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語り過ぎないデザイン

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photo:Nakamura Yutaka

「デザイナーは語る」の5回目は、工業デザインの第一線で活躍し、「無印良品」のアドバイザリーボードも務める深澤直人さん。大量生産・大量消費の時代からモノをシェアする時代へ。そんな時代の移り変わりは、デザインの役割をも変えたのでしょうか。

photo:Nakamura Yutaka

1本の線を描くとします。人は、僕が描いた線を見て「なんでその線がわかるの?」と驚くかもしれません。その人の無意識にある適切な解を探り当てるからです。見えていないけど存在している答えがある。それを探し出すことがデザイナーの仕事だと考えています。

僕はあるときから人の心を刺激するのがデザインだと思うことをやめることにしました。物欲をあおり立てるデザインは語り過ぎではないかと思ったからです。誰がデザインしたものなのかといった作家性も排除します。人の心の内から生まれ出た作家らしさというものは、ともするとエゴのようなものになってしまうんですよ。

俳句も似ていると思うんです。自分の心情を語るのではなく、風景や現象をうたったほうがいい。客観写生です。たとえば「岩にしみ入る蟬の声」によって「閑さ」という芭蕉の心情に導かれ、人は深く共感するのではないでしょうか。その心情をエゴと受け取る人はいないでしょう。

「無印良品」は、そういう思想のもとにデザインされています。

無印良品 / 壁掛式CDプレーヤー Photo:Hidetoyo Sasaki

配車サービス「ウーバー」もそうですが、モノを所有するのではなくシェアすることが理にかなう時代になりました。テレビもスマホも、その「額縁のカタチ」を競うのは無意味です。そんな時代状況も、デザイナーの役割の変化を促しています。アップルのジョナサン・アイブを筆頭とするデザインチームがスティーブ・ジョブズの考えをカタチにして成功したように、経営者のビジョンを可視化することでビジネスを助ける仕事はその変化のひとつです。

ただ、デザインを決定するものは自分の作家性ではないとしても、やっていいこととやってはいけないことの区別をつけるのはデザイナーです。デザインは、巨大なタンカーの向きを変える小さなスイッチのようなものです。それだけ大きな力を持っている。その自覚が問われることは今も昔も変わりません。

マルニ木工 / HIROSHIMA Photo: Yoneo Kawabe