――外国人スタッフによる家事代行を始める狙いは
佐藤 女性が社会に出て働くためには、「子どものケア」「親のケア」「家事代行」の三つのサポートが必要だ。パソナグループでは保育事業も介護事業も手がけており、三つめの柱として家事代行を考えている。
家事代行は今、人手が足りない。家事代行で働きたいという人がなかなかいないためだ。海外の人たちに手伝ってもらう仕組みをつくりたい。
フィリピンの人たちは、家事代行をプロの仕事と感じている人が非常に多い。出稼ぎに出る文化も浸透している。
――今後のスケジュールは
山田 来年(2016年)4月に国内でのサービス開始を目指している。そのために1月には現地で研修を始める。来年4月に最初の25人を受け入れて、来年度下期にまた25人受け入れる。翌年以降、東京などにも対象が広がれば、100人、200人と増やしていく。2019年度には1000人の受け入れを目指している。
――研修の期間と内容は
山田 母国での家事労働の国家資格をすでに持っていて、1年以上の実務経験があることが採用の前提となっている。そのうえでさらに、1日8時間、週6日で3カ月弱、計400時間にわたって日本に特化した研修を受けてもらう。
日本語のひらがなや文法を集中して講義した後、家事のトレーニングを日本語でする。短冊切り、いちょう切り、と言った単語を覚えてもらい、味付けなどにステップアップする。
佐藤 日本人の考え方や、日本人が気にするポイントを知ってもらうのが、我々の役割だと思っている。
――利用料金はどのくらいか
佐藤 いま狙っているのは、2週間に1回、半日来てもらって、月1万円以下にできないか、というところだ。そのくらいだったら普通の人でも「払ってもいい」という金額ではないか。
1日に1軒ずつではなく、1日に何軒か効率よく回ってもらえば、単価を落とせる。限られた時間でしっかりした仕事をしてもらうためにも、プロの人材であることが重要だ。そこが勝負だと思っている。
山田 日本人スタッフによる現行の家事代行サービスの利用料は、1時間あたり3000円~4000円。それより安い価格で提供する。これまで日本で家事代行と言えば、富裕層向けのサービスだったが、働きに出る人が気軽に使えるサービスにしたい。
――狙いは個人か、あるいは勤め先の企業か
佐藤 個人向けも一部あるが、企業と組んで、企業の福利厚生として提供してもらうのがメーンになると思う。
山田 これまでに30社以上の企業を訪問してヒアリングしているが、家事代行を使いたいと思っている社員さんは各社にいる。利用料の一部を企業に補助してもらい、企業の福利厚生サービスとして根付けば、働く女性だけでなく、独身の男性や単身赴任の男性、高齢の両親と同居している人など、すべての人が使えるサービスになる。すそ野を広げたい。
――外国人家事労働者をめぐっては、中東や東南アジアでは雇い先の家庭での虐待も問題になっている
山田 (個々の家庭ではなく)私たちのような会社が雇用元になり、社員寮も提供する。就業先の家庭で虐待などが起きることを防げる環境にある。
――外国人スタッフの給料はどのくらいか
山田 日本人スタッフは時給1000円~1300円で働いている。それをフルタイムにした金額、目安としては月16万~18万円になる。社員寮の家賃もそこから払う。
佐藤 働く人たちの環境をみるのが、パソナの一番大きな役割だと考えている。ベストの環境をつくって、日本に来てダメだったと思われないようにしたい。