず、木質バイオマスの利活用へと広がっている。なかでもユニークな取り組みが木の駅プロジェクトだ。林地残材を中心とした端材を「木の駅」と呼ばれる拠点に運ぶと、1t当たり6,000円分の地域通貨「モリ券」に交換できる。モリ券は町内80を超える店舗で利用でき、森林保全と低炭素化、そして経済内部循環に貢献している。
さらに、ユニークかつ豊富な地域資源として地熱資源が挙げられる。地熱発電や農業利用等の事業化に加え、地熱資源と森林資源活用の融合として「地熱木材乾燥施設」がある。地熱により乾燥処理される木材は色艶、香りともに高い評価を得ている。これもまた再生エネルギー活用による低炭素化と地域経済の活性化につながる取り組みである。
本記事は朝日新聞社が各界のリーダーたちの意見、自治体や企業がゴールに向けて取り組んでいること、若い人のチャレンジなど2018年の動きをまとめた冊子「SDGsACTION!2」からの転載です。「SDGsACTION!2」はPDFファイルでご覧いただけます。
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