1分4秒。高藤選手が表彰台に上がった際に流れた君が代の長さだ。前回のリオ大会で使用されたバージョンより13秒ほど短い。
大会関係者によると、君が代の音源は2018平昌冬季オリンピック前に差し替えられたという。リオ大会(2016年)で、団体で優勝した体操男子のメンバーから「(長くて)歌いづらかった」と不満が出たことなどから、アスリートファーストを掲げるJOCが変更を決めたとみられる。
だが、大会をさかのぼるとまた別の長さの音源が使われていたことがわかる。例えば2000年のシドニー大会陸上女子マラソンで高橋尚子さんが優勝したときの君が代は45秒。かなり速いアップテンポ調だ。
オリンピックの表彰台で流れる君が代の長さが、その時々で違うのはなぜなのか。調べてみると、次のようなことがわかった。
そもそも国歌の長さは各国で異なる。ヨルダンのように30秒で終わってしまう国がある一方、ギリシャの国歌はフルバージョンで演奏すると55分間もある。
そこで国際オリンピック委員会(IOC)は2012年のロンドン大会前後、各国に60~90秒の音源を出すよう指示。国旗掲揚時の統一感を出そうとした。
JOCもこれを受けて読売日本交響楽団に演奏を依頼。そして誕生したのが遅いテンポのリオバージョンだったが、前述の通り「短命」に終わった。
では私たちが普段、聞き慣れている君が代はどのくらいの長さなのか。例えばNHKが一日の放送を終える際に流すのは約1分だ。今大会のバージョンは比較的これに近く、選手たちも歌いやすいだろう。
日本は今大会、「金メダル30個で世界3位」という目標を掲げている。新バージョンの君が代をできるだけたくさん聴きたいところだが、オリンピックにおけるその「変遷」を知ることで、観戦の楽しみ方が増えるのではないだろうか。