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市民が参加するSDGsが社会課題に新たな視点を与える

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国に人々の声を届けるNGO/NPOの連携

SDGsの17の目標、169のターゲットは“国連が決めたこと”というイメージを持っている人もいるのではないでしょうか。実は、成案に至るまでにさまざまな非国家主体も含むオープン・ワーキング・グループによる審議が重ねられ、参加型でつくられました。そこで多様な人々の視点を反映させる役割を担ってきたのが地球規模の課題に取り組んできた市民社会組織です。日本のNGO/NPOも、2013年に「ポスト2015NGOプラットフォーム」を設立し、SDGsの策定過程に参加しました。

外務省と市民社会との対話の窓口であった「ポスト2015 NGOプラットフォーム」を前身として「SDGs市民社会ネットワーク」が再編されました。国内のNGO/NPOのほか、協同組合、労働組合、民間企業、宗教団体・宗教系の団体、研究機関、学会など100の団体で構成されています。貧困格差、保健や教育、気候変動、生物多様性、ジェンダーなど多様なテーマに複数の団体で取り組む事業ユニット制度を作り、全体の会議でユニット間の連携をはかっています。

日本政府が設置した「SDGs推進円卓会議」にも参加し、16年12月に策定された「SDGs実施指針」には私たちの意見が盛り込まれました。NGO/NPOは、もともと人権や多様性をベースとしている組織です。SDGsを推進するにあたりその視点が重要なのです。たとえば、政府は、科学技術イノベーションを活用してSDGsを達成していくことに前向きです。それらが世の中を便利にし、社会を変革する力を持っているのは事実ですが、一方でAIやビッグデータによるリスクとして、プライバシー保護や人権侵害問題、テクノロジー導入による失職などの負の側面も持ち合わせています。そこで私たちは、企業や研究者などと「誰一人取り残さない」という基本方針をベースに議論を重ね、対話をしていきたいと考えています。対峙するのではなく、SDGsの理念にこだわることでバランスをとるという協力関係です。

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日本NPOセンター特別研究員であり、SDGs市民社会ネットワークの事務局長代行を務める新田英理子さん(左)と黒田さん

地域の課題にも横の連携 客観性が解決の糸口に

また、地域の課題に取り組む団体がSDGs市民社会ネットワークに参加することで、新たな解決の道に気づくこともあると思います。たとえば、地域の水の問題が実は気候変動や貧困とも近い問題であり、地球規模の課題につながると知る。客観的な視点を得て他の団体と連携したり、多面的に考えたりできるようになります。異なるセクターが社会や地域の課題を一緒に解決していくときに、SDGsという共通言語が使えるのです。

昨今、貧困やジェンダー平等をテーマにしていた国際NGOが、気候変動への適応に取り組むユニットを立ち上げた、という例があります。気温が上がることで発生するあらたな感染症は何か、そのためにアフリカにどんな支援が必要かなど、気候変動から派生する問題は、専門分野ごとの取り組みでは解決できないと思います。NGO/NPOは目的を細分化しがちなのですが、SDGsという概念が普及してきた今、助成金の範囲、枠組みなども変えていけるよう、私たちは各方面に働きかけています。

まだまだSDGsを遠い世界のこととして捉え、個人の抱えている問題や地域の課題からは遠いと感じている人が多いでしょう。現実に即して具体的なビジョンが描かれていることをもっと広めていく必要性を感じています。NGO/NPOは、社会問題の“アンテナ”であり、市民参加を促進し、異分野をつなぐ役割も果たします。SDGsは異なるセクター同士の横の連携だけでなく、世代間をつなぐツールとしても機能するでしょう。2030年まであと12年を切った今、多くの人が関わっていけるとよいと思います。

黒田かをり11月3



黒田かをり KAORI KURODA
コロンビア大学経営大学院日本経済経営研究所、アジア財団日本の勤務を経て2004年から一般財団法人CSOネットワーク事務局長・理事、アジア財団ジャパン・ディレクターを兼任。ISO26000(社会的責任)の策定に参加。東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の「持続可能性に配慮した調達コード」WG委員、SDGs推進円卓会議構成員、ビジネスと人権NAP(国別行動計画)市民社会プラットフォーム副代表。16年設立の「SDGs市民社会ネットワーク」の代表に17年就任。



本記事は朝日新聞社が各界のリーダーたちの意見、自治体や企業がゴールに向けて取り組んでいること、若い人のチャレンジなど2018年の動きをまとめた冊子「SDGsACTION!2」からの転載です。「SDGsACTION!2」はPDFファイルでご覧いただけます。
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