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若者たちの自由な発想がSDGs達成の鍵になる

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未来から現在を見ると新しい発想が生まれる

SDGsの採択から3年を経たいま、社会を変えうる人たちにようやくそのメッセージが伝わり始めた気がします。SDGsに関心を寄せる経営層や自治体のトップも増え、社会課題を解決するための行動に価値が見いだされる時代になりつつあるのを感じます。

こうした流れをさらに未来につなげていけるのが若者たちです。SDGsが目標達成のゴールとしている2030年、今の小学校中学年は成人を迎え、大学生は30代半ばになり社会の中核として活躍しているでしょう。そのころの社会は、いまとは全く違う構造をしていると思います。ひと昔前まではフリーマーケットがネット上に出現するなど思いもよりませんでしたが、それよりはるかに早いスピードで産業構造が変わり、新しい価値観が世の中を動かしているかもしれません。

このような世の中を生きるうえで、様々なヒントを与えてくれるのがSDGsです。193カ国が合意したSDGsには、未来が向かうべき方向性が示されています。いまを基準に未来を考えるのではなく、未来からいまを考えてみる。そこから社会の流れを作ることができるかもしれないし、新たなビジネスが生まれるかもしれません。若者にはそれを可能にする自由な発想があります。

例えば、貧困を30年までになくすには、どうすればいいでしょうか。現在を基準に考えると、目の前にいる貧困の人を支援するために社会保障制度を調べることから始めるでしょう。でも、30年までにゼロにしようという視点に立つならば、全く別の発想が生まれます。「服を必要としている人のところに3Dプリンターを持っていき、その場で作って渡す」ということができるかもしれません。作って運ぶという現在の方法論にしばられることなく、「こんなことができたらいいな」という視点からアイデアを生むことができるのです。

SDGsのアジェンダは「Transforming our world(世界を変革する)」です。変革には、ときに既存のルールさえいとも簡単に飛び越えてしまうような大胆な発想が必要です。

だから指導する立場にある大人には、「それはダメ」ではなく、「面白そうだからやってみよう」と背中を押してほしいと思います。大人のルールに収まっていれば安全かもしれませんが、そこからイノベーションは生まれません。本当にダメかどうかはやってみないとわからない。新しい発想で世の中を動かしていこうとすることが大切なのであって、のびのびと発想できる環境を整えるのが指導する側の役割ではないかと思います。

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学生の研究テーマは、地域創生、企業の取り組みの分析・検証、SDGsの認知向上に向けた活動など幅広い。学生を指導していると、大人にはない面白いアイデアが飛び出すこともあると蟹江教授は言う。一方で、アイデアだけで社会を動かすことはなかなかできない。だから学生たちには、現場に出て自分の目で確認するよう指導している

SDGsが掲げる目標は若者の考える力を刺激する

社会が抱える課題の多くは、様々な要因が複雑に絡まり合っているため、物事を多角的に捉える視点も必要です。SDGsが掲げる17の目標は、17の異なる視点から物事をみる指標にもなります。夏の暑い日、脱水症状にならないようにと購入したペットボトルの水1本から、「リサイクルをしなければプラスチックゴミになること」「それをポイ捨てすれば海の環境汚染を引き起こしかねないこと」「暑さから体を守るために買ったはずの水が、石油資源の容器を使うことで温暖化を招く要因になってしまうこと」などが総合的にみえてきます。

だから、「自分の興味関心がどの目標に当てはまるか」だけではなく、「自分の興味関心を17の目標に照らし合わせたとき、何がみえてくるか」という視点を持つことが大切です。

SDGsはいわば解答のない問題集です。でも、とてもポジティブな問題集です。目標はあるけれど、ルールも罰則もありません。やり方を自由に決めることができて、誰とでも結びつくことができます。自分が持っているものと、他の人が持っているものが補完し合い、思いもよらなかった広がりを持つ可能性もあります。考える力を刺激し、社会を変革していくためにも、若者たちがSDGsに取り組む意義は大きいと思います。

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蟹江憲史 NORICHIKA KANIE
2001年に慶應義塾大学大学院で博士号(政策・メディア)を取得。パリ政治学院、国際連合大学サステイナビリティ高等研究所、東京工業大学大学院などを経て、15年から現職。「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」に日本政府代表団顧問として参加した他、数々の委員を歴任。早くからSDGsの検討・推進メンバーとして国内外で活躍し、企業との共同研究や学生の指導にも力を入れている。

 
 

本記事は朝日新聞社が各界のリーダーたちの意見、自治体や企業がゴールに向けて取り組んでいること、若い人のチャレンジなど2018年の動きをまとめた冊子「SDGsACTION!2」からの転載です。「SDGsACTION!2」はPDFファイルでご覧いただけます。
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