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北極冒険家が書店オープン 「わくわくする場」作りたい

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朝日新聞デジタル掲載
本棚の前に立つ北極冒険家の荻田泰永さん=2021年5月21日、神奈川県大和市福田、上嶋紀雄撮影

 北極冒険家の荻田泰永さん(43)=神奈川県愛川町在住=が24日、「冒険研究所書店」を同県大和市福田にオープンする。本を通して冒険や旅に触れてもらい、新しい世界に出会える場所にしたいと開設を決めた。荻田さんはこの書店を「本と冒険、旅が一直線につながる場所」と表現している。

 小田急江ノ島線桜ケ丘駅の東口を出ると、すぐ目の前に見える小さなビルの2階にその書店はある。

 荻田さんは、北極圏の単独徒歩行に挑み続け、2018年には無補給、単独徒歩での南極点到達に日本人で初めて成功。19年10月に「冒険研究所」と名付けた事務所を開設した。冒険で使った装備の保管場所でもあるこの事務所が、書店に生まれ変わる。

 書店を開こうと思ったのは、駅周辺が住宅地で近くに小中学校があるのに「本屋もなく、文化的な施設が少ない」と感じたからだ。コロナ禍の昨年3月には突然、一斉休校になった子どもたちの居場所として事務所を開放。子どもたちと顔を合わせ、「子どもたちがわくわくする場を作れないか」と感じたことも後押しした。事務所を開設して1年半。「文化的な活動をしたい」との思いを実現するために事務所を改装し、子どもから大人まで楽しめる書店を開くことを決めた。

 今年3月には事務所の改装と本の仕入れの資金をクラウドファンディングで募り、304人から目標の250万円を上回る342万7780円が集まった。

 約100平方メートルの事務所のうち、約8割を書店のスペースにした。本は、冒険や旅をテーマにしたノンフィクションを中心に、小説なども加えて古本と新刊約3千冊をそろえた。さらに写真や絵を展示するギャラリースペースを設置。荻田さんが持っている探検記や山の本などを、無料で閲覧できるコーナーもある。

 荻田さんは、インターネットで気軽に本が買える時代だからこそ、実際の書店の大切さを訴える。ネット書店だと、個人の嗜好(しこう)に合わせてお薦め本が自動的に表示される。だが、実際の書店では自分の好み以外の本がたくさんあり「本屋に行かないと出会えない世界がある」。コロナ禍で外出が控えられる中、冒険や旅の本に触れて想像を膨らませ、「本の中で冒険や旅を楽しんでもらえたら」とも話す。

 荻田さんにとっても、書店開設は冒険家として新たな出発になる。「人と本、人と人との出会いが生まれる場所にしたい」と語る。

 営業は午前10時~午後7時、今後は毎週月曜が定休日。問い合わせは同書店(046・269・2370)へ。(上嶋紀雄)