“On Campus, Failure Is on the Syllabus”
2017年6月24日付 ニューヨーク・タイムズ紙
米国の名門大学は、私が学生だったころに比べてより狭き門になったのではないだろうか。安定志向からエリート大学を志願する生徒が増えたし、グローバル化で米国の名門大学を目指す海外の生徒も増えている。実際、母校イェール大学の若い卒業生に会うと、その優秀さに感心することしきりだ。
しかし、今どきの優秀な学生には、私の学生時代には考えられなかった意外な一面があるようだ。この記事で紹介されているのは、5段階評価のトップの成績をもらえなかったことで、distraught and inconsolable(心がかき乱されて慰めようのない)状態となり、residential life office(大学の寮生を支援する学生課)に駆け込む学生の姿だ。優秀ではあるが、わずかな失敗がcrippling(立ち上がれなくなるほど深刻な)打撃となるらしい。
打たれ弱い学生が多いのは、helicopter-parenting(上空から子どもを監視するような過保護な子育て)や、敗者をつくらないことを良しとする価値観で育った世代だからだと指摘する声がある。失敗する経験が奪われ、失敗への耐性が失われたというのだ。
そこで、Failing Well(上手に失敗すること)を学ぶ機会をつくろうと全米の大学で様々な取り組みが行われているようだ。記事によると、全米屈指の難関女子大学であるマサチューセッツ州のスミス大学は、失敗をdestigmatize(恥ずかしくないものにする)ことを目指し、impostor syndrome(ペテン師症候群、自分を過小評価する傾向)に関するワークショップを開いたり、失敗学講座を開設したりしている。
講座の受講生は、大学生活を送るうえで経験するあらゆることについてscrew up(大失敗する)、bomb(しくじる)ことをhereby(これによって)許すと書かれたpermission slip(許可書)が最初に授与される。hookup(カジュアルセックス)の過ちにも寛容で、「どんなことがあっても、あなたがworthy(価値がある)人間であることは変わらない」と記されている。
resilience(へこたれない力)はどの世代にとっても大事。私たち大人も心にとどめておくべきメッセージといえるだろう。