昨年9月の国連総会で採択された、貧困の根絶や平等な教育といった17分野における持続可能な開発目標(SDGs)を達成するためには、年間で最低130兆円が必要と見込まれている。だが、世界のODA総額(2014年)は約18兆円で、民間の資金と合わせても41兆円超にとどまる。上村氏は「処方箋として考えられるのが、グローバル連帯税だ」と話した。
グローバル連帯税として想定されているのは、エネルギーの使用量に応じて課税する「地球炭素税」や、多国籍企業の利潤に課税する税金、富裕層に課税する「富裕税」など。いずれも温暖化や武器の拡散、投機的取引などの「負の影響を抑えながら、税収を地球規模の課題解決に使う」のが特長だ。上村氏は「連帯税が全て実現されれば、年間で292兆円にもなり、十分まかなえる」と言う。
現在、注目されているのが、投機的な金融取引を防ぐために、通貨、株式、債券などあらゆる金融取引に課税する「金融取引税」(FTT)だ。上村氏は「1秒間に1000回以上というむちゃな取引に課税すればもうけが少なくなり、投機的取引が減る」と話す。0.05%の税率で約78兆円の税収になるとの試算もあるという。フランスやドイツを含む欧州連合(EU)の一部の国では、FTTの導入で合意。税率などの調整が続いているが2017年中の実現を目指しているという。
すでに実現した連帯税もある。フランスなど十数カ国で実施されている航空券連帯税だ。税収は途上国での感染症対策やアフリカの支援に使われている。年間の外国人旅行者が2000万人に迫りつつある日本で実施されれば、税収は659億円になるとの試算もあるが、航空業界からの反発などがあり、導入されていない。
上村氏は、航空券連帯税を導入したフランスのシラク元大統領から直接聞いたというエピソードを紹介した。「シラク元大統領は、グローバリゼーションを人間の顔をしたものにしたいと考えていた。そこで閣議で、反対する担当大臣に『航空券連帯税導入にウィかノンかどちらだ? ノンなら出ていけ』と迫ったそうだ」。教授は「FTTも技術的にできる土台はある。あとは政治決断だ」と訴えた。